多チャンネルサービスが生きているのはスポーツのお陰である。ドラマ、バラエティはストリーミングでのオンデマンド視聴になっている。ニュースはまだ放送での視聴が多いが、FASTでローカルニュースが見ることが出来るようになっている。ストリーミングでスポーツを見ることが可能になっているが、NFL等のメージャーなリーグの試合を見るのには多チャンネルサービスへの加入が不可欠である。しかし、この状況を持続させることは不可能である。
スポーツの放送/配信権利料は高価であり、視聴者が減っても契約料は減らない。多チャンネルサービスへの加入者が減ると残された加入者に対する負担が増え、さらなる値上げになる。ハードコアなスポーツファンは値上げがあっても、試合を見るためにサービスに加入し続けるが、カジュアルなファンは脱退する。加入者が減れば、多チャンネルサービスの料金はさらに増え、いずれはハードコアなファンでも払えなくなる。
多チャンネルサービスでのスポーツ視聴を維持しながら、ストリーミングへの移行を進めていくのが、Disney、Warner Brothers Discovery、FoxのVenue Sportsの狙いである。Venue Sportsにより多チャンネルサービスへ加入しなくても試合を見ることが可能になると、多チャンネルサービス加入者が減る可能性はある。しかし、視聴者の一部はストリーミングよりも、多チャンネルサービスを好む。また、スポーツ以外の多チャンネル向けネットワークも見ている。Venue Sportsは多チャンネルサービスの加入者を奪うのではなく、コードカッティングしてスポーツを見なくなったファンを狙っている。
Venue Sportsは2024年秋にローンチの予定であったが、vMVPDのFuboTVが独占禁止法違反で訴え、開始の差止めを求めた。法廷はFuboTVの差止めの要求を支持し、スタートは延期になっている。ESPN等のスポーツ専門ネットワーク、それにTBS等の試合を放送しているネットワークは、他のネットワークとバンドルされており、FuboTV等の多チャンネルサービス事業者がスポーツ・ネットワークだけを再送信契約することは出来ない。スポーツ専門パッケージを作ることは不可能であり、スポーツを放送したければ、その他のネットワークも契約しなければならない。Venue Sportsだけがその権利を得られるのは独占禁止法に触れるとい言うのがFuboTVの主張である。
FuboTVの訴えは同業者のDirecTV等のサポートがある以外、司法省、それにカリフォルニア、ニューヨーク、イリノイ等の16州が訴えを支持するアミカスブリーフを法廷に提出している。法廷はDisney等の3社による訴訟破棄を求める訴えを拒否しており、裁判は来年10月に始まることが決まった。Venue Sportsが勝訴する可能性は少なく、サービスを提供するためにはFuboTVと和解する必要がある。
3社は多チャンネルサービス事業者にも同様なスポーツ専門パッケージを提供することで和解は可能である。しかし、これは多チャンネルサービスの終わりを早めることになる。多チャンネルサービスにスポーツ専門パッケージが登場した場合、全チャンネルのパッケージ加入者は減るであろう。スポーツ以外の多チャンネル向けネットワークの価値は落ち、これらを手放そうとしているTVネットワーク会社には大きな損害になる。だが、スポーツをストリーミングに移行することを遅らせることも出来ない。リーグはテレビを見る媒体が放送からストリーミングに移行することで、ファンを失うことを懸念しており、Amazon、Netflix等との契約を増やしている。TVネットワークがスポーツのストリーミングを遅らせると配信権を失ってくことになる。
