Liberty MediaがDirecTVを買う

Cable Cowboyと呼ばれた,ケーブル業界の最大の起業家のJohn Maloneが多チャンネルビジネスに復帰した。1973年にGeneral Instrument(その後,Motorolaに買収されている)のケーブルTV機器部門の社長であった,John MaloneはTCI(Tele-Communications Inc.)に引き抜かれ,32歳でTCIのCEOになる。Maloneは業績の悪かったTCIを再編成させ,世界最大のMSOにする。Maloneはまた,Black Entertainment Channel,Discovery Channel等のケーブルTVネットワークを設立し,ヒットさせ,ケーブルTV業界に大きなインパクトを持つ人物である。

Maloneは1999年に550億ドルでTCIをAT&Tに売り,TCIの子会社でDiscovery等を持つコンテンツ部門のLiberty MediaのCEOに就任した。AT&Tは2001年にLiberty Mediaをスピンオフした。Liberty Mediaは現在,Discovery,TCI,Travel Channel等を持つDiscovery Communicationsの50%,ホームショッピングチャンネルのQVC,プレミアムチャンネルのStarz,その他のケーブルTVネットワーク,それにEコマースのExpediaの20%等を保有している。

Liberty Mediaは同社が持つNews Corp社の19%の株(17億ドル分)をNew Corpに戻し,その代わりにNew Corpが持っていたDirecTVの株(39%),3つのローカルスポーツチャンネル,それに現金5500万ドルを得る事に合意した。MaloneはTCIの会長時代,DBSを敵視し,Death Starと呼んでいたが,今度はそのDeath Starの持ち主になる。

LibertyがDirecTVを持つことで,そのチャンネルを他の事業者に売る際の交渉力を高めることが出来る。例えば,ComcastがDiscoveryとの契約金の値上げを渋った場合,LibertyはComcastが持つE!等のネットワークをDirecTVのラインアップから外す事を交渉材料に使える。

しかし,それ以上にMaloneがDirecTVをいかに運営していくかが注目されている。Maloneは多チャンネル業界を最も良く知っている人の一人であり,単にLibertyのコンテンツの交渉材料の為だけにDirecTVを買ったのでは無い。双方向化が重視され,放送しか出来ない衛星放送サービスが今後,弱まっていくと予想されてる中,MaloneがDirecTVを買ったのはそれなりの勝算があるからであろう。ケーブルTV業界にとり,ケーブルTV業界のパイオニアの一人であり,業界の隅まで知っているMaloneが,ケーブルTVの大きな敵であるDeath Starのオーナーになった事は脅威である。

ケーブルTV業界が恐れるシナリオの1つはDirecTVとEchoStarの合併である。2社は合併により,Comcastを抜く多チャンネル事業者になり,また,放送容量も大きくと増える。この2社の合併の噂は以前からあったが,News CorpのMurdochとEchoStarのErgenの仲が悪いことから現実化する可能性は低かった。しかし,Murdochの手が切れたことで,この合併の可能性は高まったと思われる。

また,Maloneは電話会社との協業を積極的に進めるとの予想もある。DirecTVは電話会社との協業でADSLへのアクセスを得て,DBSに欠けている双方向性を実現出来る。電話会社はDirecTVとの関係で回線のアップグレードがされていない地域でもビデオサービスを行える。それ以上に電話会社にとって,多チャンネル業界を知り尽くしているMaloneを味方に付ける価値は非常に高い。ケーブルTV業界にとっては,電話事業者とDBSが協力し,その頂上にMaloneが立つことは大きな悪夢である。

AT&TのBellSouth買収とネット中立性

AT&TはFCCに対してネットワークの中立性を今後2年間守ることを約束する書面を提出し,それを条件にBellSouth買収の許可を得た。ネットワーク事業者は優先接続サービスを提供する事で,ビデオ等のネットワークに負担が大きいサービスを提供する事業者からより高い料金を得ようとしているが,Google等のサービス事業者はこれはネットワーク事業者がインターネットの中立性を侵す物だとして反対をしている。

AT&Tのインターネット中立性の約束はその有線通信に限定される。AT&TはこのコミットメントはCPEからインターネットエクスチェンジポイント間の有線ブロードバンドアクセスサービスとしており,これはラストマイルからメトロ/バックホールネットワークを対象にした物と考えられる。インターネットのコア(バックボーン)は対象外であり,また,企業向けのマネッジドIPサービス,IPTVサービス等,対象にはならないサービスも記されている。さらに特定の事業者のパケットを優先する事は出来ないが,ビデオ等の特定の種類のパケット全体を優先する事は出来る。

