Nielsenによりと2015年第1四半期にテレビ視聴世帯の構成は多チャンネルサービス加入が86.6%、地上波だけが10.8%、どちらも使わずにオンラインだけでテレビを見ている世帯は2.6%であった。多チャンネルサービスへの加入は前年同期の88.5%%から減り、オンラインだけの世帯は1ポイント以上増えている。多チャンネルサービスの加入者が減り、Netflix等のOTTベースのサービス加入者が増えている事で、コードカッティングは媒体(ケーブ/IP/衛星対インターネット)の戦いと見られがちであるが、現実は価格形態の問題である。
多チャンネルサービスの加入者が増え、そして現在になり減っている理由はコスト/パフォーマンス(C/P)である。FCCの資料(https://apps.fcc.gov/edocs_public/attachmatch/DA-14-672A1.pdf)によると1995年の多チャンネルサービスのExpanded Basic(地上波再送信+基本的な多チャンネルネットワーク)の料金は$22.35で、チャンネル数は44であった。主要なチャンネルは地上波アンテナで受信可能で無料であり、当時の物価を考えるとC/Pが良いとは言えない、1995年の多チャンネルサービスへの加入世帯率は63.3%であった。
1995年後半にデジタル衛星を使った多チャンネルサービスが開始され、ケーブルTVのデジタル化も始まり、チャンネル数は大きくと増える。Expanded Basicのチャンネル数は2005年には70.5、2010年には117チャンネルに達する。料金も当然に増え、2005年は$41.04、2010年は$54.44になるが、チャンネルの増加はサービスの魅力も増やし、多チャンネルサービスへの加入率は2005年で86%、2010年には87.4%に増える。2005年の料金は1995年の倍近くになっているが、チャンネルも70を超え、C/Pは良かった。
しかし、多チャンネルサービスへの加入率は2009年の87.8%をピークに減少をしている。チャンネル数はその後も増え続け、2014年では167.3チャンネルと1995年の4倍近くなっている。しかし、チャンネル数が増えても、見たいチャンネルで無ければ意味が無い。ここ5、6年は、チャンネル数が無駄に増え、その為に料金も増え、多チャンネルサービスのC/Pは落ちてきた。2014年ではExpanded Basicの料金は$66.61で、1995年の3倍に膨らんでいる。
ここ数年間のチャンネル数の増加が無意味であった事は世帯の平均視聴チャンネル数で分かる。1995年に平均チャンネル数が44チャンネルであった時点での世帯平均視聴チャンネル数は10.2チャンネルであった(Nielsen統計)。2005年にはチャンネル数は1.6倍に増え、平均視聴チャンネル数も1.5倍の15.4チャンネルに増える。しかし、世帯平均視聴チャンネル数は2008年に17チャンネルを越してからは横這いで、2013年でも17.5チャンネルである。2005年から2014年の間に料金は1.5倍増えたが、見ているチャンネル数は1.13倍しか増えていない事になる。
見ているチャンネル数が17チャンネルでも、多チャンネルサービス加入者は167チャンネル分の料金を払う必要がある。また、有料チャンネルのHBOだけに加入する事も出来ない。HBOに加入する為にはExpanded Basicに加入する必要がある。これに対してSVODは柔軟である。使うSVODサービスだけに加入する事が出来、いつでも止める事が出来る。テレビを見る時間ある月だけにSVODに加入する事も出来る。
多チャンネルサービス利用者からは見たいチャンネルだけに申し込む事が出来るアラカルト料金制を求める声が高まっている。TiVoの子会社でコンテンツ・ディスカバリー技術を開発しているDigitalsmiths社の調査によると多チャンネルサービス加入者の81.6%はアラカルト制を求めている。この調査の結果では多チャンネルサービス加入者がアラカルトとして申し込むチャンネル数は平均で17チャンネルで、Nielsenの世帯平均視聴チャンネル数と同じになっている。また、支払う金額は月額$38になっている。
OTTベースの多チャンネルサービスのDISH Sling TVもSony PlayStation Vueも既存の多チャンネルサービスより柔軟な料金形態だが、本当のアラカルト性ではない。テレビネットワークは、OTTを含め、多チャンネルサービス事業者にアラカルト料金を採用してほしくない。アラカルト料金を導入すると潜在視聴者数が少なくなり、広告収入が減る。既存の多チャンネルサービス事業者もアラカルト制は売上の減少になるので積極的ではない。
しかし、これまでの多チャンネルサービスのパッケージ性料金はオンデマンド視聴が主流になっている現在では陳腐化している。無意味な料金の高騰が続けば、多チャンネルサービスへの加入者はますますと減っていく。配信媒体をケーブルTVからインターネットにすり替えても、破綻した料金モデルを再生する事は出来ない。

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