STBのオープン化規制(2016年3月号「STBの標準化」)に対して多チャンネルサービス事業者はSTBを使わずにアプリで対応する事を提案していた(2016年8月号「FCCのSTB開放規制案への代案」)。9月にFCCはこのアプリ案を支持する規制を提案したが、多チャンネルサービス事業者は喜んでいない。
FCCのアプリ案では加入世帯が100万以上の事業者は2年以内に出荷台数が500万台以上のIPビデオ対応デバイス(スマートフォン、タブレット、スマートTV、ゲーム機、ストリーミング・プレーヤ等)で多チャンネルサービスを見る事が出来るアプリを提供し、その環境(IPでのサイマルキャスト)を提供する事が義務化される。加入者数が100万世帯以下、40万世帯以上の事業者は4年以内にアプリ提供を始め、40万世帯以下の事業者に対しては規制は免除される。採用しなければならない技術規格に対する規制は無い。
多チャンネルサービス事業者はまた、デバイスがサポートするNetflix等の他のビデオサービスを含めた検索を可能にするデータを提供する必要がある。アプリで提供されるサービスはSTBで提供されるサービスと同じコンテンツ、同じレベルの機能を提供しなければならない。
STBでの配信とスマート等のデジタル端末にでのライセンスは異なるので、現在ではSTBとアプリで同じコンテンツを提供する事は難しい。このため、FCCは多チャンネルサービス事業者とコンテンツ事業者のライセンスを標準化する組織を設置する。
多チャンネルサービス事業者はアプリの提案を受け入れてくれた事は良いが、FCCの案は非現実的であると猛反対をしている。多チャンネルサービス事業者が指摘している問題点は:
- 事業者が提供するサービスを提供する方法を制限する
- 決まっていない規格への準拠を強制させる事で革新を困難にし、アプリのメリットを奪う
- STBで提供出来る機能をアプリにも求める事で提供可能な機能を制限し、機能が異なる毎にFCCの許可を求める事になる
- サードパーティにデータの提供をする事はプライバシー保護上の問題があり
- FCCがコンテンツ契約の仲介者になる事には問題が多い
- FCCの関与により多チャンネルサービス事業者とコンテンツ事業者が著作権管理、プライバシー管理をする事を困難にする
- 新しいアプリだけでなく、既存のTV Everywhereアプリも規制対象になる
- 数多くのデバイス向けにアプリ開発を強制する事は事業者の大きな負担となる
FCCは技術的な規格は決めないと言っているが、ユニバーサルな検索等に必要なメタデータのフォーマット等、規格化が必要となり、それを無視して2年間でアプリを提供する事、また、様々なOS、ソフトウェアプラットフォームが存在するデバイスに対してアプリを開発し続けることはも不可能だと多チャンネルサービス事業者は言っている。
最も大きな問題はFCCがコンテンツのライセンシングに関与する事である。多チャンネルサービス事業者もコンテンツ事業者も契約交渉で問題があればFCCに訴えているが、契約をFCCに代行してもらうつもりは無い。どちらもどの様な条件で契約をするかはビジネス戦略であり、それを奪われたくは無い。
FCCの新しい規制案は9月の委員会で決議される予定であったが、会議の開始直前に議題から外された。関連業界からの反対意見も多く、FCC内部にも分裂があり、決議は延期になっている。大統領選が近づいており、10月に決議が出来ないとWheeler委員長の任期内にSTB規制を作る可能性は少なくなる。
