多チャンネル加入者の減少

これまで加入者を増やしてきたデジタル衛星放送(DBS)のDirecTVが、第2四半期では84,000世帯を失った。競合のDISHは78,000世帯を失っている。しかし、両者共にAPRUは増えている。DirecTVのARPUは4.6%増え、$98.73になり、DISHのARPUは$77.59から$80.90に増えた。

Moffett Research社によると第2四半期にケーブルTV事業者は合計で591,000世帯を失っている。ケーブルTVとDBSは合計で753,000世帯を失った事になる。AT&TとVerizonは合計で、373,000世帯を増やしたが、多チャンネル業界全体では380,000世帯を失った事になる。
第2四半期は1年の中で最も多チャンネルサービスへの加入者数が少ない期であり、減少があっても不思議ではない。しかし、これまで加入者を失わなかったDirecTVの加入者が減ったこともあり、インターネットビデオの普及によるコードカッシングがまたも話題になっている。

多チャンネルサービスへの加入率のピークは2009年で、88%であった。2009年はアナログ停波の年でもある。多チャンネル事業者はアナログ停波の対策として、そのサービスを売り込んでいたので、この時期に多チャンネルサービスへの加入が増えたのはその効果もある。現在の加入者率は86%程度であり、多チャンネルサービスへの加入率は減少をしている。しかし、現在までの減少の大きな理由はOTTビデオではない。

アナログ停波の対策として多チャンネルサービスに加入した世帯が、多チャンネルサービスの必要が無いことに気づき、サービスを止めた事は不思議ではない。また、不況も大きなインパクトがあり、同時にケーブルTVサービスもデジタル移行により、料金が増えていった事も大きな要因である。Leichtman Research Group(LRG)の調査によると、年収が$50,000以上の世帯における多チャンネル加入率は91%であるのに対して、年収$50,000ドル未満の世帯の加入率は80%であり、世帯の収入が多チャンネルサービスの加入に対して大きな影響力を持っている。また、多チャンネルサービスの料金も値上がりしており、LRG社によると多チャンネルサービスに対する平均支払額は$83.25で、前年から5.9%の増加をしている。

しかし、OTTビデオの影響が全く無いとは言えない。LRG社の調査では、2010年には88%が多チャンネルサービスに加入し、10%が地上波だけの視聴で、どちらも使っていない世帯は2%であった。それが2013年では、86%が多チャンネル、8%が地上波だけで、6%は地上波とOTTの両方になっている。多チャンネル、それに地上波のみの世帯が、それぞれ2%ポイントを失った事になる。
これまでケーブルTVサービスが加入者を失ってきた大きな理由は、デジタル移行である。アナログケーブルTVは安く、地上波アンテナ代わりに加入する世帯も多かった。それがデジタル移行で料金が上がり、地上波の共聴サービスとして利用するには高価になりすぎた。現在、地上波の共聴サービスとして多チャンネルに加入している世帯は殆ど無くなっているであろう。現在、多チャンネルサービスへ加入している世帯は、より多くのビデオコンテンツを求めて加入をしている。

求められているのは、豊富なビデオコンテンツであり、それを便利に得ることである。多チャンネルサービスには豊富なコンテンツがあるが、便利性は低い。多チャンネル事業者はTV Everywhereを提供しているが、どのコンテンツが視聴可能で、さらにどこで見る事が出来るか分かりづらい。多チャンネルサービスと有料のOTTビデオの併用は多いのはこのためである。Digitalsmiths社が1,850人を対象に行なった調査では多チャンネルサービスに加入している世帯の35%はNetflix等の有料OTTビデオサービスにも加入し、また、22%はiTunes、Vudu等のインターネットの有料VODサービスを使っている。

Netflixへの加入が最も多いのはCox CommunicationsのケーブルTV加入者で42.2%がNetflix加入者である。2位はTime Warner Cable(41.5%)、3位はCharter(35.1%)であった。逆にNetflixへの加入が低いのはDirecTV(25.7%)、Comcast(27%)、Verizon(29.6%)であった。VOD、TV Everywhereに力を入れている事業者の方がNetflixへの加入が低いようである。多チャンネルサービス利用者の35%が有料ストリーミングサービスに加入をしているのに対して、スマートフォン、タブレットを持ちながらも、68%は多チャンネルサービス事業者のTV Everywhereのアプリを使っていない。

Digitalsmithsの調査では多チャンネルサービスの脱退を考えているのは4.3%と低いが、27.5%は検討すると答えている。多チャンネルサービスに対する不満は、価格、サービス、それにコンテンツである。逆に、Netflix、Hulu Plus等に対して満足な点は、価格、それに便利さとなっている。
現在、多チャンネルサービスの加入者は、足らない部分を別途OTTビデオで補っている事になる。しかし、多チャンネルサービスの価格が高騰する中、それを他のサービスで補う必要がある事に不満が増えている。多チャンネル事業者が加入者を維持していくためには、これまでの放送サービスではなく、インターネットを使った補足の部分に力を入れていく必要があり、それが出来ないとOTTビデオに加入者を失っていく。