俳優のストライキが終了

7月14日に始まった俳優のストライキは118日で終了した。俳優を代表するSAG-AFTRAの役員はスタジオ側のAMPTPが提示した今後3年間の契約内容に対して86%対14%で合意した。契約はSAG-AFTRAの会員による12月5日締め切りの投票までは正式にはならないが、ストライキは11月9日に終り、俳優は仕事にもどった。しかし、俳優がストライキする以前に、脚本家がストライキしていたので、ドラマ制作には6ヶ月の滞りがあり、テレビドラマの放送が再開するのは来年の2月以降になる。

最大の争点であった賃金の値上げ、ストリーミングでの残余支払い、それにAIの利用に関しては下記の内容で同意された。

  • 賃金:俳優の賃金は初年度に7%、2024年7月に4%、2025年7月に5%増加され、エキストラは11%-4%-3.5%の増加を得た。年金の増加等を含め、合計では3年で$10億程度の増加になる。
  • ストリーミングからの報酬:俳優側はストリーミング向けに制作されたコンテンツには二次利用の報酬がほぼ存在しないことからレベニューシェアを求めてきたが、AMPTPは合意しなかった。最終的に脚本家と同様にヒット作(リリースから90日以内に加入者20%が視聴)に出演した俳優はボーナスとして固定残余報酬の100%(最大で$5000程度)を得ることで合意した。レベニューシェアの形も保つために、出演俳優にはボーナスの75%が支払われ、残り25%はSAG-AFTRAが一時保管し、ストリーミング向け作品に主演した全俳優に配分される。
  • AIの利用:スタジオは俳優のデジタル・レプリカを生成する場合、俳優から「明白、明瞭な」許可を得る必要がある。さらに、そのデジタル・レプリカを利用する際にその都度、許可を得る必要があり、また、スタジオは俳優が実際に出演したと同等の賃金と残余報酬を支払う。ただし、すでに俳優が出演した場面をデジタル・レプリカでリプレースする場合は、支払いの対象にはならない。SAG-AFTRA役員の一部は、この内容ではスタジオがデジタル・レプリカを拒否する俳優を雇わなくなる可能性があるとして批判的である。

ストライクは終了したが、契約内容はSAG-AFTRA側の妥協であり、3年後の契約更新は再度、もつれる可能性が高い。DTCサービスの殆どはまだ赤字であり、ストリーミング向けの作品のレベニューシェアに現時点でスタジオ側が応じることはあり得ない。しかし、Warner Bros. DiscoveryはDTCサービスを黒字化し、Disneyも来年には黒字になると発表している。3年後にはストリーミング・サービスは黒字になり、放送からの収入はさらに減っているであろう。俳優との契約内容もストリーミングが主体になるように変わる必要がある。

AIの利用の合意内容に関しては批判もあるが、現状ではこれ以上の規則を作るのは困難である。問題点が明らかでない時点で詳細な規則を作るのは無理であり、下手な規則は逆に抜け道を作る可能性もある。AIの利用に関してのスタジオとクリエイター/アーチストとの争いは3年後にはさらに大きな問題に発展しているであろう。