インターネット中立性の賛成派はAT&Tの今回の約束は,大きな一歩だとしていが,この約束の価値を疑う意見もある。AT&Tの約束は2年間である。しかし,優先接続サービスの本当の価値が出るのはラストマイルが広い地域で高速されてからの事である。AT&Tのネットワークのアップグレードが広く普及するには2年以上かかり,その時点ではこの約束の有効性は無い。また,自社のIPTVサービスを売り込むためには,インターネットビデオのトラフィックは優先しない方がメリットもある。IPTVで見られるのと同じビデオがインターネットでリアルタイムでVOD出来るのであれば,AT&TのU-Verseに加入する価値は無い。自社のビデオサービスを立ち上げる間は,優先接続は行わず,自社のIPTVサービスの優位性を強調する方がベネフィットは高いかも知れない。

MSOのモバイル電話サービス

ケーブルTV事業者も固定電話に参入しているが,モバイル電話は提供出来なく,クアダプルプレーが電話会社の強みであったが,ついにケーブルTV事業者も携帯電話事業に乗り出した。Comcast,Time Warner Cable,Cox,Advance/Newhouseの4社は2005年末にSprintとジョイントベンチャーを作り,ケーブルTVと携帯電話のサービスを融合するサービスを開発しているが,ComcastとTime Warner Cableはこの11月にSprintのネットワークを使ったMVNOのサービスを正式に開始させた。Comcastはボストンとオレゴン州のポートランドで,Time Warner Cableはノースカロライナ州ラリーとテキサス州オースチンでサービスを開始した。CoxとAdvance/Newhouseは現在テストを行っており,2007年初旬にサービスを開始する予定である。

Comcastの携帯電話の料金は200時間の通話料を含み,33ドルとなっている。Comcastは現在,固定電話,ブロードバンド,ビデオをパッケージで月額99ドルで販売しているが,携帯電話を含めた,クアダプルプレーのパッケージはまだ発表されていない。端末はLGのFusicを含め,4つのモデルが提供されている。

Sprintの200時間通話のを含めた月額料金は$29.99で,Comcastの方が若干高い。しかし,Comcastのサービスには300のテキストメッセージ(これはSprintでは$5のオプション)が含まれているのに加え,自宅のComcastの固定回線電話間の通話は無料であり,またモバイル電話からComcastのビデオサービスのEPG(番組表)へのアクセスがある。

ケーブルTVと携帯電話のサービスの融合と言えるのは携帯電話からEPGが見える程度であり,SprintとMSOのジョイントベンチャーが設立した時に約束した携帯電話と固定電話のボイスメールの統合,携帯電話とケーブルモデムの電子メールの統合,TV,PC,携帯電話への共通したEPGの提供,携帯電話からのDVRの録画予約,携帯電話へのビデオコンテンツの提供等とはほど遠く,現時点では,単純なMNVOでしかない。

これらアプリケーションはまだ開発中である。携帯電話から自宅のDVRの予約をするサービスに関しては,セキュリティー上,MSOはSTB(DVR)への直接のアクセスを禁じており,これを可能にするにはMSOのヘッドエンドに携帯電話との通信ゲートウェイを設置する必要があり,そのセキュリティー技術の開発に時間がかかっていると発表されている。

電話事業者のフランチャイズ交渉を短縮

FCCは電話事業者がビデオサービスのフランチャイズ交渉を行う際,自治体はその交渉を90日以内に完了させなければならない規制を決めた。この規制は自治体が電話会社とのフランチャイズ交渉を長引かせていることが,ビデオサービスへの参入の障害になっているとの批判に応えた物である。FCCは多チャンネルサービスの料金が値上がりしているのは,十分な競合が登場していないからで,電話会社の参入を早める事が重要だとしている。しかし,この規制は電話会社を優遇する物だとも取れ,反対も多くあり,FCCに自治体に対する権限があるかが法廷で争われることになると予想される。

複雑になるミシガンのフランチャイズ法

テキサス,カリフォルニア,ニュージャージ等の州と同様にミシガン州でも州法を改正し,電話事業者に対して州レベルでのビデオフランチャイズを提供する法が議論されている。フランチャイズ法の改正はケーブル事業者,自治体等の反対があり,複雑な問題であるが,ミシガンではGoogle等のインターネット事業者がインターネット中立性の条項をこれに含めようと動いており,複雑性がさらに増している。インターネット事業者を含むHands Off The Internet等のロビー団体はこの規制の中に電話,ケーブルTV事業者がブロードバンドサービスを提供する際,優先接続等で特定のインターネット事業者のパケットを優遇する事を禁止する項目を加えようとしている。