HPはそのネットワーク対応のテレビ,MediaSmart LCD TVからユーザ制作のビデオ等をアクセス可能にする為に,インターネット上のビデオコンテンツ事業者との交渉を行っている。MediaSmart TVはHPが昨年発表した37インチLCD TVで,ネットワークインタフェースを持ち,PC上にある写真,動画等を再生する機能を持っている。HPはすでにCinemaNowと契約し,その映画をMediaSmart TVからVOD出来るようにしているが,7月に予定されている42インチと47インチのMediaSmartの発表に合わせて,さらに多くのコンテンツ事業者との交渉を行っている。42インチのMediaSmartは$2,199,47インチは$2,799で発売になる。また,HPは来年には4テラバイトのホームサーバー,MediaSmart Serverを発売する予定。
RGBの500チャンネル・デジタル・オーバーレイ
ケーブルTV事業者のローカル広告の収入は増えている。ケーブルTVは視聴者宅に一番近いディーラの電話番号を入れるなど,地上波放送よりターゲットした広告が出来る。しかし,10の異なるディーラの電話番号を入れた広告を行う場合,10のビデオを作らなければならなく,コストが高くなる。RGB社は500のチャンネルに同時に異なるグラフィックス,あるいはビデオをリアルタイムでオーバーレイとして挿入する事の出来る,ブロードバンド・デジタル・プロセッサー,BNPxrを発表した。BNPxrはリアルタイムでグラフィックス等の挿入が出来るので,ケーブルTV事業者は広告ビデオに放送時点で最新の情報を入れ,アップデートをして行くことが出来る。Terayon(最近Motorolaが買収した)CherryPicker等のデジタル・プロセッサーが処理出来るストリーム数は十数であったが,BNPrxは1台で,数百チャンネルの放送に対応する事が出来る。
ComcastがBraodLogicに投資
TeraPixと呼ばれる80のMPEG-2デジタルチャンネルを同時にアナログ信号に変換出来るチップを開発しているBroadLogic社(The Compass 2006年12月号)はComcast Interactive Capital,Advance/Newhouse Communicationsを含む会社から第3ラウンドの投資として1700万ドルを集めた。TeraPixはそれぞれのTVにSTBを付けずに,1つのデバイスで1つの家庭の複数のTV向けにデジタル信号をまとめて変換する事が出来,注目されている。
National Showの話題はOCAP
5月7日からラスベガスで開催されたケーブルTV事業者の最大の展示会,NCTA(National Cable Telecommunications Association)のNational Showの大きな話題はOCAP(OpenCable Applications Platform)であった。ケーブルTV事業者はOCAPを2007年から2008年にかけて採用する事を発表した。そのシステムの70%でScientific Atlanta製のヘッドエンドを使っている,Time WarnerはSAヘッドエンドの環境ではすでにSamsung製のOCAP対応のSTBを導入し始めている事を発表し,Motorola製のシステムでも年内にテストを開始し,2008年には導入を開始する。Coxは2つのマーケットでOCAPのサブセットである,On-Ramp to OCAPのテストを行っている事を発表した。On-Ramp to OCAPは既存のSTBを使い,基本的なOCAPアプリケーションを走らせることを可能にする。
ComcastはそのデンバーとフィラデルフィアのシステムでOCAPをテストしており,その80%のシステムを年内にOCAP対応にし,OCAP対応のSTBの導入は2008年に開始する予定。
ベンダーもOCAPに対するサポートを次々と発表した。Scientific AtlantaはすでにOCAP対応のSTBの出荷を始めているが,それに加え,インタラクティブTVソフトウェア会社のItaasとの共同で,OCAPアプリケーション開発ツールとサポートを提供する事を発表した。競合のMotorolaもWindows XP上で走るOCAP Simulator and Software Development Kitを2007年第3四半期に出荷する事を発表した。
