ATSC 3.0外付けチューナー普及の問題点

ATSC 3.0は伸び悩んでいる。放送は世帯の75%で視聴可能になっているが、ATSC 3.0対応テレビは売れず、アンテナでのテレビ視聴者も増えていない。次世代放送の視聴者はまだ、数パーセント程度でしかない。放送局所有会社は大都市では2028年、その他の都市では2030年にATSC 1.0を停波し、3.0への移行を実施しようとしている。既存のATSC 1.0での放送が無くなれば、視聴者はATSC 3.0に移行せざるを得ないという、ショック治療である。

これを成功させるのにはATSC 3.0対応のテレビを買いやすくする必要がある。しかし、ATSC 3.0対応のテレビを販売しているのはSamsung、Sony、Hisense、TCL、Panasonicの5社だけであり、機種はハイエンドに限定されている。放送局所有会社のコンソーシアムのPearl TVはATSC 3.0対応テレビの普及のために、$60程度で購入出来る外付けチューナーの普及を新たな目標に掲げた。

テレビを買い替えるのではなく、数十ドルのデバイスでATSC 3.0が視聴可能になれば、普及は進むかも知れない。しかし、この目標には大きな問題がある。ATSC 3.0に対応したテレビは5つのメーカーからのハイエンド機種に限られている理由は、コストである。ATSC 3.0対応のテレビを製造するにはライセンス料を支払い、さらにアップデートを提供していく必要がある。スマートTVも同じであるが、スマートTVではUI上の広告、アプリのレベニューシェアがあり、さらにFASTサービスを立ち上げれば、その広告収入も得られる。

スマートTVは売り切りではなく、継続的な収入が得られる。放送局はATSC 3.0によりアドレッサブル広告、有料チャンネル等の新たな収入があることを謳っているが、それをTVベンダーにシェアする考えはない。メーカーにはATSC 3.0のテレビを作り、売るインセンティブはない。

この問題は低価格の外付けチューナーではもっとシビアである。Roku、Amazon等が数十ドルでストリーミング・スティックを売れるのは本体が赤字でも、販売後に広告等の収入が得られるからである。このような仕組み無しで、$60のATSC 3.0外付けチューナーで利益を得るのは困難だ。ATSC 3.0外付けチューナーとしてはZinwell($129)、ADTH($90)、HDHomeRun Flex 4K($199)等がある。ADTHから$69のUSBチューナーが出ているが、この製品を使うのにはFire TV対応のスマートTVが必要になる。

$60でATSC 3.0外付けチューナーを販売することは出来ても、放送局からのレベニューシェアの様な継続的な収入無しでは規格の進化に合わせ、ソフトウェアをアップデートしていく費用を出すことは出来ない。ATSC 3.0を成功させるには、Pearl TVはこれまでの放送のビジネスモデルから離れ、ベンダーにもレベニューシェアがあるモデルを提案する必要がある。