Disneyが21st Century Foxの約80%(売上)に相当する資産を$534億(債務を含むと$661億)で買収する。Disneyが買うのは
- 映画スタジオの20th Century Fox
- 多チャンネルサービス向けネットワークのFX、FXX、National Geographic等
- 地域のスポーツネットワーク
- Huluの30%
- Sky plc.(欧州の衛星放送)、Tata Sky(インドの衛星放送)とEndemol Shine Group(オランダのテレビ番組制作会社
現時点でのFoxのSky plc.の持ち株は39%だが、買収が完了する前ににFoxはSkyの全株を得る予定である。買収に含まれないのは、下記の資産で、これらは買収前にFoxからスピンオフされ、新会社となる。
- 地上波ネットワークのFox
- Fox保有の地上波局
- ニュースネットワークのFox News ChannelとFox Business Network
- スポーツネットワークのFS1、FS2、Big Ten Network
DisneyはFoxの買収により開始予定のSVODサービスを強化しようとしている。Foxは20地域以上で地域スポーツネットワークを持っている。2018年に配信開始予定のESPNのSVODサービスはテレビのESPNチャンネルでは放送しないコンテンツを配信するので、Disneyはさらに多くのスポーツコンテンツを必要としている。さらに、Foxの買収により、DisneyブランドのSVODにFoxの映画とFXのTV番組を加える事が出来る。Disneyだけでも十分に魅力的だが、Foxの追加により、Netflixに真っ向から対抗出来るサービスとなる。さらにDisneyはHuluの60%を持つ事になり、一挙にESPN、Disney、それにHuluと言う3つのSVODサービスを運営する会社となる。
FXの番組は家庭的なDisneyのブランドイメージにそぐわない物が多いが、それらはHuluで配信する可能性がある。DisneyブランドのSVODではDisney、Pixar、Foxの映画、Disney ChannelのTV番組、一部のFX番組、National Geographicの番組、それにDisney/Foxのオリジナル番組を配信し、Huluでは引き続きABCの番組、FXの番組、その他のネットワーク、プラス、オリジナル番組の様な分け方が出来き、シナジーのある2つのSVODサービスの提供が可能である。DisneyはNetflixとの契約が切れる2019年までサービスの開始は出来ないが、Foxも独自のSVODを開始する予定を進めていたので、すでに一部の番組に関してNetflixとの契約を切り始めているのも好都合である。
しかし、問題もある。DisneyはHuluのコントロール権を得るが、NBCUniversalとTime Warnerとの協調を保つ事は難しいかも知れない。ComcastはHuluの30%を持つが、NBCUniversal買収時の条件の1つとして、Huluの運営には口出し出来ない、サイレント・パートナーであったが、これら条件の全ては2018年9月迄に切れる。HuluはComcastと競合するOTT多チャンネルサービスを始めており、その方向性には意見があるであろう。さらにAT&TはHuluの10%を持つTime Warnerを買収する予定である。AT&TはDirecTVの買収で最大の多チャンネルサービス事業者になっており、Comcastの競合であると同時に、Hulu With Live TVと競合するDirecTV Nowも持っている。
Huluはコンテンツ分野では競合するDisney、NBCUniversal、それにFoxの3社のジョイントベンチャーであったが、三つ巴の喧嘩にならなかったのは、地上波ネットワークの番組を配信すると言う、共通目的があったからだ。しかし、買収によりHuluのオーナーは最大手のケーブルTV事業者、最大手の通信事業者、Netflixの最大の競合になろうと言う3つの会社となる。この3社にHuluを一緒に経営する共通目的があるだろうか。もし、喧嘩が始まり、Comcast/NBCUniversalとAT&T/Time WarnerがHuluから脱退した場合、Huluは多くのコンテンツを失う事になり、Disneyに取っては大きな痛手になる。
話題は買収するDisney側に集中されがちだが、スピンオフされる新Foxを無視する事は出来ない。新Foxが持つのは地上波ネットワーク、放送局、それに地上波との関係が強いニュースとスポーツネットワークであり、CBSと似た会社になる。CBSは2005年に地上ネットワーク、放送局、それに有料チャンネルのShowtimeとスポーツネットワークのCBS Sports持ち、Viacomから分離した。CBSは多チャンネルサービス向けネットワークが少ないことが弱みとされていた。しかし、多チャンネルサービスが加入者を失っている現在、多チャンネルネットワークを持っている会社はそれが足かせになっている。CBSは多チャンネルサービス事業者のご機嫌伺いをする必要は無い事から、真っ先にSVOD(CBS All Access)を立ち上げる事が出来た。
残されるFoxも、CBSと同様に多チャンネルサービス事業者を気にすること無く、立ち回る事が可能になる。FoxもCBS All Accessと同様の同時配信も含めたSVODを開始する事も出来る。別の戦略として、放送局を買収して行く可能性もある。ATSC 3.0では複数のチャンネルを放送し、一部を有料にする事も出来る。新FoxはATSC 3.0に力を入れ、地上波を使った、あるいは地上波と組み合わせた有料サービスを狙っているとの推測もある。
