STBの標準化

20年前に通過した1996年通信法は、電話端末の自由化と同様にケーブルTVサービスでもサービスと端末(STB)のアンバンドル化を求めている。ケーブルTV STBの小売を可能にする為の標準化の一環として、CASをPCカードで提供するするCableCARD規格が出来た。しかし、CableCARDのインパクトは殆ど無く、STBのレンタルは続いている。STBのレンタルコストは1加入世帯で年間$231で、市場全体では$200億になっている。

CableCARD規制は昨年の12月で失効した。しかし、通信法はサービスと端末のアンバンドル化を要求しており、新たな対策が必要になる。2月のFCC委員会で次のSTB自由化に向けた動きを開始する議案が3-2で通過した(賛成は民主党系委員3人)。

多チャンネルサービス向けSTBの自由化の為にWheeler委員長が求めている事は基本的には、(1)既存の標準規格化団体が多チャンネルサービスのSTBを標準化する規制を作ること、それに、(2)第3者が多チャンネルサービスを配信出来る基本情報のオープン化である。

(1)に関しては多チャンネルサービス事業者の反対は特には無い。自由化は1996年通信法が決めたことでもあり、また、標準規格化団体が中心になる事に文句は言えない。さらに時間もある。多チャンネルサービス事業者は規格化の為には7年の猶予が必要だとしている。FCCは5年間を考えている様だが、いずれにしても時間はある。

大きな問題は(2)である。ここでFCCが求めるいるのはサードパーティーのSTBが使えるように、多チャンネルサービス事業者が下記の3つの情報を提供する事である。

  • サービスのディスカバリー: カスタマーに対してどのコンテンツが提供されているかの情報
  • カスタマーの権利: カスタマーがどの番組にアクセスし、それをいかに視聴出来るか(例えば、視聴デバイス、場所、録画)の情報
  • コンテンツ: カスタマーが視聴するコンテンツ自体

市場の動きとしては、コンテンツはQAM、あるいは衛星で放送しても、家庭内のゲートウェイでIP化して、スマートTV、子機、タブレット、スマートフォン等で視聴可能にする方向になる。さらに、宅外での視聴を可能にする為にインターネットでの配信も増えるであろう。マルチデバイス化(STBの開放)は避けられない事である。しかし、事業者独自のSTBが無くなっても、アプリを管理出来れば、多チャンネルサービス事業者の既存ビジネスモデルは成り立つ。

だが、FCCが求める情報をサードパーティーに提供する事が義務化されると、多チャンネルサービス事業者は多チャンネル「サービス」の提供者ではなく、「コンテンツ」提供者になる。これら情報を得る事が出来れば、サードパーティーがスマートTV、ストリーミング・プレーヤ、モバイル端末向けのアプリを開発する事が可能になる。配信事業者がComcastであっても、それを視聴する為のアプリはApple、Google、Amazon、Netflix等が自由に開発する事が出来る。iOSユーザであれば、コンテンツ配信がComcastでも、AT&Tでも、視聴にはAppleのデバイスとアプリを使える。それだけではなく、例えばNetflix等のSVOD事業者でもそのアプリ内でリニア視聴をオプションで提供する事も可能になる。

Comcast、AT&T等の多チャンネルサービス事業者は、現在の様に付加価値を提供する事は出来なく、コンテンツを配信するだけになってしまう。Comcast等が現在と同じ加入者数を維持出来たとしても、ブランド価値は大きくと減る。多チャンネルサービス利用者に取り、重要なのはデバイスとアプリで、多チャンネルサービスはアプリ内で購入する物になってしまう。

FCCが可決したこの議案が規制になる迄には今後、様々な議論が出てくる。例えば、民主党系委員のMichael O’Riellyはこの規制とOTT事業者を多チャンネルサービス事業者として認識するかは同時に検討するべきだと発言している。もし、Netflixも多チャンネルサービス事業者と認識され、このSTB規制が通過した場合、NetflixはApple、Amazon、Google等に対してサービスを提供する情報を提供しなければならなくなり、AppleがNetflixのサービスを使うための独自アプリを開発する事も可能になる。