Netflixの今後の課題

Netflixは2011年にDVDレンタルとストリーミングサービスを切り離して、実質的に大幅な値上げをしたことで加入者を怒らせ、成長が鈍った事があった。しかし、それ以外では順調に成長をして来た。アメリカでの有料加入者数は3,770万人に達している。また、カナダ、南米、欧州に参入し、海外の加入者は1,678万人になっている。利用者数が増えているだけでなく、加入者あたりの利用も増えている。

Netflixの加入者あたりの平均利用時間は、The Diffusion Groupの推定によると3年半で1.6倍増えている。2011年Q4の月間平均視聴時間は28.3時間であったのが、2014年Q2には46.6時間に達している。

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The Diffusion Group

Netflixは3月末にはオーストラリアとニュージーランド、そして秋に日本に参入する。アジアパシフィックだけで無く、ロシア、チェコ、スロバキア等への参入も今年、あるいは来年に予定しており、世界制覇が始まっている。Digital TV Research社はNetflixの加入者は2020年には1億人を越すと予想している。

しかし、幾つかの大きな課題もある。1つはコンテンツの調達である。NetflixはストリーミングサービスをDVDレンタルのオプションとして提供始めた時点では、コンテンツは映画が主体であった。だが映画の権利は高価であり、ライブラリーを増やすことは難しい。Netflixはテレビネットワークから古い番組のストリーミング権を得た。TV番組の再利用のコストは映画より安く、また豊富にある。また、TV番組は連続するコンテンツであり、加入者の視聴時間を増やし、脱退を防ぐことにも貢献した。

テレビネットワークは最初、新たな番組の再利用の方法が登場し、収入が生まれる事を喜んでいた。しかし、DVR、それにストリーミングの普及はライブ視聴を減らしている。NBCの報告によると、テレビ番組の視聴の内、ライブ視聴は60%に落ち、DVRでの視聴が40%になっている。ライブ視聴の減少はいずれは広告収入を減らす事になる。収入の先細りを防ぐためにも、TVネットワークはストリーミング配信も自社でコントロールする方向に進もうとしている。これにより、Netflix等のSVOD事業者に対して提供する番組の量は減り、時期は遅くなり、そして高価になる。

この対応としてNetflixはオリジナル番組の制作を始めている。同社は今年は20本のオリジナル番組を制作する予定である。しかし、オリジナル番組は高価である。また、TV番組は再利用として、再放送、ストリーミング、パッケージ(DVD)とあるが、Netflixにはコンテンツ再利用がない。House of Cards等はDVDで販売されているが、Netflixの収入にはならない。同社が制作している番組でも得ている権利はストリーミングだけである。House of Cardの場合、再利用の権利はプロデュースしたMedia Rights Capitalが持っている。House of Cardsのシーズン1と2はDVD(Blu-ray)で販売され、Amazon Instant Videoで有料VODになっているが、この権利はNetflixはMedia Rights Capitalの物である。

Netflixがオリジナル番組の制作に力を入れる事で、テレビネットワークはNetflixを競合として警戒し始めている。これにより、Netflixが調達可能な番組はさらに減ることになる。有料ネットワークのStarzは2008年にNetflixと契約したが、2012年には契約を解消し、現在ではNetflixにどの番組を配信させた事は間違いであったと語っている。Netflixを利用するのではなく、テレビネットワークは独自にSVODサービスを開始する事を検討している。すでに、CBSは月額$6で同ネットワークのキャッチアップと過去の番組のVODを提供するCBS All Accessをスタートしている。CBS系の有料チャンネルのShowtimeもOTTサービスを予定しているが、Netflixへの最大の競合は有料チャンネルのHBOである。

HBOはアメリカ最大の有料チャンネルで、アメリカでは約3,000万の加入者を持っている。アメリカではNetflixの加入者数は2013年第3四半期にHBOを追い抜いているが、世界規模ではHBOの加入者数は1.1億人で、Netflix(5,447万人)の倍近い。そのHBOは春にHBO Nowと呼ばれるOTTでのサービスを開始し、Netflixに真っ向から戦いを挑む。HBOの月額は現在$15から$20程度で、OTTでのサービスは月額$15程度で提供になると予測されている。Netflixの$9より高価だが、それほど大きな違いではなく、コンテンツが勝負になる。

