Microsoft社のNavic買収の背景

Microsoftは6月18日にTV向けのインタラクティブ広告のソルーションを提供しているNavic Networks社を2.3億ドルで買収した。このNavic社の買収を狙っていた会社がもう1社あった。それは、ケーブルTV事業者大手6社のComcast、Time Warner Cable、Cox Communications、Charter Communications、Cablevision、それにBright House Networksが1.5億ドルを投資して設立したCanoe Venture LLCである。Canoe VentureはケーブルTV向け広告の全国的なインフラストラクチャーを作るために設立したジョイントベンチャーで、ケーブルTVネットワークと広告代理店に対してインタラクティブで、アドレッサブル(個別にパーソナライズ可能)な広告プラットフォームを提供する為に4月に設立された。

ケーブルTV向けの広告は注目されている。地上波TVと比較し、多チャンネルTVの広告は半分程度の規模でしかない。しかし、地上波TV向けの広告はスポンサー広告、スポット広告共にここ数年間は横ばいであるのに対して、多チャンネル向けの広告は成長を続けている。多チャンネル向けの広告は成長しているが、その主体は多チャンネルネットワークのスポンサー広告であり、ケーブルTV事業者のスポット広告は増えていない。ケーブルTV事業者の広告販売はそれぞれのケーブル局ベースで行われ、ローカル広告が主体であった。Canoeにより、ケーブルTV事業者は協力し、全国的に広告販売が出来るインフラストラクチャーを作ると共に、次世代の広告環境を開発しようとしている。

CropperCapture[6]

Universal McCann

対話性のある広告はすでに、TiVo、DISH NetworkがそれぞれのSTBを使い、提供されている。事前にインタラクティブな広告のプログラムをSTBのHDDに送り、対象の広告が流れる時にその広告にインタラクティブ性を示すアイコンを画面に表示し、リモコンで対話的な操作する事を可能にしている。双方向なネットワークを持つケーブルTVシステムではより高度なインタラクティブ広告が可能であるが、ケーブルTVには共通するミドルウェアが存在して無く、対話型の広告は殆ど提供されていない。標準的なミドルウェア無しでは全国的な広告は出来ない。しかし、Tru2wayの普及により、ケーブルTVのSBTには標準的なミドルウェアが搭載され始め、全国のケーブルTVのSTBで走る、双方向アプリケーションの開発が可能になり始めている。

もう1つのケーブルTVの大きな特徴は、個々のSTBをアドレス指定出来る事である。同じ広告を全視聴者に送るのではなく、視聴者のデモグラフィー等の情報を使い、パーソナライズされた広告を送る事が出来る。さらにSTBからはリアルタイムで視聴情報を得ることが出来、これにインタラクティブ性、それにパーソナライズ化可能な機能を加えることで、TVの広告にインターネット広告の特徴を加える事が可能になる。

これを実現する為にCanoeは設立された。Canoeは全国のケーブルTV事業者に共通な広告挿入システムを導入し、全国的な広告販売のシステムを作り、さらに全国のSTBからのデータを収集する事で、この次世代広告のインフラを作る事が目的である。Canoeはその広告挿入システムとして、Navicの方法が理想に近いと判断し、その買収を狙っていた。NavicのシステムはComcast、TWC等が実験的に採用し、高い評価を得ていた。しかし、Canoeはまだ設立されたばかりであり、そのCEOは決まっているが、就任は8月の予定で、満足な動きが取れない間にMicrosoftに先を越されてしまった。