コンテンツの需要を海外からの調達だけに頼ることは出来ない。ビデオ制作の需要は放送/OTTサービス向けのコンテンツだけでなく、プロモーション等向けのプロ品質のビデオの本数も増えており、さらに広告のアドレッサブル化によりそのバリエーションも増えている。また、制作の効率に加え、素早い対応も必要になっている。配信媒体、デバイスの多様化により、多くの配信フォーマットへの対応が必要である。制作してドラマ等からソーシャルメディア向けのクリップを作る必要がある。同じコンテンツでも配信媒体により、広告あり、広告無があり、広告ありでもAVODと広告付きSVODでは挿入回数が違う。ストリーミングサービスは海外でも提供されており、字幕以外にも、各国の文化、規制等への対応の編集等のローカリゼーションがあり、それもアメリカでの公開のほぼ同時のリリースが求められる。
これまでのような手作りでは対応は不可能になっており、2~3年前にメディア・サプライチェーンの考えが登場した。メディア・サプライチェーンはコンテンツ制作の大量生産と素早い対応の為にトヨタ生産方式のJust-in-TimeとAutomation with Human Touch(自働化)を導入するコンセプトである。
Just-in-Timeはクラウド化によるコラボレーションとリモート化である。パンデミックにより、オンプレミスでの制作が困難になり、クラウド化は大きな進歩をした。放送向けIPソリューション会社のHaivisionは毎年、放送とメディア事業者に対するアンケート調査を行っており、その2019年末に行われたパンデミック前の調査では最大の課題は何かの質問に対しての3位はクラウド技術の導入であった。2021年末の調査結果ではクラウド化は7位に落ちている。クラウド化が7位に落ちたのは重要性が減ったのではなく、パンデミックにより導入が大きくと進んだからである。
2019年の調査の時点ではクラウド化はまだ行われていなく、ワークフローの何%程度がクラウド化されているかに対する回答のトップは「0%」であった。しかし、パンデミックによりリモート制作が余儀なくされ、クラウド化は加速した。2021年の調査でまだクラウドを使っていないと答えたのは16%に減り、23%は50%以上のワークフローをクラウド化していると答えている。リモート化されているワークフローとしては、トップがライブ制作(65%)、2位は編集(48%)、3位はグラフィックス(43%)となっている。

Haivision: Broadcast IP Transformation Report 2022(https://bit.ly/3RrAJxJ)
自働化はAI/MLによる画像解析を使ったメタデータの付与が進められている。これまでメタデータは主にコンテンツの検索とレコメンデーションのために使われていたのが、編集、再利用、広告挿入等の目的でも利用され始めている。撮影直後に何が写っているかのメタデータを加えることで編集の効率が高まり、また、ソーシャルメディア向けのビデオクリップの制作、あるいは別のプロジェクトでのフッテージの再利用が容易になる。これを人間が行うことは現実的ではなく、AI/MLによる映像分析の利用が進んでいる。
AI/MLによる映像分析はコンテンツを章に分ける、あるいは広告挿入のポイントを見つけるのにも使われている。放送、AVOD、広告付きSVODでは広告の量が違い、最適な広告挿入のポイントを見つける必要がある。挿入ポイントの直前の場面の内容を加えることで、その部分に適した広告、適さない広告を判断することも出来る。NBCUniversal、それにAmazonは場面にある看板等をスポンサーの物に入れ替えるバーチャルなプロダクトプレイスメントを提案しているが、このような場面を見つけるのにも映像分析が必要になる。
NABでもAI/MLの利用はIntelligent Contentとして2022年のテーマに加わった。Intelligent ContentとはAI等を使いコンテンツの制作、配信、マネタイズをインテリジェント化し、それで得た情報を分析し、新たなコンテンツ制作に活かすプロセスを意味している。
コンテンツのメタデータと視聴統計等のビッグデータを分析し、オーディエンスに適したコンテンツ、あるいはコンテンツに適したオーディエンスを見つけるソリューションはNielsenのGracenote、Whip Media等が提供している。GracenoteのAudience PredictはGracenoteのコンテンツに関するデータベース、Nielsenの視聴データを使い、特定のコンテンツでの配信方法別の可能性、例えば、放送した場合の視聴者数、SVODで配信した場合の視聴者層と視聴時間等を予想する。
Whip Media Exchangeは世界(北米と欧州が主)のコンテンツ事業者(売り側)と配信サービス事業者(買い側)の仲介サービスで、売り側には特定のコンテンツのライセンス先としてどのような事業者が適しているかの情報の提供、買い側にはどのようなコンテンツをライセンスするべきかの情報の提供をしている。Whip Mediaが提供している世界で2000万人の利用者がある視聴歴管理アプリのTV Timeからコンテンツ、視聴した媒体、評価等のデータを得、同社が2019年に買収した配信契約管理サービスのMediamorphが持つ配信関係のデータベースを使い、分析をしている。
