Disney、Netflix共に広告付きSVODサービスを開始するが、スタートラインは全く異なる。Disneyは当然だが、放送広告をよく理解しており、さらに広告付きSVODではパイオニアであり、CTV広告収入ではトップのHuluをもっている。アドテックにも積極的で、2021年にはプログラマティック広告販売プラットフォームのDisney Real-Time Ad Exchange(DRAX)を設立している。Disneyの今年のUpfrontでの契約額はこれまで最高の$90億に達し、その40%はHulu、ABC.com等のストリーミング・サービス向けの広告契約であったと発表されている。
そのDisneyがパートナーに選んだ会社はDSPのTrade Deskである。Trade Deskをパートナーとして選んだのは広告プラットフォームの統合の為である。HuluはDisneyが運営しているが、Comcastとのジョイント保有であり、Huluの広告販売はABC.com等のDisneyのデジタル広告媒体とは別である。Trade DeskはDisney+、ABC.comに加え、Huluの在庫も販売する。これにより、HuluとDisney+を組み合わせた、Disneyベースの広告キャンペーンが可能になる。
Disneyはその放送とOTTの視聴者のデータだけでなく、Disneyブランドの物販、テーマパーク等への訪問者等の豊富なユーザ情報を持っている。これもHuluのユーザIDとは異なるが、Trade Deskのポスト・クッキーのソリューションであるUnified ID 2.0で統合する。
さらにDisneyは自社のデータ、それに調査会社、スポンサー、広告代理店等のデータを統合して使えるようにする。データ自体は共有しない、クリーンルーム・ソリューションを10月に発表しいる。DirecTVは放送、OTT、デジタル等のDisneyの広告媒体を統合したキャンペーンを可能にするだけでなく、プログラマティックでの広告販売にも積極的であり、2026年までに在庫の50%は自動で販売することを目的としている。昨年のUpfrontでは自働的な販売はすでに40%に達したと発表している。
これに対して、Netflixは放送とCTV広告のノーハウを技術を得ることから始めなければならない。Netflixには加入者の視聴嗜好に関するデータはあるが、それが広告にどの程度結びつくものかは分からない。広告技術を得るためにRokuの買収が噂された。しかし、NetflixにはRokuのストリーミング・デバイス事業は不要である。広告収入がなくなったデバイス部門だけをスピンオフするのも困難である。Comcast、Google等とパートナーシップを組む交渉をしていると報じられた。しかし、どちらもNetflixと競合するストリーミングサービスを持つ会社であり、長期的なパートナーにはなり得ない。
最終的にNetflixはMicrosoftを選んだ。同社のBing等からの広告収入は2021年で$78億あった。2022年Q1の広告売上は前年同期から20%増えた$29億になっている。Microsoft自体には放送広告の経験は無いが、2022年6月にAT&Tの広告事業のXandrを買収している。XandrはAT&Tが買収したデジタル広告プラットフォームのAppNexusとTV向けのプログラマティック広告技術のClypdをベースにした会社でWarnerMediaの広告事業の為に作られたが、WarnerMediaのスピンオフの時点で売却された。
NetflixとMicrosoftの契約内容は発表されていないが、単にMicrosoftがNetflixの広告プラットフォームとなり、広告販売をするだけでなく、より戦略的な内容と推定されている。Netflixの視聴データにMicrosoftのBing等からのデータを加え、両者の媒体を融合した販売が出来れば、価値は1+1=2以上になる。Netflixはゲームに積極的になっており、Xboxとの協力、それにNetflixのクラウドをAWSからAzure に移行する等も噂になっている。Netflixの広告付きサービスは2023年の開始になる。
HuluはすでにCTV広告では22%を持つトップ・プラットフォームである。Disney+が加わることで、Disneyのシェアはさらに増える。Hulu加入者の70%は広告付きプランを利用しており、Disney+も同程度の利用者が広告付きプランを選ぶと予想されている。対して、Netflixの広告市場へのインパクトはすぐには現れないであろう。Whip Mediaが同社のTV Timeアプリの利用者、2460人を対象に行なった調査によると、広告付きプランに移行する可能性があると答えたのは15%であったのに対し、可能性は低いと答えたのは72%であった。

Whip Media
Netflixの広告付きプランへの利用者が増えるのには時間がかかると思われる。しかし、潜在的なインパクトは膨大である。Nielsenによると6月のテレビの視聴時間の7.7%はNetflixが締めており、地上波でもっと視聴率が高いCBSの4.3%より多い。Netflixの加入者の40%程度が広告付きプランに加入するだけで、TVの視聴時間のシェアでは最大の広告プラットフォームになる。

Nielsen
