ブロードバンド普及計画のインパクト

ブロードバンドアクセスの普及促進を大きな目標に掲げるオバマ政権 はFCCに対して、ブロードバンド普及プランを2月17日に議会で報告することを命じている(FCCは1月6日に4週間の延期を願い出ている)。FCCはその概要を12月16日に公開したが、その中には放送業界に大きなインパクトを与える2つの項目がある。

その1つは、先月にも書いた、無線ブロードバンドの帯域を増やすための帯域利用の見直しである。ジェナコウスキー委員長はこの考えには積極的なサポートの発言をしており、放送局を慌てさせている。放送局は、デジタル移行が完了したばかりであり、こどの様な新しいサービスが登場するかを待つことなく、放送帯域を取り上げる事を検討するのは間違いだとしている。しかし、放送帯域は無駄に使われているとの考えも多い。特に、放送局は多チャンネル事業者に対して、再送信料金を大きくと値上げしている中、放送局に対する批判が高まっている。

無線通信業界代表のCTIAと家電ベンダー代表のCEAはFCCに対して、放送をセル化する事を提案している。CTIA/CEAの案は、現在の高出力で放送する方式では干渉上、多くの帯域を空けておく必要があるが、複数の低出力アンテナを使う方法に変えることで、100 ~180 MHzの帯域を空けることが出来ると説明している。その費用は13.7億ドルから18.3億ドルであり、空いた帯域の競売によって得られると予想される600億ドルで十分にまかなえる物だと語っている。経費は国から出るとしても、やっとデジタル移行を完了させた放送局には、再度、引っ越しを行う意志は無い。

この議論は帯域利用を越えて、地上波再送信規制の見直しまで発展する可能性もある。小規模なケーブルTV事業者を代表するAmerican Cable Association(ACA)はFCCに対して、ブロードバンド計画の一環として、再送信義務の廃止を検討する事を求めている。ACAは再送信義務により、地上波局を保護する必要性は無くなっており、再送信義務が無くなることで、ケーブルTV事業者は空いた帯域をブロードバンドサービスに使え、普及に貢献すると語っている。これとは別に、Cablevision社はMust Carryの廃止を最高裁で再検討する事を求める申請を行っている。

もう1つの項目は、STBを標準化する事でのブロードバンドアクセスの普及である。FCCはTVの普及が99%であるのに対して、PCは79%であることから、インターネットを使ったビデオ配信が普及するれば、ブロードバンドの普及も進むと考えている。これを実現する方法として、多チャンネルサービス向けのSTBを標準化し、インターネットアクセス機能を加える事の義務化が検討されている。

FCCは多チャンネル事業者に対して、固有なネットワークエレメント(受信、コンディショナルアクセス機能)と標準的な家庭での通信インタフェースをブリッジするデバイスを提供する事を命じ、市販のナビゲーションデバイスから多チャンネルサービスをアクセス出来るようにする事を考えている。FCCは「市販のナビゲーションデバイス」は何であるかの説明はしていないが、TV、DVR、PC、ゲーム機、Blu-rayプレーヤ等を指していると推測出来る。STB自体にはナビゲーション機能が無くなり、標準インタフェースにより、市販のTV、DVR等と接続され、ナビゲーションはこれら製品が行う事になる。

FCCはすでにケーブルTV事業者に対してはSTBの標準化を行い、STBの市販を普及させようとしている。FCCはケーブルSTBの標準規格を作らせ、異なる規格が存在するコンディショナルアクセス(CAS)の部分を別途PCカード(CableCARD)として提供する事を義務化した。しかし、この計画は失敗した。この規則が出来た2007年7月以来、ケーブルTV事業者は1700万台近い、CableCARD対応のSTBをレンタルとして提供しているに対して、市販のデジタルケーブル対応のDVR、あるいはTVの販売台数は44万台でしかない。

FCCはこの計画は失敗であった事を認め、新たなSTBの標準化の計画を作り出そうとしている。新たな計画では対象はケーブルTV事業者だけだ無く、DBS、電話事業者のIPTVも対象となる。
多チャンネル事業者はこのFCCの計画にとまどいを見せている。多チャンネル事業者に取り、STBの市販はプラスとマイナスの両方がある。視聴者が自らSTBを購入し、事業者がそれを提供する必要が無くなることは、経費的にはプラスである。しかし、DVRの様にSTBに付加価値機能を持たせることで、新しい収入を作る事は難しくなり、また、差別化も難しくなる。CableCARD対応のSTBを提供してきたケーブルTV事業者はFCCに対して、単に技術的な仕様を検討するだけでなく、いかにすればSTB市販のメカニズムが成功するかを研究する事を求めている。

DBS事業者のDirecTVはこの計画に反対を示す書面をFCCに送っている、DirecTVは標準仕様のブリッジデバイスを開発、提供するコストは高価であり、また、その様な製品は市場の革新を止める可能性があるとしている。DirecTVはまた、FCCが使っている理論に間違いがある事も指摘している。同社はTVは99%の家庭に普及しているが、多チャンネルサービスは99%の普及率ではなく、多チャンネルサービスのSTBを標準化しても、ブロードバンドの普及は99%には成りえないと反論をしている。