ケーブルTV事業者のモバイル戦略

ケーブルTV事業者のモバイル市場への関心は1990年代からある。ケーブルTV事業者はPCS帯の競売で帯域を購入し、モバイル市場への参入を狙ったが、成功しなく、事業を手放していった。モバイル事業を行っていた最後の大手ケーブルTV事業者はComcastで、1999年にその800,000加入者のシステムをSBC Communications(現AT&T)に売り、第1幕が閉じた。

第2幕は2005年にComcast、Time Warner Cable, Cox、Bright Houseの4社はSprint Nextelとの、後にPivotと命名されたMVNOの契約を結ぶことで始まった。ケーブルTV事業者とSprintはケーブルTVサービスとモバイルを融合させたサービスを狙ったが、開発は大幅に遅れた。一部の地域でサービスは開始されたが、開始から数ヶ月後の2008年3月にPivotは解散となり、第2幕もあっけなく閉じた。

現在、ケーブルTV事業者はデータ重視の戦略で第3幕を開こうとしている。Pivotに参加しなかったCablevisionはデータ重視の戦略を以前から持ち、2年間で3億ドルの投資を行い、ニューヨークでWiFiネットワークを構築し、そのブロードバンドサービスへの加入者に無料でサービスを提供している。Cablevisionのシステムはニューヨーク中心であり、Verizonと激しい戦いを行っている。Cablevisionはその加入者の40%に電話サービスを売る事に成功し、Verizonの固定電話加入者を奪っている。VerizonはFiOSサービスをニューヨークで始めており、CablevisionのケーブルTV、ブロードバンドサービスの顧客を奪おうとしている。Verizonもそのブロードバンドサービスの加入者に対して、無償でWiFiサービスを始めている。

Pivotに参加したケーブルTV事業者中でCoxを除く、Comcast、Time Warner Cable、Bright Houseの3社は再度Sprintと協力し、ClearwireのWiMaxサービスに参加している。3社はClearwireのサービスを再販する契約をしており、Comcastは6月末からポートランド(オレゴン州)で、WiMaxのデータサービスを開始した。Comcastは7月末からアトランタでもWiMaxのサービスを始めた。Comcastは12 Mbpsのサービスを月額$50で提供している。サービスは現在データだけだが、ComcastはWiMax上でのVoIPのサービスを提供していく予定である。

また、Time Warner Cableも今年中にダラス、シャーロット(ノースカロライナ州)を含む4つの市場でWiMaxの再販を開始する予定である。Clearwire現在、バルチモア、ポートランド、ラスベガス、アトランタでサービスを開始しており、ボイズ(アイオワ)、西テキサス、ミルエッジビル(ジョージア)、セーラム(ノースカロライナ)で第3四半期にサービスを開始する予定。第2四半期にはシカゴ、フィラデルフィア、ダラス/フォートワース、グリーンズボロ(ノースカロライナ)、シャーロット(ノースカロライナ)、サンアントニオ、オースチンでサービスを開始する。

Clearwireのジョイントベンチャーには参加をしなかったCoxは最も積極的なモバイル戦略を持っている。同社はすでに5.5億ドルを投資し、自らサービスを提供する帯域をFCCの競売で競り落としている。Coxはこの帯域、それにSprint等の事業者から借りる回線で、15州に3G CDMAのネットワークを構築している。Coxも他のケーブルTV事業者と同様にモバイルデータが重要になると考え、出来るだけ早く4GのLong Term Evolutionに移行する予定であるが、他の事業者とは違い、音声無しではモバイルサービスは売りにくいと考えている。Coxの加入者の2分の3はケーブルTV、プラス固定電話かブロードバンドのいずれか、3分の1はトリプルプレーに加入しており、同社は「グランドスラム」と呼んでいるモバイルサービスのバンドルに積極的に取り組もうとしている。