Foxのスポーツ専門のFAST

TiVoによると北米の世帯が利用しているビデオサービス(多チャンネルを含む)は平均で8.75個になっており、2020年Q4の6.9個から1.9個増えている。内訳は有料サービスが5個、無料サービスが3.7個であり、増加率は無料サービスが大きい。利用が増えているのはFAST(Free Ad Supported TV)とも呼ばれる無料のリニア・チャンネル型のサービスである。(Tubi等のAVODサービスもリニアチャンネルを加えており、リニア・チャンネル型のPluto TV等にもオンデマンドのコンテンツがあり、無料サービス全体をFASTと呼ぶこともある。)

Magid Video Entertainment Pulse Studyによると利用者が多い無料OTTサービスのトップ5はPeacock、Pluto TV、Roku、Tubi、それにIMDb TVで、IMDb TV以外はリニアチャンネルがある。nScreenMediaはリニア・チャンネル主体のFASTサービスの市場規模は2021年で$21億で、2023年には$41億に成長すると予想している。

FASTに対する関心が急増している中、FoxからSport on Tubiと呼ばれるスポーツ専門のFASTサービスがスタートした。スタート時点のチャンネルはFox Sports、Fox Sports en Español、NFL Channel、MLB、beIN Sports XTRA、beIN Sports XTRA en Español、Pac-12 Insider、Stadium、USA TODAY SportsWire、Fubo Sports Network、ACC Digital Network、それにReal Madrid TVの12チャンネルである。放送される番組はニュース、ハイライト、過去の名試合等で、ライブ実況は無い。実況が無いことで、多チャンネルサービスのFS(Fox Sports)1、FS2、Fox Deportes、beIN Sports、NFL Network等とのカニバライゼーションは無い。

しかし、将来的には実況も加わるであろう。スポーツ放送は大きな転機を迎えている。これまでは多チャンネルサービスの利用者が多かったことで高価な契約料が必要となるスポーツチャンネルが成り立っていた。多チャンネルサービスでの再送信契約はバンドルになっている。例えば、Foxとの契約にはFox直営局のある地域のFox局、FS1、FS2、Fox News等が含まれる。スポーツを全く見ない人も多チャンネルサービスに加入していればFS1、ESPN、NBCS等のスポーツチャンネルの契約料を払っていることになる。

コードカッティングにより、このモデルは崩れつつある。加入者が減ると、1世帯あたりが負担する金額が増え、サービス料が増えれば、さらに加入者が減少する。また、試合を最初から最後まで見るファンも減っており、SNSで話題になった場面だけをニア・リアルタイムで見る人たちが増え、これまでのスポーツ放送とは異なる視聴が出ている。Foxは映画スタジオ、FX等の多チャンネル向けネットワークをDisneyに売却し、地上波のFoxとスポーツとニュース系の多チャンネル向けネットワークだけを残した。Direct to Consumerを行うにしても、Disney+等のようなドラマ、映画主体のサービスは出来ず、スポーツとニュースに特化する必要がある。Sports on TubiはFox SportsのDTC化であるが、自社のチャンネルだけでなく、NFL、MLB、beIN等のチャンネルもある。今後のスポーツ放送の方向を考える上で、Sports on Tubiに注目をする必要がある。