ここ最近のケーブルTV事業者の加入者数減少幅が少なかった事から多チャンネルサービス加入者ロスはブレーキがかかり、第2四半期の減少規模は昨年程度の30万世帯と楽観視されていた。しかし、AT&Tによる買収で四半期報告が遅れていたDirecTVが前年同期の4倍近い、13.3万世帯を失った事で状況は急変した。
DirecTVの加入者減少は多チャンネルサービス事業者中最大であった。AT&TのU-VerseはQ2に2.2万世帯を失ったので、DirecTVを含めたAT&T全体のロスは15.5万世帯となる。DirecTVの報告を見ると、第2四半期に失った顧客数は95.1万世帯で、前年同期から9000世帯増えただけである。しかし、新規加入者は前年同期より9万世帯も少なかった。新規加入者が減った理由は加入者のクレジット審査を厳しくした為であると報告されているが、新規加入者が大きくと減っていることは、今後の成長の可能性を疑問視させる。
さらに、8.1万世帯のマイナスと報告したDish Networkの加入者には同社のOTTベースのSling TVが含まれている事が明らかになる。Sling TVの加入者数は発表されていないが、20万を超えていると推定されている。そうであれば、Dishの衛星放送サービスのロスは28万世帯と言うことになる。Sling TVも多チャンネルサービスと見なせば、Dishの加入者減少は8.1万だが、OTTは多チャンネルサービスで無いとすれば、28万世帯の減少である。Leichtman Research Groupは業界のトップ13事業者の報告から13事業者だけで47万世帯の減少があったと計算している。SNL Kaganは市場全体で62.8万世帯減ったと推定し、IHSは減少を65.8万世帯とするレポートを発表している。
Q2は1年で最も多チャンネルサービスからの脱退が多い時期であるが、前年同期の倍と言う数字は放送業界に衝撃を与えている。また、今回の減少は過去と違うことがある。これまでの多チャンネルサービスの加入者減少はケーブルTVが理由であった。電話会社のビデオサービス(IPTV)の加入者は増え、衛星放送の加入者は僅かな増加、あるいは横這いで、ケーブルTVだけが加入者を失ってきた。ケーブルTVの加入者減少はアナログからフル・デジタルへの移行で料金が値上げになった事が理由であった。デジタル化によりケーブルTVのサービスも向上する事で、加入者数も徐々に安定をすると思われて来た。実際にComcastは昨年Q4には6000世帯であるが、加入者を増やし、今四半期の減少も6.9万世帯と少なかった。これまで大幅に加入者を失ってきたTime Warner Cableも今期のロスは4.5万世帯と少なかった。今回の大幅な減少の理由はケーブルTV事業者では無く、電話事業者と衛星放送事業者である。衛星放送事業者の2社は21.4万世帯を失った。Verizonの加入者は2.6万世帯増えたが、AT&Tは2.2万世帯を失い、IPTVの増加は4000~5000世帯でしか無かった。
この変化の理由として、ケーブルTV事業者のビデオサービスの内容が向上し、競合から加入者を奪い返し始めたこともあるが、基本的な通信/放送事業の変化も考慮する必要がある。ケーブルTV事業者のコアの事業はビデオサービスであったのが、最近ではブロードバンドになっている。すでにケーブルTV事業者のブロードバンドサービスへの加入者はビデオサービスへの加入者を上回っている。これまでは、ケーブルTV事業者のダブル、あるいはトリプルプレーでは主役はビデオで、データ、音声が服役であったのが、ブロードバンドが主役になり始め得ている。
OTTの普及で高速なブロードバンドが求められ、DSLより高速なサービスを提供出来るケーブルモデムが加入者を増やしている。MoffetNathanson社によるとケーブルTV事業者のブロードバンド加入者はQ2で61.5万世帯増え、6.1%の成長をした。ケーブルTV事業者はケーブルモデムで成功し、ダブルプレーを売り込む事でビデオサービスからの加入者脱退にブレーキを掛けている。
これに対して、電話事業者のブロードバンドサービスはMoffetNathanson社の推定では0.5%の成長でしかなく、それに伴い、IPTVサービスの増加も5000世帯でしかなかった。そして、ブロードバンドサービスの無い衛星事業者は今四半期に21.4万世帯を失っている。
Leichtman Research Group(LRG)は多チャンネルサービス加入世帯率は2010年の87%から83%に減ったと報告している。多チャンネルサービスへの加入者数の減少は大きくないが、世帯数は増えており、普及率は減少方向にある。LRG社によると多チャンネルサービスからの脱退率は10年前から大きな変化は無いが、新規加入が大きくと減っている。新しい世帯、要するに若い年齢の世帯は、多チャンネルサービスに加入する事無く、ブロードバンドでビデオを見ている。コードカッティング(多チャンネルサービスからの脱退)が問題ではなく、最初から多チャンネルサービスに加入しない世帯が増えている事が問題である。OTTにより多チャンネルサービスに加入する事無く、良いビデオを楽しめるようになった事もあるが、多チャンネルサービスの平均月額が2010年から39%も値上げされ、$99.10になっている事も若い年齢の世帯が多チャンネルサービスに加入しない大きな原因でもある。
