テレビ局所有規制の緩和は必要か

政権交代による放送業界への大きなインパクトとしてM&Aの増加とテレビ局所有規制の緩和がある。放送事業、特に多チャンネルサービスは縮小しており、統合が必要になっている。Dish NetworkとDirecTVは合併し、Comcastは多チャンネル・サービス向けネットワーク事業をスピンオフした。政権交代により、司法省、FCC、FTCのトップが変わることで、大規模なM&Aが可能になると予想されている。地上波放送局所有会社のM&Aもまた盛んになる可能性がある。数年前には多くの地上波所有会社の買収があったが、今は静かになっている。これは放送局の所有規制により、これ以上の統合が困難になっているからだ。

1つの会社が所有出来るテレビ局の規模はテレビ世帯の39%と決まっている。しかし、アナログ時代の規則により、UHF局のリーチ世帯は50%に割り引かれるので、UHF局だけであれば、最大79%のリーチ率まで局を持つことが出来る。実リーチ率が最も高いのは117局を持つ、Nexstarで70%のリーチがある。しかし、多くの放送地域で2つ以上の局を持つことは禁じられ、持てる場合もその地域の視聴率でトップ4局(ほとんどの場合は、ABC、CBS、FoxとNBC)の1つしか持つことが出来ない。

放送局所有会社はこれらのテレビ局所有規制の大幅な緩和を求めている。放送はすでに最大メディアではなく、これら規制は大きなメディアとなっているインターネット会社との競合を不可能にしているとの主張である。最初のトランプ政権ではFCCの権限を弱め、規制緩和を行ったが、テレビ局所有規制は手付かずのままでバイデン政権に移行した。放送局所有会社は規制緩和を達成するためにロビーに力を入れており、トランプ政権に戻ることで実現の可能性が高まった。

規制緩和が実現した場合、Nexstar等の大手は中小規模の所有会社を買収し、同一地域での所有局を増やしていく。同じ地域で複数の局を持つことで、ニュース制作を統合し、スタッフも共有することで、コスト削減が出来る。さらに、広告販売をまとめることで、視聴者が少ない局への広告を増やすことが出来る。さらに、1つの会社が複数局を持つことが出来れば、現在のようにATSC 3.0への移行のように数多くの会社が協力する必要がなくなり、移行も容易になり、一石二鳥以上の効果があると放送局所有会社は考えている。

しかし、規制緩和は逆にテレビ放送の終わりを早める可能性も指摘されている。ラジオ局の所有規制が緩和された時も多くの買収があり、現在では数社大手に集約された。これにより、コストの削減は果たされたが、番組はシンジケーション物が増え、同じフォーマットの局ばかりになり、ローカル性、それにユニークさは失われた。結局、聴取者はSpotify等に奪われていった。テレビにも同じことが起きる可能性がある。テレビ局が視聴者を失っているには所有規制があるからではなく、インターネットの脅威に対して、変身することが出来ないからではないのか。統合により、規模は大きくなり、コスト削減が出来ても、イノベーションなければインターネットに勝つことは出来ない。