脚本家は5月2日からストライキ入りをしている。すでに脚本が完了している番組の撮影は可能であったが、WGAメンバーがピケを張っているスタジオには他の組合メンバーも入らないので、制作は遅れていた。俳優もストライキ入りしたことで、AMPTPには属さないインディー系プロダクションで、SAG-AFTRAが承認した作品以外の映画、TVドラマの制作は完全にストップした。WGAとSAG-AFTRAのストライキが短期で終わっても、すでにスケジュールは遅れており、秋のシーズンに影響が出るのは確実になっている。
脚本が不要で、俳優を必要としないリアリーティ番組の制作は出来るが、リアリーティ、スポーツ、ニュースだけで4大地上波チャンネルの番組表を埋めることは出来ない。海外で制作するオプションもあるが、今からでは秋には間に合わず、さらにイギリス、フランス等の俳優組合もSAG-AFTRAを支持し、AMPTPのメンバーの仕事はしないと表明している。すでに制作されているドラマを見つける必要がある。CBSは多チャンネル向けネットワークで放送して来た「Yellowstone」を再放送する以外、CBSドラマの「Ghost」のイギリス版を放送するし、また、Paramount+向けに制作した「FBI True」をラインナップに加える。
ABCもDisney+向けの「Ms. Marvel」を放送し、NBCもPeacockから「Night Court」等を放送する。NBCはまた、夏季向けに制作したドラマの放送をキャンセルし、秋に公開する。これらの変更でシーズンは開始する事が出来るが、予定されていたドラマが無くなることで視聴が減ることは確実であり、放送離れを加速することになるであろう。また、Upfrontで契約した広告枠を満たすことが出来なくなり、広告収入を失う可能性もある。
コンテンツが減ることはストリーミングサービスにも影響を与えるが、放送程ではない。プライムタイムの放送で字幕、あるいは吹き替えした海外の番組を流すことは無理に近いが、ストリーミングでは大きな問題ではない。「Squid Game」のように大ヒットする作品を見つける事が出来なくても、加入者を飽きさせないコンテンツを見つけることは出来る。
海外でもオリジナルの制作に力を入れているNetflixはストライキの影響は少ないと語っている。これまでは海外でもアメリカで制作されたコンテンツの視聴が多かったが、最近になり英語以外のコンテンツの視聴が増えている。Netflixのヒットリストを調べたNext TV.comは英語以外の作品の視聴は1年でTV番組は30%、映画は20%増えている。アメリカ以外で制作されたコンテンツが全視聴時間に占めるシェアは昨年の20%から43%に増えている。PlumResearchによるとNetflixがコンテンツ投資を増やしている韓国では現地のオリジナルが占めるシェアは68%に達している。
しかし、アメリカのNetflix視聴者が見ている61%のコンテンツはアメリカで制作された物であり、多数の海外のコンテンツがあっても。アメリカではストライキの影響は避けられないであろう。また、海外で制作しているコンテンツが少ない、Disney+、MAX等のDTCサービスにもストライキの影響は多い。しかし、オンデマンドのサービスには視聴者の目にとまっていないコンテンツも多くあり、それが見つかるように出来れば、インパクトは緩和出来る。これが出来れば、再利用も増え、脚本家と俳優のメリットにもなる。その方法はストライキの原因になっているAIの活用である。AIをいかにコンテンツの発見に使うかはオンデマンド・サービスの課題であり、ストライキはこのR&Dを加速させるであろう。
