VerizonがAOLを買収

中止になったComcastのTime Warner Cable買収($450億)、審議中のAT&TのDirecTV買収($480億)と比較すると、$44億のVerizonによるAOL買収の規模は小さいが、買収は戦略的価値は大きい。

AOLは強力なインターネットコンテンツ会社であり、The Huffington Post、TechCrunch、Engadget、MAKERS、AOL.com等のコンテンツ・ブランドを持っている。AOLはcomScore社のデスクトップコンピュータで視聴されているビデオサイトとしては、Facebookに続き、3位である。

2015年3月デスクトップ・オンラインビデオ視聴者

サイト

ユニーク視聴者(1000)

Google系サイト 150,302
Facebook 94,600
AOL 65,820
Yahoo系サイト 62,867
VEVO 44,363
全視聴者数 193,302

comScore

Verizonはモバイルビデオのサービスを立ち上げようとしている。これは、Verizonにとり2回目の挑戦である。2007年にVerizonはQualcommのMediaFLOを使い、携帯端末向けの放送サービス、V-Castを開始した。V-Castはテレビネットワークが制作したショートコンテンツを主体にリニア放送を提供した。V-Castは失敗し、2011年にVerizonは撤退した。その時の教訓は、モバイルビデオサービスには、1)リニア放送より、オンデマンドが重要、それに2)一般向けのコンテンツでは無く、利用者層にターゲットしたビデオが必要と言う事であった。

現在、Verizonはスマートフォンでのビデオ視聴が多い若者にアピールするコンテンツを集めている。NFL、大学フットボール等のスポーツの配信権、それにYouTubeのチャンネルとして成功しているAwesomenessTV、若者の視聴者が多いViacom系のチャンネル等と契約をしている。AOLのコンテンツはVerizonのモバイルOTTが想定している利用者にフィットしている。

コンテンツも重要であるが、AOLにはそれ以上の資産がある。それは、広告プラットフォームである。AOLはAOL.com、Huffington Post等の自社ポータルへの広告配信サービスを提供しているだけでなく、Advertising.comと呼ばれる広告ネットワークを持ち、2007年に買収したAdTechの広告配信ソリューションを使った総合的なプラットフォームを提供している。4月には「ONE by AOL」と言うプログラマティック広告のプラットフォームも発表している。ComScoreの調べでは、デスクトップ・コンピュータ向けのビデオ広告の配信プラットフォームとしてAOLは4位で、Googleを抜いている。

この広告配信プラットフォームはVerizonに取り大きな魅力がある。Verizonは全米で6位の多チャンネルサービス事業者であり、映像配信の大手クラウドサービス事業者にもなっている。Verizon Digital Media Services(VDMS)はこれまでにEdgeCast、upLynk等を買収し、映像配信に特化したCDN/クラウドサービスになっている。Imagine Communicationsとパートナーシップがあり、ABCが行っているワークフローのIP化でのクラウドを提供する予定である。

2015年3月デスクトップ・オンライン広告リーチ率

プラットフォーム

全人口におけるリーチ率

BrightRoll 53.6%
Specific Media 50.1%
LiveRail 43.6%
AOL 41.9%
Google 32%

comScore

ABCを含めたテレビネットワークは新しい広告販売の方法を探している。テレビ広告は停滞している。Internet Advertising Bureau(IAB)の報告によると2014年におけるインターネット広告は$495億で、地上波テレビ広告は$405億であった。多チャンネルサービスの広告も含めたテレビ広告は$657億で、インターネット広告より大きいが、現在のトレンドが続けば2~3年の間にインターネット広告はTV広告全体を追い抜く事になる。

ImageCapture[06-05-2015-4]
IAB; PricewaterhouseCoopersの調査
* 多チャンネルサービスは2014年から調査方法が変わっている
** 雑誌は2013年から一般向けのみで、業界専門誌は含まれない

これまでの視聴率をベースにしたテレビ広告には成長性は無く、テレビ広告もインターネット広告と同様にターゲット可能で、効果の測定が可能である事が求められる。NBCUniversalは新しい広告販売の方法として、ComcastのSTBからのデータをベースにしたAudience Target Platformを発表している。Disney/ABCは同様に、CablevisionのSTBから得たデータをベースにした広告の販売を行う。

視聴形態がリニアからオンデマンドに進む事で、よりリアルタイムな広告売買と配信技術が求められており、ウェブ広告で採用されているプログラマティックな広告買い付けを放送でも取り入れる事に対する関心も強い。FiOS TVを通じ、TVネットワークの仕組みも分かっているVerizonとインターネット広告では大手のAOLが1つになる事は新しいテレビ広告の促進に大きなインパクトを持つ。