アナログ停波が完了

6月12日のアナログ停波は1日(時差を入れると28時間)かけて行われた。最初の停波は東時間の午前12時から始まり、最後の停波はアラスカ時間の午後11時59分に完了した。停波時間はそれぞれに局が自由に決めることが出来、186局は現地時間の午前12時から午前6時の間にアナログ停波を終わらせた。239局は午前6時から午後12時、155局は午後12時から午後6時の間に停波を行い、391局は午後6時から午後11時59分の停波を選んだ。未明にアナログ停波を行った多くの局は、アナログで使っていたチャンネルをデジタルに再利用する局で、早朝の番組が始まる以前にアナログ放送を終了させ、デジタルで再スタートをした。

一部の局は有名人を呼んで、アナログ放送のスイッチを切るなどのイベントを行ったが、多くの局は儀式的な事は無しにアナログ停波を済ませた。まったく何の予告も無しで、番組の放送中に突然とスイッチを切った局もあった。

アナログ停波に準備が出来ていない世帯数は2月中旬の約500万から半減したが(Nielsen統計)、まだ250万近い世帯が未対応で、アナログ停波の当日はFCCが設置したコールセンターに問い合わせが殺到した。FCCへの問い合わせ数は、金曜が317,450件、土曜が145,403件、日曜が62,949件、そして月曜が94,945件であった。この他、放送局もコールセンターを設置しており、NABが行った200局への調査ではアナログ当日の平均は150件程度と多くは無かった。

当初の2月17日の予定から4ヶ月間の延期があった事で、FCCのサポート体制は大きくと進歩した。FCCはサポートの為に追加予算を得ることが出来、コールセンターの規模を増やした。アナログ停波の当日、東時間の午後2時までに122,389件の電話がコールセンターにあり、一時はオペレーターが出るまでに20分の待ち時間が必要となった。しかし、FCCは4000人のオペレーターを準備しており、短時間で人員数を増やすことが出来、夕方までには待ち時間を5分程度に減らせた。

FCCは電話でのサポートだけでなく、主要な地域には市民が訪れる事が出来る相談センターを設置し、また、自らではDTVコンバーターの設置が出来ない世帯の為に無料での出張設置サービスを提供した。DTVコンバーター、あるいはアンテナの設置の手助けに参加したのはボランティア団体のAmeriCorp.、地元の消防団等だけでなく、34の事業者も参加した。これら出張メンテナンス会社はボランティアで協力したのでは無く、FCCが契約をしたもので、これに487万ドルの予算が使われた。設置サービスの契約を受けた企業はApollo Industries、KMAD Business Service、Installers, Inc.、Best Buy(Geek Squad)などである。

FCCのコールセンターへの問い合わせの内、28%はDTVの設置に関するものであり、残りの殆どは受信不良に関してであった(特定の局の受信不良が26%、全体的な受信問題が23%)。受信不要の問題の多くは、一部の放送局のデジタル放送がUHFからVHFに変わった事から起きた。

放送局はこれまで新たに割り当てられたUHFチャンネルでデジタル放送をしてきた。多くのチャンネルはアナログ停波後も同じデジタルチャンネルで放送を続けるが、一部の局、特にアナログチャンネルがVHFであった局は、アナログ停波後に元のチャンネルに戻ることを選んだ。これより、アナログ停波後ではデジタルのチャンネルに変更があった。FCC、放送局はアナログ停波後にDTV、DTVコンバーターのチューナーを再スキャンをしないと映らなくなるチャンネルがある事を広報してきた。しかし、一部のDTVコンバーターは一度メモリーを消してから、再スキャンをしないと登録したチャンネルが変更されない不備があり、混乱を招いた。

また、アナログ停波以前のデジタルチャンネルはすべてUHFであったので、これまで売られてきた「HDTV対応」のアンテナの多くはUHF専用アンテナであった。しかし、アナログ停波後、チャンネルをVHFに戻した局が出たので、これら局はUFHアンテナでは受信出来なくなった事での混乱もあった。

しかし、殆どの地域では大きなトラブルはなかったが、一部で受信不良の問題が続いている地域もある。FCCへの問い合わせが多かった地域は1位がニューヨーク、2位がシカゴ、3位がロサンジェルス、4位がダラス・フォートワース、5位がフィラデルフィアであった。人口の割合からすると、問い合わせが最も多かったのはシカゴで、その理由はABC保有局のWLSの視聴が出来なくなる世帯が多く出たからである。ABCが保有する地上波局の10局はすべて、アナログ停波後、アナログに使っていたVHFチャンネルをデジタルに使う事を選んだ。しかし、大都市では他のラジオ波利用者への干渉の可能性から、デジタル放送ではアナログ時より低出力で放送をしなければならない。このため、高層ビルの多い都市で受信状況が悪くなり、シカゴだけで無く、ニューヨーク、フィラデルフィア等のABC局でも難視聴問題が出ている。

もう1つの受信不良の原因は、デジタルアンテナの設置場所である。一部の地域ではアナログアンテナの撤去をしてからでは無くては、良い位置にデジタルアンテナを移転する事が出来なく、その間、受信が不良になっている。シンシナチではVHF問題とこのアンテナ問題が一緒に起き、混乱をきたした。シンシナチのWKRC局はUHFからVHFに引っ越した事で受信が不良になる問題が起き、WCPO局はそのアナログアンテナが撤去出来るまで、望ましい位置にデジタルアンテナを置けない事から受信不良の問題がでた。2つの局にトラブルがあった事で、混乱も大きく、アナログ停波後の数日間だけで地元放送局に5000件近い問い合わせの電話があった。

アナログ停波は完了したが、デジタル移行が完了した訳ではない。受信不良の問題のある局とFCCは出力の増加を含めて対応を進めている。FCCは問題が起きている地域にエンジニアを派遣しており、すべての問題は解決可能だと発表している。また、まだデジタル対応になっていない世帯もある。Nielsenの統計では6月21日の時点で対応が出来ていない世帯は210万で、7月1日には170万世帯へと減った。

NITAはこれまでに3090万枚のDTVクーポンが利用され、まだ、予算は十分に残っていると発表している。議会では新たなDTV救済法案で出ている。これは2年間で7億ドルの予算を使い、DTVアンテナの購入と設置を援助し、さらにアナログ停波で見られなくなったチャンネルが出た世帯に対して、月額10ドルで地上波再送信だけのケーブルTVサービスを提供すると言う物である。FCCのコップス委員長代理はこれら難視聴問題が解決されるだけなく、放送局がデジタル移行により増えた容量を使い、公共の利益になる多様性のあるプログラミングを行うまでは、デジタル移行は本当に完了したと言えないと語っている。

現在、全米で118局がNightlight(常夜灯)プログラムに参加し、アナログチャンネルでデジタル移行に関する広報メッセージを流し続ける。これも数週間で、終了し、アナログ放送は低出力局(LPTV)だけとなる。