Steve Jobsは、この製品はAppleに取り、趣味だと言った。確かに、iPod、iPhone等と比較するとApple TVの売上は少ない。しかし、Netflixの成功、そして映像コンテンツのデジタル配信の増加により、IPベースのストリーミングSTB(iSTB)の市場は増えている。Strategy Analyticsは2014年における世界でのiSTB出荷台数は3600万台、HIS Technologyは5000万台との予測をしている。
Apple TVはiSTB市場のパイオニアであり、トップシェアであった。Strategy Analyticsによると2012年の世界でのiSTBの出荷台数は1500万台で、Apple TVのシェアは38%であった。アメリカにおいては、Apple TVとRokuがこれまで市場の殆どを占めていた。
しかし、状況は急激に変わっている。iSTBの出荷台数は2013年には2400万台に増え、2014年は2012年の2倍から3倍になる。Google Chromecastは大きなヒットになっている。最初は、TV Everywhere関係の対応が少ないと批判があったが、それをクリアし、売上を伸ばしている。AmazonのFire TVも成功をしている。Fire TVは8月には、Disney Channel、MLB、NFL、Watch ABC、Dailymotion等のサービスへの対応を発表している。Amazonは売上台数の発表をしていないが、売れ行きは好調だと発表している。Rokuもトップエンドの製品では、簡単なゲームが出来るが、Fire TVではより本格的なゲームが出来る事が受けている。さらに、GoogleはAndroid TVプラットフォームを発表しており、競争は急に激しくなっている。
これらの新しい製品の登場により、Apple TVのシェアは2014年には27%に落ちるとStrategy Analyticsは予想している。果たしてAppleはこれにどのように対応するのか。AppleがFire TV、Android TVを超える機能、UIを持つ製品を提供する事は難しくない。しかし、Appleがその様なiSTB、あるいはその機能を持ったテレビを独立したデバイスとして製品化する可能性は低いであろう。
Steve Jobsは、Apple TVはApple社に取り趣味だと言った理由は、TiVoを含め、STBを市販する事を試みた会社は多いが、成功例は無いためだ。多チャンネルサービスのSTBは、事業者がサービスと共にバンドルで提供しており、利用者として購入する必要は無い。TiVoも小売ではなく、事業者経由の販売をした事で成功をしている。この環境がある限りSTB製品だけではメジャーになる事は無く、Apple TV単体では趣味レベルを超える事は出来ない。多チャンネル事業者がサービスとSTBをバンドルで提供している限り、消費者はSTBをわざわざ購入する必要は無い。OTTビデオ向けのiSTBが売れ始めていると言っても市販価格が$100の製品を売っているだけでは、Appleにとっては趣味の領域でしか無い。多チャンネル事業者と同様にサービスとSTBの両方を提供する必要がある。
AppleはiPodとiTunesで音楽業界のエコシステムを変える事が出来たが、映像では成功をしていない。音楽業界でiTunesが大きな流通システムになった事でコンテンツ事業者はAppleを警戒し、逆にNetflixが優位になっている。コンテンツ事業者との話し合いが進まない事で、AppleはComcast等の多チャンネル事業者とも接触をして来たが、これも進歩は無い。
しかし、Apple TVを趣味レベルで終わらせる事は無いであろう。Appleは現在のiTunesのトラフィックを遥かに上回る規模のCDNを構築している。また、Netflixとブロードバンド事業者の接続契約はニュースになっているが、Appleも極秘で同様な契約を進めている。ストリーミングビデオのサービスの準備を進めている事は確実であり、Apple TVが趣味では無くなる日も近いかも知れない。
