減少するケーブルTV向けチャンネル

多チャンネルサービスの料金が増えてきたのはチャンネル(多チャンネル向けネットワーク)が増え続けたからである。デジタル化で多くのチャンネル提供が可能になり、多チャンネル事業者は200チャンネルが見られるサービスを視聴者に約束した。ネットワーク会社はチャンネルを増やしたが、コンテンツ制作には限度があり、急速にチャンネルを増やすことは出来ない。そこで生まれたのが姉妹チャンネルである。例えば、子供向けチャンネルのNickelodeonにはNick 2、Nick Jr.、Nicktoon、TeenNick、NickRewind等が出来た。姉妹チャンネルはメインのチャンネルの番組の再放送、あるいはそこでヒットしたコンテンツをベースにした番組を制作することで、安いコスト、素早く、数多くのチャンネルを作る事が出来た。

これらチャンネルの再送信料は安いが、ベーシックチャンネルであるので、多チャンネル事業者が契約してくれれば、儲けになる。そのために、ネットワーク会社は「全部、あるいはゼロ」で多チャンネル事業者との契約交渉をし始めた。Nickelodeonが欲しければ、Nickelodeon系の姉妹チャンネルを全部契約する必要がある。さらにはNickelodeonを持つParamount Globalであれば、Nickelodeonとその姉妹チャンネルだけでなく、MTVとその姉妹チャンネル、BETとその姉妹チャンネル等、自社のずべてをバンドルし、契約交渉した。視聴者が少なくても、チャンネルを切ることは出来ない条件である。これにより多チャンネルサービスのチャンネル数は200を超えたが、サービス料も大幅に増えた。チャンネル数は増えたが、見たいチャンネルは少なく、価格は値上がりし、加入者はサービスに不満を持ち、コードカッティングが始まった。

あまりにも視聴者数が少ないと、再送信料があっても赤字になり、姉妹チャンネルは減っているが、数多くの視聴者数が少ないチャンネルはまだ多くあり、契約も「全部、あるいはゼロ」が続いている。しかし、CharterがDisneyに対して強い姿勢で交渉をしたことで、この仕組みの終わりが始まった。CharterはDisney Channel系のDisney Jr.とDisney XD、ABC番組の再放送のFreeform、FX姉妹のFXX、FXM、それにNational Geographic姉妹のNat Geo Wild、Nat Geo Mundoを切る契約をした。

他の多チャンネル事業者も同様にDisneyとの再契約の際は、視聴者の少ないチャンネルを切る事を求めるであろう。また、Disneyとの契約だけでなく、NBCUniversal、Paramount Global、Warner Bros. Discovery、Fox等との契約の際にも同様に視聴が少ないチャンネルを除いた契約を求めることになる。S&P Global Market Intelligenceは下記のチャンネルが短期的に消えると予想している。

  • AMC Networks: BBC America, IFC, Sundance TV
  • NBCUniversal: CNBC World, E!, Syfy, Universal Kids
  • Fox: Fox Sports 2
  • Paramount Global: BET Gospel, BET Her, BET Hip-Hop, BET James, BET Soul, CMT Music, LOGO, MTV Classic, MTV Live, MTV2, mtvu, Nick Jr. NickMusic, Nicktoons, POP, Smithsonian Channel, TeenNick, Tr3s
  • Walt Disney Co.: Disney Jr., Disney XD, Freeform, FXM, FXX, Nat Geo Mundo, Nat Geo Wild
  • Warner Bros. Discovery: American Heroes Channel, Boomerang, Cooking Channel, Destination America, Science, TCM, truTV

これらチャンネルは多チャンネルサービスから消えるが、完全に消滅はしないであろう。これらは名前を変えて、FASTサービスのチャンネルとして生まれ変わる。多チャンネルサービスのチャンネルを増やす必要性はなくなっているが、再放送、あるいは関連した番組を放送する必要ある。証券アナリスト会社のMoffettNathansonはこれらチャンネルが無くなることでネットワーク会社は最大で10%の広告収入を失うと推定している。しかし、FASTの広告収入は増えており、ネットワークはこれらチャンネルをFASTで提供することで、収入の減少を補うことが出来る。

多チャンネルサービスへの加入者が減ることで、多チャンネル向けネットワークの一部は赤字になっている。ネットワーク事業者としても見切りをつける時期にあり、多チャンネル向けネットワークの数は大きく減るであろうが、それは多チャンネルサービスの持続のためにも必要なことである。