2014年は4K元年

2014年がアメリカでの4K市場元年となる事はほぼ確実になった。ここで、重要なのは4K市場の立ち上がり方は、HDの時とは全く異なる事だ。HDの時は、HD対応の受像機が一般になる以前に放送が始まった。HDテレビ受像機だけでなく、多チャンネルサービスでのHDパッケージも高価であり、市場は裕福な層から徐々に立ち上がった。HDテレビが値下がりし、普及が始まった後でも、多チャンネルにおけるHDサービスは高価で、多くの世帯はしばらくの間、SDのSTBを使い続けていた。

HDと4Kの大きな違いの1つは、コンテンツ配信は放送ではなく、インターネットでのストリーミングでスタートする事である。地上波での4K放送の予定は無く、4大ネットワークの4Kへのコミットもほぼ無い。多チャネル事業者のComcast、それにDirecTVは、4Kサービスを提供する事を発表している。Comcastは2013年のNCTAで4K放送のデモをしており、DirecTVも衛星を使った4K放送を計画している。しかし、どちらも最初の4Kのサービスは「放送」ではなく、インターネットを使ったサービスとして開始する。

Comcast、DirecTVがブロードバンドでの4K配信を開始するだけでなく、ストリーミングビデオ事業者のNetflix、Amazon、YouTube、M-Go(TechnicolorとDreamworksのJV)も4Kでのサービスを開始する。Amazonは、オリジナル番組を4Kで制作する以外、Lions Gate、20th Century Fox、Warner Brothers、Discovery等と4Kコンテンツの調達契約を結んでいる。NetflixはHouse of Cardsのセカンドシーズンを4Kで制作しており、早ければ2月のHouse of Cards公開の時から4Kサービスが開始する。NetflixはHEVCを使い、15.6 Mbpsの速度で4Kの配信をする。

4Kサービスがインターネットでスタートする事は2つの大きな意味を持つ。1つは、4Kサービスを受けるコストは、HDの時の様に高価にならない事だ。HDでは、DirecTVが一番乗りをし、積極的であった。DirecTVはHDの為に多くの新たな衛星を打ち上げ、大きな投資をした。数年間は、HDチャンネルの数ではDirecTVがリードし、独占状況であった。当然、DirecTVのHDサービスは高価であった。ケーブルTV事業者も徐々にHDサービスを増やしていったが、ネットワークへの投資が必要で、やはり高価であった。

ストリーミングでは状況は違い、1社独占にはならない。利用者が十分な容量のブロードバンドを持っていれば、4Kコンテンツを得ることは出来る。4Kサービスの提供を発表している会社は価格モデルを発表していない。当然、プレミアム料金を得たいだろうが、他社の価格も考慮する必要がある。Amazonは、最低でも自社制作の番組は既存のPrime Instant Videoで配信する予定である。Amazonがこれをした場合、Netflixに取り、4Kコンテンツを別価格にする事が難しくなる。Comcast、DirecTVもインターネットでの4Kサービスはそれぞれの多チャンネルサービスへの加入者対象であり、一部の4Kコンテンツはプレミアム無しで提供する。4KではNetflix、Amazon等が競合し、4Kコンテンツにプレミアムを付けて儲ける事は出来ない状況である。

2つ目は、スマートTVの重要性である。現時点ではまだ、4Kに対応したストリーミング・メディア・プレーヤは無い。ComcastのX1はIPにも対応したハイブリッドSTBで、ストリーミング4Kにも対応出来るが、ソフトウェアが対応出来るのは今年の後半と予定されている。Netflix、Amazon、Comcast、DirecTV等の4Kサービスを最初に利用するには4KスマートTVが必要になる。Samsungは、Amazon、Comcast、DirecTVの4Kサービスへの対応を発表し、LG、SonyはNetflixの4Kの支持を発表している。4Kの地上波放送は(最低でも数年間は)始まらなく、4Kテレビにはチューナは不要であるが、(最初の時点では)インターネット対応は不可欠になる。4Kではチューナ(放送)、よりスマートTV(インターネット)の重要度が高くなる。

HDの時とはテレビの値段も違う。HDテレビは高価であった。HDテレビを最初に買うことが出来たのは裕福な層である。しかし、4Kは違う。Searsに行けば、Seikiの50インチ、4Kテレビを$650で買う事が出来る。Seikiは昨年5月に$1000で4Kテレビを発売開始している。12月には$700に下がり、1月には$650になっている。Seikiは無名のメーカーであり、大きなインパクトは無い。しかし、CESではよりブランド名があるPolaroidが50インチの4KTVを$1000で発表した。

SeikiもPolaroidも4K対応であるが、スマートTVではなく、Netflix、Amazon等が提供する4Kコンテンツは見られない。4Kを見るには、結局は高価なスマートTVが必要になるのか? 多分、NOである。HDでの価格競争を始めたVizioが、低価格の4Kを無視するずはない。Vizioは、スマート4K TVを発表している。Vizioの4Kテレビは50インチ、55インチ、60インチ、65インチ、70インチのラインアップで、50インチは$1000、70インチは$2600となっている。VizioはAmazon、Netflix等の4Kサービスに対応するとは発表していないが、発売(7月頃)時点では、Netflixを含めた主要な4Kサービスには対応可能になる予定だ。

4Kのサービス、それにテレビ共に高価ではないことはコンシューマに取っては良い事であり、市場を急速に発展させる可能性がある。Qualcommはモバイル端末向けの4K対応のグラフィックプロセッサー、Snapdragonを開発している。モバイル端末で4Kビデオの編集が可能になる事は、YouTube等のユーザコンテンツの4K化を進める事になる。HDの時とは違い、裕福な層から市場が発展するのではなく、4Kは最初からミドルクラスに普及をする。

しかし、これは高価な4Kテレビで儲ける予定であった、既存テレビメーカーには困った事である。特に、Samsung、LGはこの動きに大きな危機を感じている。Samsung、LGはHDTVでは価格競争を始めた会社であった。しかし、どちらもその後は、ハイエンドに進もうとしている。Samsungは、Googleを抜き世界のベストブランドになっており(今月号の記事「世界のトップブランドはSamsung」参照)、価格競争をする意思は無い。CESではSamsungは$15,000の110インチの4KTV、Chef Collectionブランドの白物など、ハイエンド志向である事をアピールしていた。

Samsung、LGへの脅威は中国の低コスト生産に加えて、Googleがある。中国の生産を使えば、消費者が満足する製品を提供する事が出来る事はVizioは証明した。Vizioは2002年に6人でスタートした会社で、現在は売上31億ドル(Forbes社推定)になっている。しかし、誰でもがソフトウェアを開発できる訳ではない。Samsung、LGはそれを理解し、どちらもスマートTVを差別要因にして来た。しかし、GoogleはAndroidベースのハードウェア仕様を続々と公開しており、誰でもがスマートTVを作れる様になり始めている。Vizioは$100でGoogle TVのSTBを販売している。LGは、これまでGoogle TVを採用して来たが、今年のCESでWebOSベースのスマートTVを発表し、Google TVは廃止になる。

Samsung、LGは今年のCESでは湾曲ディスプレイを大きな売り物にした。ギミック的な要素が多いが、破格の4Kテレビとの違いをアピールする事が出来れば、その価値はある。外見が同じでは、Vizio等との価格競争を避ける事は出来ない。ハイエンドの4Kテレビ、イコール、湾曲ディスプレイのイメージを作る事が出来れば、しばらくの間は価格競争から逃れる事が出来るかも知れない。