AT&Tの誤算

AT&TはQ1に既存の多チャンネルサービスで54.4万世帯を失い、さらにOTT多チャンネルサービスのDirecTV Nowでも8.7万世帯を失い、合計で62.7万世帯の減少となった。AT&Tの既存の多チャンネルサービス(DirecTVとU-verse)は合計で2236万世帯となり、前年同期から6.5%も減っている。その減少を補うはずのDirecTVも減少をしている。DirecTVは前年同期に31.2万世帯を加えたが、Q1には26.7万世帯を失い、この2四半期でそれ以上の加入者を失っている。

AT&Tは全米で提供できる多チャンネルサービスが欲しく、2015年にDirecTVを買収した。この時点ではAT&TはU-Verseの拡大は停止しており、多チャンネルサービスはDirecTVに一本化する予定であった。2つの多チャンネルサービスを持つことはコスト的に無駄である。AT&TはDirecTV買収直後にU-verseの宣伝をストップし、今後の開発も行わない事を発表した。当然、U-verseの加入者は減る。U-verseの加入者は2015年Q2まで増えていたが、買収が行われたQ3には9.1万世帯を失い、最初の1年間で110万世帯がU-verseから離れる。問題は2つのサービスを統合することなく、U-verseの販売活動をやめた事である。加入者はU-verseから去るが、DirecTVには移行しない。最初の1年間でのDirecTVの増加は73万世帯であり、AT&Tは37万世帯を失うことになる。

その後、DirecTVのプロモーションを増やす事で加入者は増え、2017年Q1には2101万世帯となり、2015年Q2から129万世帯を加える。だが、U-verseの失速を止めることは出来ず、U-verseは192万世帯を失う。悪いことに、ここからコード・カッティングの影響がDirecTVにも及ぶことになる。2017年Q1をピークにDirecTVの加入世帯数の増加はストップし、2017年Q4は2046万世帯になる。U-Verse中止を撤回し、広告をする事で2018年に入り、U-verseの失速を止めることに成功し、僅かだがU-verseの加入者数はプラスに転じる。しかし、DirecTVは加入者を失い続ける。


AT&T

2016年11月にAT&TはOTTベースの多チャンネルサービス、DirecTV Nowを開始する。積極的なマーケティングと値引きで、DirecTV Nowは急成長をする。2018年Q2にはDirecTV Nowの加入者は181万世帯になり、これを含めたAT&Tの多チャンネルサービス加入世帯の合計は2,547万世帯となり、2期連続で合計加入者数を増やすことに成功する。しかし、DirecTV Nowの値下げを廃止しする事で、Q3の増加は少なく、さらに値上げを行う事で、加入者を失う。


AT&T

AT&TはDirecTV Nowの加入者減少は今期で止まり、来期からプラスに転じると発表しているが、既存の多チャンネルサービスの減少を補うような大きな成長は多分無理であろう。DirecTVを買収した2015年Q2から2019年Q1の4年間でAT&Tは176万世帯を失っており、このトレンドは続くであろう。AT&TはDirecTV買収は失敗では無いと言っているが、多チャンネルサービス業界の衰退は予期していなかったであろう。