SHVERA法の更新

DBS業界での重要な規制としてSHVERA(Satellite Home Viewer Extension and Reauthorization Act of 2004)がある。SHVERAはケーブルTV業界におけるマストキャリー法と同様にDBS業界における地上波再送信を規制している。マストキャリーはケーブルTV事業者に対して、地上波局の再送信を義務付けているのに対して、SHVERAはDBS事業者に対して、1つでも地上波局を再送信した地域で、その区域の全局を再送信する事と命じている。再送信はマストキャリーでは義務であるが、SHVERAではオプションであり、行わない事も出来る。しかし、1局でも再送信をした場合、その区域全局の再送信義務が起きる。このコンセプトは、「Carry One, Carry All」として知られている。2009年はSHVERAは見直しの年であり、議会で聴聞が開始されている。

SHVERA法の見直しは地上波放送局対DBS事業者の戦いである。地上波放送局は最低でもSHVERAを既存のままで延長する事を求めている。さらに可能であれば、再送信をオプションとするのではなく、全市場で義務化にさせたいと思っている。現在、DBS事業者による地上波再送信のサービスは全市場では提供されていない。DISH Networkの場合、210のDMA地域中、178で地上波再送信のサービスを展開している。DISH、DirecTV共に210のDMA全部で地上波再送信を行うことは経済的に難しいとしている。DBS事業者が地上波再送信を提供していない区域は世帯数が少ない地域であり、地上波再送信の為に衛星容量を増やす投資効果が無いとDBS事業者は説明している。

DBS事業者は再送信の定義を変える事を求めている。SHVERAではその区域の全局が再送信の対象になるが、DBS事業者はこれをローカルニュース、ローカル広告等のローカルなコンテンツを放送している局のみを対象にするように規制を変えることを求めている。宗教局、TVショッピング局等は異なる区域でもまったく、あるいは殆ど同じ内容の放送を行っており、個々の局を再送信する必要は無いと訴えている。現在の規制では同じTVショッピングの放送をしている局が全米で30あった場合、それらを個々に再送信する必要があるが、この定義書き換えが認められれば、1つの局を30の地域で再送信する事ですみ、29局分の容量を節約出来る。

DBS事業者はまた、地上波再送信をする地域だけでなく、隣接する区域の地上波局も再送信する事を可能にするよう求めている。DBS事業者は現在、地上波再送信が行っていない市場は4大ネットワークの内、1つ以上の局が存在していない地域であり、隣接する区域から欠けている局の再送信を行う事が出来れば、地上波再送信サービスに対する関心が増え、サービスを提供をする価値が出てくると説明している。

しかし、隣接する区域外の放送局の番組の輸入(再送信)許可により、DBS事業者が本当に求めているのは、競争による再送信料金の値下げである。DBS事業者は主要な地上波放送局に対しては再送信料金を支払っている。マストキャリーと同様に料金を求める放送局に対しては、再送信を拒否する権利があるが、4大ネットワーク系の放送局が欠けてはサービスにならず、現実的に拒否する事は出来ない。隣接区域の局を輸入する事が可能になれば、再送信料金の値上げを求める放送局を切り、区域外の地域の局を放送する事が出来る。放送局は当然、これらDBS事業者の求める書き換え案には猛反対をしている。

また、この争いはこれまでDBS事業者と地上波放送局間であったが、新たにコンテンツ事業者(ネットワーク)も加わろうとしている。地上波局は再送信義務を破棄する事を条件に、DBSを含めた多チャンネル事業者から再送信料金を求めることが出来るのに対して、ネットワークが提供するプログラミング(番組)自体は強制許諾で管理されており、個別に料金を交渉する事は出来ない。コンテンツ事業者は再送信権の強制許諾を止めさせ、個別交渉を可能にしたい。これはDBS事業者だけでなく、当然ケーブルTV事業者へも影響を及ぼすことになり、ケーブルTV事業者を代表するNCTAは、SHVERAの更新の問題と再送信料金の問題を一緒にするべきではないとし、この動きを阻止しようとしている。