VerizonとケーブルTVのアライアンス
VerizonはComcast、Time Warner Cable、Bright Houseの連合(SpectrumCo)からAWS帯域(1.7/2.1 GHz)のライセンスを36億ドルで買い、さらにLTEを含めたサービスの販売面で協力する契約を結んだのに続き、Coxとも同様な契約をした。CoxからはそのAWSライセンスを3.15億ドルで購入する。Coxは、独自でLTEネットワークを構築し始めたが、その計画を中止し、Sprintのサービスを再販していた。Comcast、Time Warner Cable、Bright HouseがClearwireのWiMaxサービスの再販契約を破棄したように、CoxもSprintとのMVNO契約を切っている。
これにより、VerizonがそのFiOSネットワークを拡大し、ケーブルTVネットワークとの競合をするのではなく、無線ブロードバンドに注力する事がはっきりとした。逆に、ケーブルTV事業者は、経験の全くないモバイルネットワークの構築から手を引き、多チャンネルサービスと固定ブロードバンドの提供に専念出来る。お互いにそのコンピタンスを追求した、アライアンスである。
また、VerizonがNetflixと同様なストリーミングサービスの提供を検討しているとも報じられているが、これもVerizonに取り、理論的な戦略である。LTEでビデオサービスを提供する場合、リニアな多チャンネルサービスではなく、オンデマンドのサービスとなる。FiOS TVの拡張を止めても、それで得たコンテンツ事業の経験を無駄にする必要はない。同じブロードバンドでも、無線の場合はネットワーク中立性の問題が無いため、自社のLTE利用者を優先するサービスにする事も出来る。Verizonは強力なバックボーンを持っており、ストリーミングサービスを提供する場合、CDN事業者を使う必要も無い。
さらにサブスクリプション型のオンデマンド(S-VOD)のサービスであれば、必ずしもケーブルTVの競合にはならなく、Verizonは、これをケーブルTV加入者に再販させる事が出来る。ケーブルTV加入者の多くは、Netflixにも同時に加入をしている。サブスクリプション型のVODとトランザクション型のVODでは、コンテンツが異なるため、競合にはならない。ケーブルTV事業者がSTBを使ったS-VODが提供出来れば、ケーブルTV事業者の収入となり、さらにVODの利用が進むことで、自社のT-VODの利用を増やす要因にもなる。
このアライアンスは、他の多チャンネル事業者、それに通信事業者に非常に大きなインパクトを与える事になる。SpectrumCo、それにCoxの帯域販売の許可が出るのは、2012年末になる可能性もあるが、Comcast等はすぐにもVerizonのモバイルサービスの再販を開始する予定である。Comcastは現在、数都市でClearwireの無線ブロードバンドをInfinity2Goとして再販しているが、このサービスは6ヶ月以内に中止される。ComcastはClearwireの株は当面は手放さないと発表しているが、Clearwireは大きなパートナーを失った。これまでケーブルTV事業者とは様々な協力をしてきたSprintにもこれは大きな問題である。Sprintは、ケーブル電話事業者の固定電話(VoIP)でも協力をしてきたが、これも失うことになる。Sprintは、早速、ケーブルTV事業者をVoIPパテントの侵害で訴訟している。
また、VerizonのパートナーであったDirecTVにもこれは大きなインパクトを与える。Verizonは、FiOS TVを提供していない地域では、DirecTVの衛星放送を再販していた。また、VerizonとDirecTVは、缶詰サイズのLTEアンテナを衛星アンテナに取り付けることで、DirecTV加入世帯がLTEを固定ブロードバンドサービスとして使うサービスのテストを2010年から行っていた。Verizonは、このテストは終了し、商業化のプランは無いと発表している。DirecTVは、無線ブロードバンドの計画を失っただけでなく、Verizonとの衛星放送再販の契約も失う可能性がある。
しかし、一番のインパクトを受けているのはAT&Tである。同社のT-Mobile買収が駄目になったとほぼ同時に、強敵のVerizonは新たに帯域を得、さらにComcast、Time Warner Cable、Cox、Bright Houseをパートナーとする事に成功した。AT&Tは、衛星事業者のDirecTV、あるいはDishとのアライアンス、あるいは買収を狙う可能性がある。特に、Dishは700 MHz、2 GHz帯域を持っているだけでなく、Verizonが検討しているS-VODサービスに対抗する、Blockbusterも持っている。しかし、DishがT-Mobileを買収するとの噂もある。Dishは無線ブロードバンドのサービスを立ち上げようとしており、T-Mobileを安く手に入れることを狙っているらしい。DishはCESにおいて、衛星を使ったブロードバンドサービスを発表すると噂されている。