PanasonicはOCAP対応HD-DVRのPCH2180,OCAP対応のプラズマTV,それにOCAP開発ツールを発表した。PCH2180はCableCARDインタフェースを持つ,MPEG-2,MPEG-4,VC-1のコーデック,MoCAホームネットワーク等をサポートする次世代STBで,2007年第4四半期の出荷予定。OCAP対応のプラズマTVは2008年第3四半期に出荷の予定。
STBベンダーのDigeoもOCAP対応のHD-DVRとOCAP環境で走る同社のMoxiインタフェースを発表した。OCAP対応のMoxi HD-DVRは2007年第4四半期,OCAP上で走るMoxiは2008年初旬に出荷の予定。
スイッチド・デジタル・ビデオへの期待
ケーブルTV事業者の最大の悩みはそのネットワークの容量不足である。HDのTVが売れることで,HD番組に対する要求が増している。2009年2月のアナログ放送の終了に向け,地上波局のHD放送が増えると同時に,ESPN等のケーブルTV向けネットワークもHDでの番組提供を始めている。HDチャンネルが増えることで,ケーブルTVの放送サービスが使う容量が増えていくと同時に,VOD,ケーブルモデム,デジタル電話等の放送以外のサービスが使うネットワーク容量も増している。
長期的な解決策はアナログ放送を止め,フルデジタルにする事である。しかし,これは容易では無い。現在のアナログ・デジタルのハイブリッド型ではアナログで提供しているチャンネルのみに加入している世帯にはデジタルSTBを提供する必要が無い。フルデジタルに移行する場合,全世帯の全TVにSTBが必要となる。アナログチャンネルのみのパッケージに加入している世帯は全ケーブル加入世帯の50%を占めており,これら世帯にSTBを設置する事は大きな投資になる。ある日突然にデジタルに移行をするのは不可能であり,過渡的にアナログで放送されているチャンネルもデジタルで同時放送を行い,時間をかけてアナログ世帯をデジタルに移行させる事が必要であるが,その為にもネットワーク容量が必要になる。
ネットワーク容量を増やす方法として,使われている帯域の上限を上げる方法がある。750 MHzのシステムであれば,1GHz,あるいはそれ以上に帯域を増やすことで,ネットワークの容量は増える。しかし,周波数帯域を上げるにはネットワークのアップグレードが必要で,さらにはSTBの交換も必要になってくる可能性もある。利用帯域の上限を上げる投資コストは世帯あたり,500ドル,あるいはそれ以上になると推定される。
デジタル圧縮技術を現行のMPEG-2から,より効率の高い次世代コーデックのMPEG-4等に変える方法もある。しかし,これをするにはヘッドエンドの機器,それに全世帯のSTBを交換する必要があり,これもコストの安いソルーションでは無い。
そこで,期待されているのがスイッチド・デジタル・ビデオ(SDV)と呼ばれる技術である。SDVは放送ではなく,スイッチを使った通信技術である。放送では事業者が提供している全てのチャンネルをネットワークで流しているが,SDVでは視聴者のSTBが要求するチャンネルのみを流す,VODと同様な双方向サービスである。SDVではデジタルケーブルサービスで300チャンネルが提供されていても,同時に300チャンネルが視聴されている事はあり得ない事が前提になっている。ケーブルTVでは1つのノードが500~2000世帯をサポートしている。2000世帯が同時に見るチャンネルが200であれば,100チャンネル分の容量をセーブ出来る事になる。Comcastが行ったチャンネル視聴の分析では300チャンネルの内,視聴者が低い200チャンネルで,同時に視聴されるのは約34チャンネルである。視聴の多い100チャンネルは現状と同様に放送し,残り200チャンネルをSDVで提供すれば,150チャンネル程度の容量で足りる事になる。
SDVは双方向サービスであり,それに対応するSTBが必要になるが,VODをサポートしているSTBであれば,通常はソフトウェアアップグレードでSDVに対応可能であり,SDVの導入コストは基本的にスイッチの導入であり,世帯あたり,10ドル以下と推定されている。
しかし,SDVは新しい技術であり,ケーブルTVシステムを複雑化する。ケーブルTVの最大のメリットは成熟した技術を使っていることであるが,SDVにより,これまでは比較的にシンプルであった「放送」の部分にも複雑な通信技術が入ることになる。Cablevisionは真っ先にSDVを導入したが,まだ本格的に使っているのでは無く,外国語放送の6チャンネル分をSDVで送っているだけである。その他,事業者はまだテスト段階である。しかし,限られたネットワーク容量を効率的に使う方法として,SDVは最もローコストであり,この技術に対する期待は大きい。
