ケーブルTV時代の終り

ケーブルTV事業者は衛星放送に始まり、電話事業者のビデオサービス(IPTV)、そしてOTTと戦ってきた。衛星放送とIPTVは真っ向からの戦いであり、シェアを落としてきた。しかし、Netflix等のOTTとの戦いは全く異なるものであった。最初は、OTTは絶対の敵であった。だが、OTTが普及する事でブロードバンドの加入者が増え、より高速(高価)なサービスへの要求が増えた。結果的には、ケーブルTVは衛星放送とIPTVの競合で、多チャンネルサービスのシェアを大きく失ったが、ブロードバンドのシェアと収入を増やし、収益はアップしている。

ケーブルTVは衰退しており、ブロードバンドの成長がケーブルTV事業者を支えている。今年の第1四半期でついに、ケーブルTV最大手のComcastでもブロードバンド加入者2237.5万世帯となり、ケーブルTV加入者の2236.9万世帯を抜いた。この動きの象徴として、NCTAのCable Showは今年からInternet and Television Expo(INTX)となり、名称からケーブルは消え、インターネットとテレビの展示会になった。NCTA会長のMichael PowellはINTXの貴重講演で、「ケーブル」と言う呼び名が嫌いだとまで言った。

ケーブルTV事業者のOTT敵視は無くなっている。大手ケーブルTV事業者はまだNetflixをSTB経由で提供していないが、すでに中小事業者のSuddenlink、RCN、Cogeco、Cable One、Midcontinent、Atlantic Broadband, Grande、Mediacom等がNetflixと契約し、STBからNetflixの視聴を可能にしている。ケーブルTV事業者ではなく、衛星放送だが、DISHもNetflixを提供している。HuluもケーブルTV事業者との契約を始め、Cablevision、Armstrong、Atlantic Broadband、Mediacom Communications、Midcontinent、OpenWideWestと契約した。HBO NowはCablevisionと契約している。

ブロードバンドが主体になっているケーブルTV事業者として、OTTとは競合する必要性は無い。OTTの需要が増えれば、ブロードバンドの需要が増える。売上としてはケーブルTVが高い。Comcastの第1四半期のケーブルTV売上は$53.3億に対して、ブロードバンドは$30.4億であった。しかし、ケーブルTVではチャンネル事業者との複雑な契約が必要であるが、ブロードバンドではそれは不要で、収益率は高い。OTT事業者と契約すれば、収入はさらに増える。既存のケーブルTV事業者がOTTを使ってくれれば、ケーブルTV料金+ケーブルモデム料金+OTT事業者との契約料が収入になる。

ケーブルTV事業者がOTTを加えたサービスを提供するにはIP対応のSTBが必要になる。Comcast等の大手は、X1の様な自社プラットフォームを開発出来るが、中小事業者には出来ない。中小事業者向けQAM+IPのハイブリッドSTBはTiVoの独占であった。Netflixと契約したケーブルTV事業者の殆どはTiVoを採用している。最近にPaceを買収し、STB市場の25%を持つようになったArris(Motorola)はTiVoとパテント争いをして来た。しかし、今月にArrisはTiVoと和解し、TiVoのソフトウェアを搭載したSTBを製造する契約をした。これで、ArrisはTiVoプラットフォームのSTBを提供する事が可能になる。IP機能の無いSTBでOTTに対応する方法もある。それは、ActiveVideoのCloudTVである。これも、Arrisが最近にケーブルTV事業者のCharterとのジョイントベンチャーで手に入れている。

OTTと協力する事で、ケーブルTV(多チャンネルサービス)事業者は新たな力を得ている。これまで、多チャンネルサービス事業者は既存のTVネットワークに逆らう事は出来なかった。ネットワークとの配信契約が出来なければ、ケーブルTV事業は成り立たない。しかし、OTTとパートナーする事でコンテンツは得られる。Netflixとの契約を真っ先に行った事業者の1つであるSuddenlinkは高価な契約料を求めたViacomとの契約を昨年切った。その時点での加入者は減ったが、今四半期のロスは6400世帯で終わり、収入は2.2%増えている。

Turner BroadcastingのTed TurnerはCATV(Community Antenna TV)との呼び名を嫌い、ケーブルTVと呼ぶ事を求めた。NCTAの「CT」は最初は「Community Television」の略であったのが、1968年に「Cable Television」になり、2001年に「Cable Telecommunications」になった。2015年にNCTA Cable Showが無くなり、ケーブルTVの時代は終わりになったと言えよう。しかし、ビデオサービスの需要は無くなったのでは無く、ブロードバンド+OTTにより新たな時代が始まっている。