Appleがリニア番組の配信をするためにComcastと交渉をしているとの噂が出ている。AppleとTime Warner Cableは、TWCが行っているケーブルTVチャンネルのブロードバンドでのサイマルキャストのサービスで、タブレット、ゲーム機、Roku等に加えて、Apple TVも利用可能にする為の話し合いをして来た。ComcastによるTWCの買収が予定されている中、Comcastと同様な交渉をする事は不思議ではない。どの様な交渉がされているかは分からないが、この背景には3つの大きなポイントがある。
1つはリニア放送の重要性とその為の契約の難しさである。再利用コンテンツのストリーミングのサービスは誰でも提供をする事が出来る。金があれば、Netflixの様にDisneyとの独占契約も出来る。しかし、 新番組を放送/配信する契約をOTT事業者が得る事は容易ではない。インターネットを使ったバーチャル・ケーブルTVのサービスをIntelが諦めたのもコンテンツ契約の難しさが原因の1つになっている。しかし、新番組を提供する事無しでは魅力的なサービスは出来ない。
いくらAppleが素晴らしいビデオ視聴のデバイスを作ることが出来ても、コンテンツが無ければ成功はしない。コンテンツでの差別化の為に、Netflix、Amazonの様にオリジナル番組に投資をして行くのも1つの方法である。もし、リニアで放送されている新番組の配信を提供したいのであれば、既存の多チャンネル事業者との契約も選択肢である。
AppleがケーブルTVの様なリニア放送を考えてるのであれば、Comcastとの交渉をするもう1つの理由がある。それは、配信するネットワークである。Netflix等のストリーミングサービスはインターネットを使うオーバー・ザ・トップのサービスとしてスタートをした。しかし、インターネットでは高画質なサービスを提供する事が出来ない。ビデオ・オプティマイズの技術を開発しているConvivaが行った調査では、オンラインビデオの27%にバッファリングが起き、43%は低解像度になっている。YouTubeのビデオであれば、我慢できるかも知れないが、リニア放送でのバッファリングによるビデオの停止は受け入れがたい。配信側のサーバーが高性能で、利用者のネットワークが高速であっても、その間がインターネットでつながっている限り、パケットがどのように流れるかは分からない。また、ラストマイルが高速であっても、混雑があれば遅延する可能性もある。
Netflixは先月Comcastと直接接続の契約をし、NetflixのネットワークをComcastのエッジに接続させる事でインターネットを使わずにNetflixのコンテンツをComcastのブロードバンド加入者に提供する事を可能にした。NetflixのCEO、Reed Hasting氏はComcastに支払いをする事に対して不満の様で、契約後もインターネット中立性規制を求める発言をしている。しかし、
Netflixとして4Kを含めた高画質での配信を行うのであれば、インターネットに頼っている事は出来ない。
ComcastはViper(Video IP Engineering and Research)と呼ばれるIPベースのビデオ専門のネットワークの構築をしている。ViperはIPベースの様々なデバイスに対して高度なビデオサービスの提供を可能にするネットワークで、これによりComcastのネットワークDVRのサービスも可能になっている。AppleはNetflixの様にComcastのネットワークに直接接続するだけでなく、Viperを使い、クライアントのデバイスまでの優先接続も求めていると報じられている。Comcastが提供するリニア放送を優先接続で配信するだけでなく、iTunesのオンデマンドのコンテンツも優先配信する事をAppleは求めているらしい。ケーブルTV同等のサービスを提供するのであれば、Viperの様なビデオ配信にオプティマイズされたネットワークを使う必要がある。
第3のポイントはインタフェースで、誰がこのサービスのインタフェースを提供するかだ。Appleは当然の事、自分のインタフェースを使い、リニア放送とそのiTunesのオンデマンドサービスを融合させたサービスを提供したい。しかし、それはComcastも同様である。ComcastもAppleと同様にオンデマンドのサービス、それにESTを提供しており、既存の放送を含め、全てをX1のインタフェースで融合させようとしている。Comcastに取り、新たな収入減にオンデマンド、ESTのサービスを取り除き、さらにはXfinityのアイデンティティーであるユーザインタフェースも省き、リニアの放送部分とネットワークだけをAppleに提供をする価値はあるか? もし、あるとすればそれはAppleのインタフェースへのライセンスを得る事であろう。
これまでのケーブルTVのEPGと比較をすれば、X1は大きな進歩である。しかし、ユーザインタフェースとしてiOSの様な洗練さは無い。もし、ComcastがAppleのUIを独占で使えるのであれば、それは大きな魅力であろう。ComcastがAppleのインタフェースを独占出来れば、多チャンネルサービス市場での大きな差別化要因になる。しかし、Appleに取りどの様なメリットがあるのか。Appleの戦略はエコシステムのコントロールであり、ComcastにUIだけを提供する事にAppleが応じるとは思えない。
