RSNはATSC 3.0のキラーコンテンツか

ATSC 3.0での放送は50以上の地域で始まっているが、視聴は進んでいない。ATSC 3.0対応のTVセットを発売しているのはSamsung、LG、Sonyの3社だけで、Vizio、TCL、Hisense等の低価格のベンダーの製品は無い。ATSC 3.0対応のテレビを持っていても、現時点でATSC 3.0で見られる放送は1.0と同じであり、特に3.0で見る意味は無い。ABC、CBS、Fox、NBC等のネットワークはATSC 3.0向けに高品質の番組を配信する予定はない。ATSC 3.0での放送を始めているNexstar、Sinclair等の放送局の独自番組はローカルニュース程度である、4Kで見る価値は少ない。

いくら放送がATSC 3.0になっても番組がATSC 1.0と同じであれば、普及はしない。既存の放送の再配信である限り、NEXTGEN TVとも言えない。既存のコンテンツを使った新しい放送サービスとしてFASTのような無料の多チャンネルサービスを提供することが検討されている。多くの放送局会社はサブチャンネル向けのネットワークを持っており、多チャンネル化をするコンテンツはある。SinclairはすでにSTIRRと言うFASTを提供しており、STIRRをATSC 3.0で提供する事が出来る。しかし、地上波で多チャンネル化をするには同じ地域で複数の放送局を持つ必要があり、現在の規制では困難である。また、すでにFASTがある中、同様なサービスを放送で提供しても目新しさは無く、やはり、キラーコンテンツが必要になる。

Next TVはSinclairが地域スポーツネットワーク(RSN)をATSC 3.0でDirect to Consumer(DTC)化するのではと推測する記事(https://bit.ly/3HvCrt3)を掲載している。 RSNは地域のMLB、NBA、NHL等チームのアウェイの試合を多チャンネルサービス上で放送している。SinclairはDisneyがFox資産買収で得た19のRSNを購入した。しかし、コストが高いRSNと契約しない多チャンネルサービス事業者が増えており、大きな赤字になり始めている。SinclairはRSNをOTTで直接に視聴者に配信する予定を発表しているが、RSNが持っている権利は放送権であり、インターネットでの配信権は含まれていない。SinclairはNHLからインターネットでの配信権を得たが、MLBとNBAはまだ得られていない。

Next TVはSinclairの考えはRSNをOTTで提供するのでは無く、ATSC 3.0上で有料チャンネルとして提供するのでは無いかと推測している。それであれば、インターネットでの配信権が無いことは問題にならない。RSNをDTC化した場合、月額はいくらになるか発表されていないが、$20程度になると思われる。RSNで放送しているチームのファンであれば、月に$20は払うであろう。見るためには新しいテレビを購入しなければならないが、もしも試合が4Kで放送されればまった問題ではないであろう。

Sinclairが持っているRSNは19地域であり、RSNに加入するファンは限られているので、これだけではATSC 3.0を普及させるキラーコンテンツにはならないであろう。しかし、視聴者の一部に対してはNEXTGEN TVを見始めさせるきっかけにはなる。また、これが成功すれば他のRSNを含めた多チャンネル向けネットワークをATSC 3.0での有料チャンネルに転向させる可能性も出てくる。