OTT多チャンネルサービスの課題

OTTがベースの多チャンネルサービス市場には、Sling TV、PlayStation Vueに続き、12月にDirecTV Nowが加わり、数ヶ月以内にHuluも加わる。提供されているチャンネルはケーブルTV等の既存の多チャンネルサービスより少ないが、チャンネル自体は同じである。しかし、1つ決定的な違いがある。それは地上波再送信の不在である。既存の多チャンネルサービスには地上波再送信義務があり、地域の地上波すべてを再送信しなければならない。放送局は再送信義務を辞退し、多チャンネルサービス事業者と有料契約をする事が出来る。交渉が難航することもあるが、多チャンネルサービスで再送信をしない事は地上波を多チャンネルサービスで見ている世帯(全米で85%)を失うことであり、ほぼすべての地上波局は多チャンネルサービスで再送信されている。

OTTでの多チャンネルサービスは自らの回線を持たないのでケーブルTVとは見なされなく、再送信に関するルールは当てはまらない。再送信義務も、再送信契約に関する規制も無く、OTTで地上波再送信を行う事は容易ではない。Sling TVとDirecTV NowはABC、Fox、NBCの直営局だけを配信している。ABC、Fox、NBCが加盟局経由で提供されている地域では視聴出来ない。ABC、Fox、NBCは多チャンネルサービス向けネットワークと直営局の再送信契約を一緒にしているので、例えばDisneyと契約すればESPN、Disney Channel等と共にABCの配信権も得られる。しかし、CBSは多チャンネルネットワークが無く、CBS単独での契約が必要になる。CBSは有料のCBS All Accessで同時配信を行っており、その契約料も高めである。

PlayStation Vueは地上再送信を含めるに力をいれており、CBSとも契約しているが、地上波再送信が出来ている地域はまだ限られている。ネットワークの直営局では無く、加盟局が放送をしている地域ではその局のオーナー会社と交渉する必要がある。放送局がOTTでの再送信に賛成でも、ネットワークから許可を得る必要があり、それには局がOTT事業者から得る収入の配分も含まれ、3者間の複雑な契約になる。さらに、加盟局の場合は独自でシンジケーションから仕入れている番組もあり、これらも別途、権利者との契約をしなければならない。

Fierce Cableによると(https://goo.gl/6yAtXT)PlayStation Vueが地上波を配信出来ている地域数はABCが8地域、CBSが51地域、Foxが18地域、NBCが12地域となっている。ABCは直営局の地域のみ、FoxとNBCは直営局以外でも幾つかの地域で契約が出来、CBSは210地域の約4分の1、人口的には約50%に達している。CBSとの契約が進んでいるのは、CBSがそのCBS All Accessで加盟局の同時配信をしているお陰である。CBSと加盟局の間にはすでに同時配信の契約があり、PlayStation Vueはそれに準じた契約をしている。

Huluも地上波再配信を重視しており、CBS局との契約をするているが、他のネットワークの加盟局との契約は容易ではない。しかし、ABC、NBC、FoxはHuluへ投資しており、加盟局とHuluの契約を困難にする事は無いであろう。