立ち上がり始めたモバイル放送

地上波を使ったモバイル放送(ATSC M/H)のテストは、5月からワシントンDCで行われている。利用者は、画質は予想より、かなり良く、また、受信状況も良いと評価をしている。ユーザからのサービスに対する調査はHarris Interactiveが行っており、週ベースに短いアンケートをしている。また、視聴データは、別途Rentrak社が収集している。Rentrakは、テストに使われている携帯電話、ネットブックにいつ、どの番組を見たかを記録するソフトウェアを搭載し、データ収集を行っている。Harris InteractiveとRentrakが収集しているデータは、統合されより詳しい視聴傾向を分析していく。このテストでは9局が合計で、23チャンネルの放送を行っている。

テストはまだ実行中であり、受信可能な携帯電話は一般向けには販売されていないが、ワシントンDC以外の地域でも40近い局が、モバイル放送を始めている。殆どの局は、モバイル放送の為にはHarris社のハードウェアを採用している。Harris社は、モバイル放送に必要な器材は$150,000前後で、購入可能だと発表している。Axcera社もモバイル放送の機器を販売開始しており、同社は$100,000でモバイル放送を開始する事が出来ると語っている。

$100,000から$150,000の投資で、モバイル放送を始めることが出来るが、それで十分かは分からない。モバイル放送が受信可能な範囲は、既存の放送の範囲とほぼ同じであるが、受信状況はケースバイケースであり、実際にサービスを提供しないと分からない。受信範囲を拡げるには、FLO TVが行っているような、低出力のアンテナを複数使う、SFN(Single Frequency Network)を採用する必要がある。SFNが必要かは、採用するビジネスモデルに大きくと左右されるであろう。モバイル放送を無料で提供するのであれば、受信可能地域がある程度限定され、受信状況が悪い場所があっても、大きな問題にはならないかも知れない。しかし、有料サービスとしてモバイル放送を提供するのであれば、受信状況が悪い地域があっては問題であり、SFNは必要になるであろう。

ワシントンDCでのテストは、どのビジネスモデルがベストかを判断する事がその目的の1つであるが、放送局の一部はすでに、有料放送に目を向けている。ネットワークのNBC、Fox、Ion Mediaは5月にMobile Content Venture(MCV)を設立し、有料モバイル放送のコンテンツを制作する事を発表している。MCVはBelo、Cox、Media Group、E.W. Scripps、Gannett、Hearst、Media General、Merideth、Post-Newsweek、Raycomの9つの放送局会社が作った、Pearl Mobile DTVグループと有料放送のサービスを立ち上げることを計画している。

有料サービスの方が潜在的な収入は多い。しかし、有料サービスを提供するには、既存の地上波放送とは異なるコンテンツを制作・調達する必要があり、また、SFN等でを採用する事で、サービス範囲を拡げる必要があり、投資額は増えることになる。それに見合う加入者を得ることが出来るかが、放送局に取り、重要なポイントである。

モバイル放送関連の別の話題で、FCCはモバイル放送向けの端末に対するアナログチューナの搭載を免除した。2002年にデジタル移行への準備の為に、TVチューナーにはデジタルとアナログの両方を受信する機能を持つ事が義務付けられた。アナログ停波行われたが、低出力局、中継局はまだアナログ放送であり、通常のTVでは依然として、両方のチューナを搭載する事が義務付けられている。