PBSがイギリスの番組を放送している以外では、アメリカのTVネットワークが海外のコンテンツを放送することは稀であった。ヒスパニック向け地上波ネットワークのTelemundoとUnivisionがあり、多チャンネルにはアフロ・アメリカン向けのBlack Entertainment Television等もあるが、主要ネットワークのコンテンツはアメリカで制作された番組で構成されている。Netflix等に海外のコンテンツもあるが、大きな話題になることは無かった。
しかし、NetflixのLupin(フランス)、Money Heist(スペイン)、Squid Game(韓国)等のように、この1年で多くの海外制作のコンテンツが話題になった。急にSVODで海外のコンテンツの視聴が増えた理由にはいくつかの説がある。1つはパンデミックにより、家でテレビを見る時間が増えたからである。テレビを見る時間が限られていると親しみのある番組が優先されるが、視聴時間が増えたことで冒険をする余裕が生まれた。さらに、旅行が出来なく、外国の場面、文化を感じるコンテンツを見たい人も増えた。
また、SVODが普及し、白人以外の視聴者が増え始めたことも影響している。ヒスパニックがヒスパニック系のコンテンツ、アジア人がアジア系のコンテンツを見るのは当然であるが、マイノリティーの人の方が白人以上に海外のコンテンツを見るとの統計もある。Horowitz ResearchがLatinx(南米系)を対象に行った調査ではLatinxはスペイン語のコンテンツの視聴が高いだけでなく、それ以外の海外のコンテンツの視聴も多い。Latinxの71%はスペイン語番組を見ていると答え、63%はその他の海外のコンテンツも見ていると答えている。
だが、一番に大きな理由は海外からのコンテンツ数が増えたからである。多チャンネル向けネットワークのFX(元Fox、現在Disney系)は同社が最初にオリジナルドラマを制作した2002年から毎年、その年に制作された大人向け台本付きテレビコンテンツの数を調べ、発表している。それによると、2002年に制作された本数は182本であった。有料チャンネルを含め、多チャンネル向けネットワークがオリジナル・ドラマの制作を始めたのは1980年代であった。2002年に制作された182本中、地上波ネットワーク向けが135本、多チャンネル向けが47本であった。
多チャンネルサービス向けネットワークが増えることで番組制作数も増え、2011年には合計266本となり、地上波向けが116本、多チャンネル向けが144本と、逆転する。その後、Netflix等のストリーミングサービスもオリジナル制作を始めたことで2018年には495本に増え、地上波向けは、146本、多チャンネル向けが190本、ストリーミング向けが160本となる。制作本数は2020年には493本に落ちるが、2021年には599本に増えている。配信経路での内訳は2019年からなくなっている。これは、放送(地上波、あるいは多チャンネル)とストリーミングの両方で同時公開される番組が登場し、分類が不可能になったためであが、2022年ではストリーミング向けが半分程度になっていると推定出来る。

FX Research
需要はこれ以上に大きい。Netflixが2019年にリリースした番組は374本である。FXによると、パンデミックによりアメリカで制作された番組数は2020年には493本に減ったが、Netflixがリリースした番組は2019年の374本から467本に増えている。FXの制作本数は大人向けの台本付きコンテンツで、Netflixのリリース数にはFXの調査には含まれていない子供向け番組、ドキュメンタリー等が含まれているが、海外からのコンテンツ無しでは需要を満たすことが出来なくなっている。

Statista
