Disneyは地上波放送のデータ放送を使い,映画を専用のSTBに蓄積し,VODを提供するMovieBeamのサービスを復活させた。最初のMovieBeamのサービスは 2003年9月に立ち上げられた。サービスはスポケーン(ワシントン),ジャクソンビル(フロリダ),ソルトレーク(ユタ)で提供さたが,それ以上の規模には広がることなく,2005年5月にサービスは中断された。利用者は月額6.99ドルで100本の映画が蓄積されたMovieBeamのSTBを借り,映画は週に約10本のベースで更新されていく。映画は1本,$2.5から$4で見ることが出来る。このサービスが成功しなかった理由は幾つか指摘されている。
- 映画を全く見なくても月額7ドルを払う必要がある
- 映画のリリース時期は通常のVODと同じのDVDでリリースされてから30日以上後である
- STBはMovieBeam専用であり,他の利用法が無い
Disney(正確にはその子会社のBuena Vista)に十分な資本力がなかった
復活したMovieBeamは資本力の点では前回より遙かに強い。今回,MovieBeamはIntel Capital,Cisco,Mayfield Fund,Norwest Partners,VantagePoint Venture Partnersから4850万ドルの資金を得ている。前回は3都市でしかサービスの提供が出来なかったが,今回はボストン,デンバー,シカゴ,ニュートーク,デトロイト,フィラデルフィア,シアトル,ワシントンDC,LA等29都市でサービスを開始している。データ放送の契約は非営利ネットワークのPBS(Public Broadcasting Service)と結んでいる。PBSは300局あり,人口の98%をカバーしている。
前回はSTBはレンタルであったが,今回は買い取りになっている。160 GBのHDDを搭載したSTBはCiscoのLinksysブランドで199.99ドル(50ドルのリベート後)で提供され,さらに29.99ドルのアクティベーション費がかかる。毎月7ドルを支払う必要は無いが,最初に230ドル支払う必要性があり,コストの問題が対応されたとは言えない。果たして,200ドルの価値があるかはコンテンツとその他のSTBの機能で決まる。
今回のMovieBeamの最大のセールスポイントは新作映画のリリースがDVDと同じである事と,一部の映画はHDで提供されることである。映画の値段は1本2ドルから4ドルで,HDの場合は1ドル追加になる。通常のVODより早く見られること,さらにDVDではまだであるHD画質で映画を見られることは大きな事であるが,これに230ドルの投資価値があるかは疑問である。
このSTBがMovieBeam以外で使えるのかは発表されていない。しかし,STBにはUSB 2.0,イーサネットのポートがあり,音楽等の他のコンテンツのダウンロード,ホームネットワークへの接続は検討されているのであろう。Intel が投資していることを考えるとViiv対応で,他のViivデバイスとのネットワーク機能が追加される事も考えられる。
最初のサービスと今回のサービスで全く変わっていないのはその伝送方法で,アナログ放送を使ったデータ放送である。速度は1.2 Mbps程度である。サービスはMicrosoftのMedia 9(VC-1)を圧縮に使っているので,SD画質の映画で1.5 GB,HDでは4~5 GBのファイルサイズになり,SDの映画でも伝送に2時間,HDでは8時間必要になる。HDDに蓄積されるので,速度は問題では無く,MovieBeamはアナログデータ放送の方が安定した技術であり,コストも安いと語っている。しかし,アナログ放送は2009年には終了になるので,その時点ではハードウェアのアップグレードが必要になる。
前回成功出来なかった問題点に十分に対応したとは言えない。しかし,2003年の時よりVODの利用は広がっており,消費者がこの様なサービスを受け入れる可能性は増えている。新MovieBeamには資本力はあり,ビジネスモデル上の問題点に対応していけば,成功出来る可能性はある。注目するべき事はこのサービスにはMSO,電話会社,DBS事業者が関わっていなく,コンテンツ事業者とハードウェア事業者のパートナーシップである事だ。通信事業者としてはそのネットワークがバイパスされる脅威となる可能性がある。
