戻らないスポーツファンとSinclairの問題

COVID-19はスポーツに大きな影響を与えた。試合は中止になり、テレビからもスポーツ番組が消えた。スポーツファンは再開を待ち望み、Magidが5月に行った調査では50%以上のファンはスポーツ放送が戻ったら、これまで以上にスポーツ中継を見ると答えた。スポーツリーグ、チーム、TVネットワークには嬉しい答えで、実際に7月にMLBが再開した最初の試合の視聴者数は400万人で、2017年の370万人を超えて、記録を作った。しかし、これは持続せず、その後の視聴者は落ちている。NFLの最初の週の視聴数は2019年から8%のダウンであった。

しかし、スポーツに対する関心が無くなっている訳では無い。試合中継の視聴者は減っているが、オンラインのハイライトビデオの視聴は増えている。RingDigitalの統計では2020年9月にはアメリカで7500万本のスポーツ試合のハイライトビデオが消費され、1400人を対象にした調査では27%が試合のハイライトビデオを視聴している。試合を見続けるのではなく、ソーシャルメディアで話題になった時だけにその部分のビデオクリップを見る、あるいは試合後にハイライトのビデオだけを見ると言う、オンデマンド的なスポーツの視聴が増えていたが、COVID-19はこれを加速化させたようである。

このトレンドはスポーツ専門チャンネルの問題を深めていく。スポーツチャンネルは再送信料金が高く、スポーツチャンネルがない多チャンネルサービスのパッケージが出ている。さらに、コードカッティングの影響もあり、最大のスポーツ専門チャンネルのESPNも加入世帯が減っている。対策として、ESPNはOTT版のESPN+を作り、Q2で850万人の加入者を得ている。ESPNは11月にOTTシフトの為に、約5000人いる従業員の500の役職を廃止した。NBCUniversalもプレミアムリーグ試合のテレビ放送を減らし、Peacockで配信し始めている。

スポーツファンには2つのタイプがある。1つはスポーツ全体、あるいは特定の競技が好きであり、チームに関係なく、試合を楽しんでいる人で、もう1つは特定のチームのファンである。ESPN等のスポーツ専門チャンネルは主要な試合を放送するので前者には良いが、特定チームの全試合をみることは出来ない。地元チームの全試合を見たい人の為に地域スポーツネットワーク(RSN、Regional Sports Networks)がある。しかし、スポーツファンでも地元チームの大ファンでなければ、全試合を見たい訳ではなく、ハイライトビデオで満足するカジュアルなスポーツファンが増えることは、RSNの必要性を減らしている。

RSNの再送信料も高騰しており、2012年では$3程度であったが、現在では$10程度に値上がりしている。RSNは昔から基本パッケージに含まれるチャンネルであり、既存の多チャンネルサービスでは切りづらいが、vMVPDはRSNを切り始め、YouTube TV、Hulu with Live TV共にRSNとの再契約をしていない。既存の多チャンネルサービスでもRSNを基本パッケージから外す動きが出ている。

RSNをオプションの有料チャンネル、あるいは有料のOTTにすることは難しい。RSNの再送信料が$10として、RSNを見ている多チャンネル加入者が多チャンネルサービス加入者の20%とすれば、$50の料金にしないと現在と同じ収入は得られない。$50では加入者が減ることは確実である。これはFoxの21のRSNを$106億で買った地上波局会社のSinclairへの大きな問題となっている。2018年でFoxがRSNから得た収入は$38億である。Sinclairは3年で投資を回収する予定であったが、それが不可能になっている。Sinclairの2019年の年商は$42億で、その時価総額は$14億程度である。$106億の負債が予定通りに返すことが出来ないと大きな問題になる。SinclairはRSNに対して$42億の減損処理を行っている。