ComcastはSTBからNetflixの視聴を可能にする。Netflixの利用が可能になるSTBはIPにも対応し、アプリを走らせる事が可能なX1で、X1の普及はComcast加入世帯の40%を超えている。これまでにSuddenlink等の中小事業者に加え、Dish NetworkがSTBからNetflixを利用可能にしているが、Netflixからの支払いは無い契約であった。これに対して、Huluは多チャネルサービス事業者との再販契約を開始しており、Cablevision等がHuluの提供を始めている。ComcastとNetflixの契約の内容は公開されていないが、NetflixからComcast経由の加入者に対する支払いが含まれていると推測されている。
Netflixが多チャネルサービス事業者のSTBからのアクセスを求めている理由は明白である。Netflixの加入率は世帯の50%に近づき、成長速度は遅くなる。ブロードバンドがあり、そしてNetflixをテレビで見るためにApple TV等の設置が行える、テクノロジーに強い世帯の多くにはNetflixは普及しており、今後の成長を支えるのはテクノロジーに弱い世帯へのアピールが必要になる。既存の多チャネルサービスのSTBからNetflixが見られるようにする事で得られる潜在視聴者層は大きい。
ComcastがNetflixを求める理由の1つはNetflixと同様に今後の成長の為である。Comcastを含む多チャネルサービス事業者はそのサービスをより魅力的にしていかないと加入者は減っていく。Netflix等のSVODサービスをTVネットワークと同じと考えれば、ComcastはNetflixを敵視する必要性は無い。Netflixを提供する事で、コミッションを得る事が出来、また、より高速なブロードバンドサービスも売り込む事が出来る。ケーブルモデムへの加入者はケーブルTVへの加入者をすでに追い越しており、ブロードバンドサービスからの収入はケーブルTV事業者の重要な収入源である。
また、Netflix等のSVODを提供する事で多チャネルサービスをミレニアル世代に対してより魅力的にする事が出来る。ミレニアル世代の多チャネルサービスへの未加入率は高い。彼らに対して多チャネルサービスを魅力的にする事が出来ないと多チャネルサービスの加入者数は減少を続けていく。リニアとオンデマンドのエンターテイメントを統合したサービスを提供する必要性は高い。
Comcastにはもう1つNetflixとの契約をする重要な理由がある。それは、それはSTB開放規制への対策である。FCCはSTBを事業者がレンタルするだけでなく、消費者が購入する事も可能にしようとしている。最初のOpenCABLEは失敗したが、新たな規制を作ろうとしている。多チャネルサービス事業者はSTBのレンタルで1加入者あたり、年$200以上の収入を得ており、この規制の方向は大きな影響をもつ。FCCの新たな規制案には特に大きな問題がある。
FCCの規制案にはハードウェアの規格化だけでなく、第3者がUIを提供する為のメタデータの提供義務も含まれている。STB提供者は、ComcastのサービスをComcastのUIで提供するだけでなく、自社のUIで提供する事が可能になる。AppleのSTBを買えば、どの多チャネルサービスに加入してもAppleのUIで操作する事が可能になる。利用者には嬉しい事であるが、多チャネルサービス事業者に取ってはサービスの独自性を無くし、ブランド価値を奪うものである。これに対抗する為にケーブルTV事業者代表のNCTAは多チャネルサービスをHTML5で送り、既存のストリーミング・プレーヤから視聴可能にし、STBを不要にする提案をしている。
ComcastはFCCに対して、ケーブルTVはオープン化を支持しており、アプリ化のがそれを可能にすると言っている。Netflixを提供する事はその証明であり、また、FCCの案をサポートしているNetflixと仲良くするためでもある。
