Nielsenの視聴調査はテレビ広告のカレンシーである。放送局/ネットワークの収入に過大な影響を与え、批判の的になることも多い。最近ではパンデミックの影響からパネル世帯への管理が不十分になり、調査に誤りが出たことで、2021年にMedia Rating Council(MRC)の認定を失い、大きな批判を受けた。さらに、Comscore、VideoAmp、iSpot.tv等の競合が参入する機会も与えてしまった。NielsenはMRCの認定を取り直し、競合と同様にスマートTVからのビッグデータを加え信頼を回復しようとしているが、新しいデータは不安定だと批判が依然としてある。
Nielsenは最近、広告調査の標準化を目指すAdvertising Research Foundationのメディア利用調査のDASHのデータを統計の母集団に加えた。DASHはシカゴ大学に属す非営利調査組織のNORCが請け負っており、MRCの認定も得ている。しかし、これが新たなトラブルに発展している。
DASHの統計では放送視聴者数はこれまでのNielsenの物より多く、DASHを加えることで一時的に放送視聴者が増える。Nielsenのデータを購入している局、ネットワーク、広告主に対してはDASHを加えたことによる影響が説明されており、特に問題は起きていない。Nielsenに頼っているのは放送局/ネットワークであり、視聴者が増えたことに対する不満はない。
しかし、これはNielsenが毎月無料で公開しているテレビ利用時間の内訳を示すThe Gaugeに困った影響を与える。The Gaugeは1月間のテレビ利用時間の内訳である。放送視聴者が増え、ストリーミング視聴者は同じであれば、これまでよりも利用時間に占めるストリーミングのシェアが落ちることになる。ある会社の試算では放送のシェアがストリーミングを抜き返すことになる。The Gaugeは無料のサービスであり、有料のNielsenの視聴調査のようにDASHのインパクトを詳細に示すことは出来ない。しかし、The Gaugeのデータは広く利用されており、ストリーミングの利用に急ブレーキがかかったと誤解される可能性が高い。
Nielsenは3月発表予定であった2月分のThe GaugeからDASHを母集団に追加にする予定であったが、ストリーミング事業者からストップの要請が出た。The Gaugeの変更に対してはNetflix等だけではなく、SVODにも力を入れているTVネットワークも懸念を示した。来年度のTV広告を売り込むUpfront直前にストリーミング・サービスに急ブレーキがかかったとの記事が出れば、広告市場に大きな混乱が起き、買い控えになる。
NielsenはThe Gaugeの発表を遅らせ、最終的にDASHの統計を加えない、以前と同じ手法での結果を3週間遅れで発表した。しかし、これによりThe GaugeとNielsenのカレンシー間には違いが生まれることになる。The Gaugeには今回発表された数字は、広告販売の指標となる同社のテレビ視聴率を反映したものではないとする注記が加えられた。同社は秋からのテレビシーズンに向けて、DASHを加えた新たな母集団のデータをThe Gaugeに反映させるための更新作業を進めていると発表しているが、統一性の無いデータの提供はカレンシーとしての信頼性を損なうとして、新たな批判の種になっている。
