ベータマックス裁判の再考

10月に音楽関係の著作権管理を行っているRIAA(Recording Industry Association of America)は、ソースコードのホスティングをしているGitHub(2018年にMicrosoftが買収)に対して、YouTube-dlとその派生プログラムの削除(テイクダウン)を求めた。YouTube等のサイトからコンテンツのダウンロードを可能にするYouTube-dl等はDRMを回避しており、著作権法のセクション1201に触れていると言うのがRIAAの言い分である。これに対して、Electronic Frontier Foundationの弁護団はYouTube-dl等はYouTube等のコンテンツの技術的な保護は回避していないと判断し、11月にGitHubはこれらソフトウェアの公開を再開した。この騒動は1984年のベータマックス裁判を思い出させる。

コンテンツ事業者のUniversalは1976年にVCRによるテレビ番組の録画は著作権侵害であり、それはVCRを製造しているSonyの責任であるとして、製品の差止め、損害賠償等を求める訴訟を起こした。第一審は家庭内での録画はフェアユースであり、著作権侵害にならないと判決を出したが、控訴では逆転になり、最高裁で審議された。1984年に最高裁は、家庭内でのタイムシフト視聴はフェアユースの範囲であり、また、録画行為のすべてが違法でもなく、さらにフェアユースでの録画に対しては異議の無い著作権者も多く存在することを指摘し、さらにUniversalはフェアユースでの録画行為が著作権物の市場価値に影響を与えていることを立証出来なかったとして、控訴裁判を逆転した。

YouTube-dlも同様である。著作権のある音楽ビデオをダウンロードすることが出来るが、ダウンロード自体が違法行為ではなく、フェアユースの範囲であれば、違法ではない。RIAAはYouTube-dlはYouTube等のURLから実際にそのコンテンツがあるURLを解析しており、これが、コピー保護の回避になると言っている。RIAAが訴訟を起こすかは不明だが、デジタル化の現在、利用者がコンテンツを録画する価値は薄まっている。

VCR等の録画機器がヒットしたのは、タイムシフト、広告スキップ、それにコンテンツのコレクションの3つの理由である。SVODが主流の現在、どれも無意味である。見たいコンテンツはいつでも見ることが可能で、タイムシフトの必要性は無い。SVODには広告が無いのでスキップの必要も無い。クラウドに膨大なコレクションがあり、個人で収集する必要もない。YouTubeには広告があるが、有料のPremiumに加入すれば、広告は無くなる。さらに、コンテンツのダウンロードも可能になり、ブロードバンド環境が悪い環境でも使えるローカルコレクションを持つ事も出来る。

もしも、Netflixのコンテンツをローカルにコピーする録画機があっても、それをフェアユースの範囲で使うために買う人は少ないであろう。ストーレッジのコスト、その管理の手間を考えるとNetflixのコレクションをコピーするのは無駄な行為である。ホームレコーディングの時代は過ぎ去り始めている。