Apple TVの新モデル発表

Appleは3年6ヶ月ぶりにApple TVの新製品を発表した。タッチ・コントロール、音声検索、ユニバーサルな検索、tvOSによるアプリ等の新しい機能を持っているが、最先端とは言えない。タッチ・コントロールは2014年にRoviに買収されたFan TVが最初に採用した。音声検索はすでにComcastのX1、AmazonのFire TVで使われている。複数のサービスから番組を検索する機能はTiVo、それにGoogle Fiber TVに搭載されている。STBでアプリ(ウィジェット)を走らせる機能は数年前からFiOS TV等、それにGoogle TVにもあったが、ポピュラーにはなっていない。Fire TV、それにNvidiaのAndroid TVベースのSHIELD等はゲームを走らせる事が出来る。

Apple TVはこれらの機能をまとめて搭載したことでは先進的である。しかし、OTTサービス向けのインターネットSTB(iSTB)としては高価である。Apple TVは32 GBバージョンが$149、64 GBバージョンが$199である。メモリー容量は少ないが、$100のRoku 3、Fire TVより1.5~2倍の値段で、Roku Streaming Stick($47)、Fire TV Stick($40)、 Chromecast($35)の3~5倍の値段である。

予定されているAppleのOTT TVサービスが一緒に発表になっていれば、その評価は異なっていたであろうが、ハードウェアだけでは、期待されたレベルには達していない。特に、4K対応では無いことは残念である。Apple TVの発表に直後にAmazonは4K対応のいFire TVを発表している。一番注目される店はtvOSを搭載し、モバイル端末と同様にアプリをストアで提供する事が可能になった事である。閉鎖されていたこれまでのApple TVの環境とは異なり、アプリ提供はオープンになり、OTTサービス事業者はAppleとの交渉無しでアプリの提供が可能になる。発表ではMLB.comが野球中継のストリーミングと同時に選手の統計等を見る事が出来るアプリをデモした。CEOのTim Cook氏も「TVの将来はアプリだ」と宣言した。

AppleのiOSには1100万人以上のディベロッパーがアプリを書いており、tvOSへのアプリに関する関心は高い。しかし、TVの将来はアプリであろうか? TVに双方向性を持ち込む考えはMicrosoftのWebTV時代からあったが、成功はしていない。スマートTVの出荷は伸びているが、利用は放送、あるいはOTTビデオの視聴であり、アプリの成功ではない。AppleにはiOSを大成功させた経歴があるが、それをTV持ち込む事が出来るであろうか。tvOSのアプリ市場を成功させることが出来るかには疑問があるが、「TV(視聴)の将来は(チャンネルでは無く)アプリである」事は正しい。

オンデマンドでの視聴が主流となり、リニア放送の重要性が無くなる事で、放送する為の「チャンネル」帯域を持つ事の重要性は減り、様々なプラットフォームでコンテンツ視聴を可能にする「アプリ」が将来になっている。これには多チャンネルサービス事業者も賛成している。多チャンネルサービスの共通プラットフォームを目的とするCableCARDの次世代のコンセプトとして、事業者はFCCにアプリを売り込んでいる。テレビ(あるいはSTB)はアプリを走らせる機能があり、いかなる方法(QAM、衛星、IP、etc.)で配信されたビデオでもゲートウェイで共通規格に変換し、テレビ(STB)はアプリで対応する。

「チャンネル」から「アプリ」に移行した環境でも重要になるのは「UI」と「ブランド」である。将来のビデオサービスはだれがチャンネルを提供するかではなく、誰がアプリ提供者になるかの争いである。多チャンネルサービス事業者は当然、現在と同じに多くのコンテンツ事業者と契約し、それらを同じUI環境で提供する方向に進みたい。同様に、Apple等も自社のUI環境で、多チャンネルサービス事業者が提供すると同じコンテンツを視聴する出来るようにしたい。どちらも共通したUIの提供により、自社ブランド(ユーザベース)の拡大を求める事になる。

しかし、コンテンツ無しではサービスは提供出来ない。コンテンツはキングだと言われるが、コンテンツ事業者はこれまで、チャンネル帯域を提供する事業者に頼る必要があった。だが、OTTによりコンテンツ事業者が自ら配信する事も可能になっている。コンテンツ事業者は多チャンネルサービスに頼る事無く、自社のアプリ(ブランド)で配信する事が出来る。しかし、ネットワークがそれぞれ個別のアプリで配信をした場合、UIはすべて異なり、検索も不可能で(現在のTV Everywhereのように)支離滅裂な環境になってしまう。

AppleのtvOSの環境であれば、TVネットワークは自社アプリで配信を出来るが、共通性が高いUIで統合され、全コンテンツの検索が出来る環境を得られる。コンテンツ事業者に取り、チャンネル帯域を提供する事業者は不要になっていく代わりに、アプリが走るプラットフォームを提供する事業者が必要になる。選ばれるのはComcastの様な既存の多チャンネルサービス事業者であろうか、あるいはAppleの様なインターネット・サービス系の事業者であろうか。