衛星放送事業者が多チャンネル市場に参加した1990年代から、事業者の争いはチャンネル数であった。1990年代前半、ケーブルTV事業者のチャンネル数は60程度であった。1994年に市場に参入したDirecTVは、ケーブルTVより多いチャンネル数を提供する事を最大の武器とした。衛星事業者は、ケーブルTVの倍近い、100近いチャンネル数を提供することで、ケーブルTV事業者から加入者を奪っていった。
ケーブルTV事業者はデジタル化にチャンネル数を増やすことで対抗をする。2000年の前半は、200チャンネルのサービスが業界のキーワードであった。チャンネル数が増えることは、コンテンツ事業者に取っても大きなオポチュニティーの到来であった。1つの多チャンネルネットワークで、ABC、NBC等の地上波ネットワークに対抗する事は困難でも、スポーツ、ニュース、女性、子供等の専門ネットワークを作り、その視聴者数合計であれば地上波ネットワークに勝つことが出来る。コンテンツ事業者は積極的に多チャンネル向けのネットワークを作り、これが地上波放送の視聴率の低下を生み出す。
しかし、提供されるチャンネル数が大きくと増えても視聴者が見る平均チャンネル数はそれほど増えない。テレビを見る時間は限られており、1回に見るチャンネルは1つである。事業者が200チャンネルを提供しても、その全部を見ることは出来ない。統計によると、提供チャンネル数が60を過ぎるまでは、提供数が増えることで、視聴するチャンネル数も増えるが、60を過ぎると大きな差は出なくなり、一人の視聴者が頻繁に見るチャンネルは10数以上には増えない。
200程度までは、チャンネル数を増やすことは競合上有効な事であった。しかし、200以上になると、殆ど視聴されないチャンネルが増え、無駄になる。チャンネルを増やすための帯域を確保するコストだけでなく、コンテンツ事業者への支払いも増える。多チャンネル事業者とネットワークの契約は、そのチャンネルを実際に見ている世帯あたりの値段ではなく、そのチャンネルが視聴可能な世帯のあたりのコストである。そのチャンネルを見ている世帯が1000しか無くても、視聴可能世帯が100万であれば、多チャンネル事業者は100万世帯分のライセンス料を支払い必要がある。
多チャンネル事業者は、ネットワークとの解約を始めている。最近にDirecTVはFox系の地域スポーツチャンネルとの契約を切り、DirecTVはG4を最近に切っている。DirecTVは、これ以上チャンネルを増やす必要はなく、来年にはさらに視聴率の低いチャンネルを切っていくと発表している。
