多チャンネルサービス市場の変化

多チャンネルサービス市場が大きく変化をし始めている。1つの動きはOTTベースの多チャンネルサービスの登場である。Leichtman Research Group(LRG)社の推定ではSling TVとDirecTV Nowの2つのサービスだけで、2016年末での加入者は138万世帯になっている。

OTT多チャンネルサービスの増加は84.5万世帯で、19.1万世帯の衛星放送を超え、最も加入者の増加が多かったサービス形態となっている。しかし、OTT多チャンネルサービスを加えても多チャンネルサービス事業者の合計加入者数は9,363.4万世帯で、2015年末からは79.7万世帯を減少をしている。OTT多チャンネルサービスを除くと164.2万世帯を失った事になる。

もう1つの大きな変化はケーブルTVのカムバックである。これまで最も加入者を失ってきたケーブルTV事業者の2016年の加入者ロスは27.8万世帯である。これは、155.5万世帯を失った電話事業者より遥かに少ない。これはより正確にはケーブルTVのカムバックと言うより、Comcastのカムバックである。Comcastは2016年に16.1万世帯の加入者を増やした。ケーブルTV事業者では唯一、加入者を増やしたただけでなく、最も成長をした事業者であった。DirecTVは122.8万世帯を加え、DirecTV Nowも20万世帯を得たが、Uverse TVは135.9万世帯を失っているので、事業者としてはAT&Tは13万世帯を失った事になる。

OTT多チャンネルサービスの台頭、それにComcastのカムバックの背景にはOTTベースのビデオサービスの普及がある。Netflix、Amazon Instant Video、Hulu等のSVODサービス利用者は60%を超えている。SVODのコンテンツを見る時間が増えれば、当然ながら多チャンネルサービスの番組を見る時間は減り、加入者も減る。だが、ライブ放送の魅力が無くなったとは言えいない。視聴者としては放送でライブで見たい時もあれば、オンデマンドで見たい時もある。事業者としては視聴者にどちらかの選択を求めるのではなく、視聴オプションを広げる事を提案するべきである。

OTTベースの多チャンネルサービスは放送とオンデマンドの両立を可能にしようとしている。Roku等のストリーミングプレーヤを使いSling TV等のOTT多チャンネルサービスに加入する事で同じSTBで放送とNetflix等のSVODの両方を楽しむ事が出来き、マルチデバイス化も可能になる。OTT多チャンネルサービスにはTV Everywhereが含まれるので、Netflixには無い、現シーズンの番組もオンデマンドで視聴可能になる。

主要多チャンネルサービス加入者数

多チャンネルサービス

加入者数(16年末)

     16年の加入世帯増減

ケーブルTVサービス    
Comcast

22,508,000

161,000

Charter

17,236,000

(187,000)

Altice USA

3,469,000

(111,000)

Mediacom

826,000

(27,000)

Cable One

320,246

(43,904)

その他主要ケーブルTV

4,290,000

(70,000)

大手ケーブルTV合計

48,651,246

(277,904)

衛星放送    
DirecTV

21,012,000

1,228,000
Dish Network

12,491,000

(1,037,000)
衛星放送合計

33,503,000

191,000
電話事業者    
Verizon FiOS

4,694,000

59,000

AT&T Uverse

4,281,000

(1,359,000)

Frontier

1,125,000

(255,000)

主要電話事業者合計

10,100,000

(1,555,000)

OTT多チャンネルサービス    
Sling TV

1,180,000

645,000

DirecTV Now

200,000

200,000

主要OTT多チャンネルサービス合計

1,380,000

845,000

主要多チャンネルサービス合計

93,634,246

(796,904)

Leichtman Research Group

しかし、問題は残っている。同じデバイス(ストリーミング・プレーヤ、あるいはモバイル端末)で放送とSVODの両方を見る事は出来るが、アプリは別であり、同じ環境ではない。この問題に対するソリューションを提供しているのがComcastである。ComcastのX1はハイブリッドSTBであり、既存のケーブルTVに加え、Netflix等も視聴可能にしている。これだけでは、RokuでSling TVとNetflixを見ているのと同じであるが、X1では検索も統一されており、X1の検索機能から放送、Comcastのオンデマンド、それにNetflix等のOTTサービスからの検索が表示される。番組名を入力すれば、その番組の次のエピソードの放送予定、Comcastのオンデマンドから現シーズンの放送済みエピソード、さらにNetflixから過去のシーズンのエピソードが表示される。選択したエピソードがNetflixからの配信であれば、選択するだけで自動的にアプリが立ち上がり、再生が開始される。

世帯の50%近くは多チャンネルサービスとSVODの両方に加入しており、いかに両方のサービスを使い易い環境を提供するかが今後の課題である。OTTでの多チャンネルサービスの配信はその第一歩である。これをベースにRoku等がOTT多チャンネルサービスとSVODの統合検索を可能にする動きがある。また、Comcastの様に既存の多チャンネルサービスにSVODを取り込む方法もある。さらに、さらに、Amazon Instant VideoのAmazon Channelの様に1つのサービスから多様なOTTサービスを利用可能にする方向もある。Amazon Channelにはリニア配信のサービスはまだ無いが、Amazonが自社でOTT多チャンネルサービスを加える事、あるいはSling TV等をサービスに加える事も可能である。