9月号に書いたように、インターネットビデオ向けのストリーミングプレーヤ(iSTB)の市場が急成長している。この市場のパイオニアはApple TVとRokuである。RokuはNetflixの社内プロジェクトしてスタートした。Netflixは同社専用のSTBの開発をしていたが、ハードウェアを提供する事はNetflixのするべきことではないと考え、開発チームをスピンオフし、それがRokuになった。
RokuはNetflix等特定のサービス専用のSTBを開発するのではなく、逆に誰でもがアプリを作れる、オープンなプラットフォームを作ることで成功をした。Rokuはアプリ開発のSDK、それに開発したアプリを配信するストアを提供している。無料のSDKで開発したアプリは、審査が通れば無料でRokuストアに登録される。Rokuストアで配布出来ない(例えばアダルト)、あるいは特定少数向けで公開したくないアプリはプライベート・アプリとして配布する事も出来る。この仕組みにより、Rokuは1,600の公式アプリ(チャンネル)を持ち、ポピュラーになった。Rokuは9月には、その累計出荷台数が2008年以来、1千万台に達したと発表されている。
販売台数としてはApple TVが上である。NDP社の調査ではアメリカのiSTB市場におけるApple TVのシェアは39%であるのに対して、Rokuは28%である。利用時間としては、Rokuユーザは週2700万時間で、Apple TVの1500万時間を大きくと上回っている。しかし、利用時間が多くても、Rokuの収入には大きな貢献をしない。Rokuストアで配布されるアプリの殆どは無料である。有料サービスも多いが、その登録はサービス事業者が自社のウェブで行うので、Rokuの収入にはならない。M-GoのVOD等、Rokuのアプリ内で購入し、Rokuの収入にもなるサービスもあるが、数は多くない。Rokuの収入は基本的にSTBの販売であり、その2013年の収入は$1.9億でしか無い。しかし、Rokuはコンテンツ販売の収入を増やそうとしており、一部の事業者に対してマージンを求め始めているとGigaOmは報道している。
Rokuは自社のサービスは、ストアを含めたエコシステムであり、iSTBだけをOEMで提供する事は拒否していた。しかし、昨年にBSkyB(Sky)から1220万ドルの投資を受け、イギリス市場への参入の一環としてとSkyとホワイトラベル契約をし、SkyはRokuをNow TV Boxの名称で提供している。Rokuはこの事業を推進する為にRoku Poweredと呼ばれる多チャンネルサービス事業者向けのホワイトラベルのサービスを最近立ち上げた。
Roku PoweredはこれまでRokuが掲げてきた、エコシステムとしてのサービス提供から離れた事業である。しかし、前号のApple TVの記事でも書いたようにSTBで儲ける事は難しく、「趣味」程度にしかならない。しかし、RokuがComcast、あるいはApple等と対抗し、コンテンツでの収入で儲けるエコシステムを作る事は難しい。TiVoの様に多チャンネルサービス事業者と契約し、その加入者にSTBを提供してもらうのが、Roku Poweredの戦略である。TiVoの加入者は第2四半期末で480万世帯で、その内、3860万世帯は多チャンネルサービス事業者経由である。
RokuにはケーブルTVチューナが無く、TiVoの様に既存のSTBをリプレースする事は出来ない。しかし、多チャンネルサービス事業者は、TV Everywhere、それにマルチルームDVRの子機として、IPベースのiSTBを利用し始めている。例えば、Time Warner Cableは同社が行っているケーブルTVチャンネルのIPでの再配信をRokuで視聴可能にしている。現時点では、TWCはアプリを開発しただけであるが、もしもその加入者に対してホワイトラベルのRoku STBを提供し始めれば、Rokuの市場規模は大きくと増える。