HBOの親会社はTime Warnerであり、コンテンツ制作ではNetflixより遥かに豊富な経験がある。HBOは1990年代末からSex and the City、The Sopranos等のヒット番組を制作し、現在はGame of Thrones、True Detectives等の番組を制作している。また、HBOは同じ系列のWarner Brothersの映画の優先配信権も持っている。Parks Associates社が行った調査では、ブロードバンド世帯(9100万世帯)の17%はHBOのOTTサービスが$15であれば加入すると答えている。これには多チャネルサービスですでにHBOに加入している世帯も含まれているので、HBOの加入者が1,500万世帯増える訳ではない。しかし、まだ正式に発表されていないサービスに対して17%が加入すると答えている事は、非常に大きな関心度がある事を示している。知名度は高く、コンテンツ制作力でも強力なHBOはNetflixの大きな競合になる。

HBOとNetflixの戦いはオリジナル番組の制作になる。Netflixは、今年は20本のオリジナル番組の制作を行うと発表している。これに対して、HBOは2014年に3本のドラマ、7本のコメディーを制作した。HBOがOTTで配信を開始すると、当然ながらNetflixとHBOのオリジナル番組が比較される事が増える。Netflixとして、HBOより低い評価を得ることは出来なく、制作予算も増やす必要が出るであろう。

年間に20のオリジナル番組を制作する費用を回収するには加入者を増やしていくしか無い。アメリカだけの加入者では維持が不可能になっていく。SVODサービスへの潜在普及率は、70%から80%であろう。当然、Netflixが1社でこれを独占することは出来ない。すでに、AmazonとHulu Plusの競合があり、さらにHBO等が競争に加わる。複数のSVODのサービスに加入する世帯もあるので、Netflixがアメリカで得られる最大加入者数を6000万世帯とすると、すでにその3分の2に達している事になる。アメリカでの成長は1年後には鈍りを見せ始める可能性があり、その後の成長は海外進出に頼る必要がある。

しかし、海外進出のコストは高い。アメリカにおけるストリーミングサービスの利益は2014年で$9.36億で27.3%の利益率になっている。しかし、海外でのサービスは$1.6億ドルの赤字である。海外でのストリーミングサービスの赤字は2012年の$3.9億から半分以下に減っている。しかし、2015年にはアジアを含め新たな地域への進出が予定されているので、赤字はまた増える事になる。アジア進出のコストは欧州進出より増える。イギリスは英語のままでサービスが提供可能であり、他の欧州言語への対応も大きな障壁ではない。コンテンツの一部は英語のままで、配信する事が出来る。しかし、アジアでは言語への対応の難しさははるかに高く、また文化的な違いもあり、欧米で成功した方法がそのまま通用する保証は無い。

増えるオリジナルコンテンツの制作費、それに新たな地域への進出により、Netflixの収益は減ると予想される。アナリスト会社のMoffetNathansonは最近に2015年のNetflixの一株当たり当期純利益の予想額を$5.30から半分以下の$2.40に引き下げた。2012年にはNetflixのDVDレンタルサービスからの収益は$5.4億あり、これで海外進出の赤字を補うことが出来た。しかし、DVDレンタルの加入者は2012年の822万人から576万人に減っており、収益も$3.7億になっている。2015年の海外進出の赤字はDVDレンタルでは補填出来なくなる。海外でのストリーミングサービスが黒字に転じるまでの間、アメリカでのストリーミングサービスの加入者が増え続ければ良いが、そうでないと深刻な問題が起きるであろう。

Netflixの加入者、収入と収益

(単位: 1,000)

2012年

2013年

2014年

国内ストリーミングサービス
有料加入者数

25,471

31,712

37,698

収入

$2,184,868

$2,751,375

$3,431,434

収益

$369,009

$622,767

$936,220

収益率

16.9%

22.6%

27.3%

海外ストリーミングサービス
有料加入者数

4,892

9,722

16,778

収入

$287,542

$712,390

$1,308,061

収益

($389,143)

($274,332)

($159,789)

収益率

-125.3%

-38.5%

-12.2%

DVDレンタル
有料加入者数

8,049

6,765

5,668

収入

$1,136,872

$910,797

$765,161

収益

$538,150

$438,982

$368,279

収益率

47.3%

48.2%

48.1%

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