ATSC 3.0を使った有料放送のカムバック?

地上波放送局会社のGray TelevisionはNBAのPhoenix Sunsと契約し、Sunsと女子バスケットボール・リーグのWNBAのPhoenix Mercuryの試合をフェニックス地域で地上波放送する。Sunsはこれまでは全米放送されない試合はDiamond Sports Group(DSG)の地域スポーツネットワーク(RSN)のBally Sports Arizonaで放送してきた。しかし、DSGは破産し、スポーツチームへの支払いが滞っており、SunsはDSGとの契約を破棄し、Grayと契約した(DSGは契約違反でSunsを訴えている)。GrayはMercuryの今シーズンの残り13試合とプレイオフの試合をKTVHで放送し、来シーズンの試合はKPHEで放送する。Sunsの来シーズンの試合の内、40試合はKTVH、残りはKPHEで放送する。Gray地上波で放送する以外、有料でストリーミングもする。

この発表とほぼ同時にNHLのLas Vegas KnightsはRSNのAT&T SportsNetと手を切り、E.W. ScrippsのラスベガスのKMCC局と契約した。Warner Brothers DiscoveryのAT&T SportsNetは事業の閉鎖を発表している。

これらの発表の大きな疑問点は地上波で十分な収入が得られるのかである。Sunsが放送権を持つのはフェニックス、ニューメキシコ、ユタ、それにネバダ南部である。フェニックス市以外では月$25の有料ストリーミングからの収入になるが、フェニックスでは地上波からの収入になる。KTVH、KPHE共に独立系であり、いくら地元チームのSunsの試合であっても視聴者あたり、月$25の広告収入を得られるとは考えられない。

どのように収入を得るのか? KPHEが低出力局であることがヒントかも知れない。Evocaはボイシ(アイダホ州)、デンバー等でATSC 3.0を使ったケーブルTV的な有料サービスを提供していた。同社は十分な加入者が得られなく、昨年末に破綻した。加入者はScoutと呼ばれたSTBを使い、ATSC 3.0で放送されている有料チャンネルとATSC 1.0での地上波放送を見ることが出来た。フル出力局はATSC 3.0で放送した場合、ATSC 1.0でのサイマル放送をしなけれなならい規制があり、このようなサービスは出来ない。しかし、低出力局にはその義務が無く、Evocaは低出力局を使うことでサービスをしていた。

低出力局のKPHEはATSC 3.0に移行し、Sunsの試合を有料で放送するのかも知れない。Gray TelevisionはEvocaに投資していた会社の1つであり、そのビジネスモデルはよく知っている。一部の試合はKTVHで放送し、KPHEの有料放送は4K等、ATSC 3.0を有効に使った機能を提供すれば、十分な数のファンを引き付けることが出来るかも知れない。E. W. ScrippsのKMCCは低出力局ではないが、Scrippsは地上波向けDVR会社のNuvyyoを買収し、ATSC 3.0向けのSTBを提供しようとしている。低出力局が必要であれば、買収は困難ではない。