Sezmi(セズミー)は地上波を使った新しいマルチチャンネル・ビデオサービスをこの夏から開始すると発表した。地上波デジタル放送の空き容量を使ったサービスはこれが始めてではない。地上波局はそれぞれ、19.4 Mbpsの伝送容量を持っているが、HD放送でもこれを全て使うことは無く、SDだけであれば、約15 Mbpsのあまりがある。US Digital Television社(USDTV)は地上波放送局と契約し、これら放送局の空いた容量を使い、主要なケーブルTVチャンネルを有料で提供するサービスを2005年末に開始した。月額20ドルのサービスはソルトレーク市,ダラス,ラスベガス,アルバカーキで提供されたが、十分な加入者を得ることは出来なく、2007年4月に同社は倒産し、サービスは閉鎖になった。Sezmiの基本的なビジネスモデルはUSDTVと同じであるが、伝送にはブロードバンドも加えている。そのFlexCastでは、生放送、あるいは視聴率の多い番組は地上波で放送するが、視聴者の少ない番組とVODはブロードバンドで配信する。
Sezmiは地上波放送に加え30~40のケーブルTVチャンネル、それにVODをて提供する予定である。STBは1テラバイトの容量を持ち、スマートアンテナを使うことで、屋外アンテナ無しで放送を受信する事が可能と発表されている。SezmiはISPと協力し、ISPがブロードバンド、VoIPにこのサービスを加え、トリプルプレーとして販売していく予定。
Sezmiは3つの都市でテストを開始すると発表しているが、同社のビジネスモデルには幾つかの疑問点がある。
- USDTVは低コストで基本的なケーブルTVチャンネルを提供すれば需要はあると考えていたが、結果は必ずしもそうではなかった。SezmiはVODによりチャンネル数の不足は補えると言っているが、果たしてどうか。
- マルチチャンネル・サービスの加入者に取ってはHDチャンネルの数が重要になっている。Sezmiは積極的にHDチャンネルを提供していくと言っているが、その放送容量はどこから得るのか。主要局はHDでの放送を始めており、余り容量は少なく、さらに地上波を使ったモバイル放送も2009年には開始される予定で、その為に容量が必要になる。2009年後もSDだけの放送を続けるマイナーな局もあるが、1つの都市で数局しかない。15 Mbpsの余りがある局を4つ集めても60 Mbpsにしかならない。60 MbpsではMPEG4でもHDチャンネルを10しか提供出来ない。SezmiはVODでHDを提供出来ると言うが、アメリカのブロードバンド事情ではHDのブロードバンド配信は困難である。STBに先に蓄積して置くことも可能だが、これもAkimboが試して失敗している。
- SezmiはISP事業者がこのサービスをトリプルプレーの1つとして販売すると言っているが、アメリカの主要なISP、特に自ら回線を持つ会社は電話会社とケーブルTV事業者で、どちらもすでにビデオサービスを提供し、Sezmiの競合になる。小さなISPだけでは十分な市場にはならない。
デジタル地上波放送の余りとブロードバンド配信を融合させるアイデアは面白い。しかし、USDTVも、ブロードバンドを使ったマルチチャンネル・サービスのAkimboも失敗しており、2つをミックスする事で成功させられるかは疑問である。
