動き始めるアナログ停波

英国ではデジタル放送が開始されてから9年経っている。アナログ停波は2012年の予定で,それに向け,ホワイトヘーブンで10月16日にBBC 2のアナログ放送が停波した。英国に於けるアナログ放送の停波はこれが最初。ホワイトヘーブンでは残りのアナログ放送のBBC 1,ITV1,Channel 4を11月14日に終了させる予定。

スウェーデンではスコーネで10月15日に最後のアナログ放送が終了した。スウェーデンではゴトランドで2005年9月に最初のアナログ停波が行われ,2008年2月が完全なアナログ停波の予定であったが,予定より早くデジタル移行が終了した。

全国的にアナログ停波が行われたのはルクセンブルグ,オランダ,そしてスウェーデンの3ヶ国になる。しかし,ルクセンブルグでは国内向けの放送はデジタルに完全移行したが,フランス向けへのアナログ放送がまだ続いており,100%アナログ停波とは言えない。オランダはケーブルTVの普及が95%を越しており,地上波放送のデジタルへの移行を待たずに,アナログを停波する事が出来た。

BSkyBのITV株買収は違法

英国の競合委員会はBSkyBがTVプログラマーのITVの株17.2%を持つことは競合上違法との暫定的な判断を下した。ITVをめぐってはBSkyBとケーブルTV事業者のVirgin Mediaが争ってきた。Virgin MediaはITVを買収しようとしたが,BSkyBはITVの保有株を増やすことで,Virgin Mediaの買収を阻止した。ITVの保有株を増やした事で,BSkyBはITVがその番組をVirgin Mediaに配給する事を阻止する事が可能になり,これを競合委員会は問題とした。もし,この判定が正式になった場合,BSkyBはITVの保有株を減らすか,あるいは手放す必要が出る。

別のニュースで,BSkyBはそのSky Broadbandサービスへの加入者が100万を超えた事を発表した。BSkyBはこれを14ヶ月間で達成し,英国で最も成長しているISPになっている。

デジタルとアナログの同時再送信規制が決まる

FCCは2007年9月11日にアナログ停波後のケーブルTV事業者に対する地上波再送信規制をどの様にするかを決定した。現在の再送信規制はアナログ放送に対する物で,ケーブルTV事業者はそのサービス地域内の地上波局の放送をそのまま再送信する義務がある。地上波局のデジタル放送に対しての再送信義務は無く,任意である。2009年2月18日以後はデジタル放送が再送信義務の対象となるが,ここで問題が起きる。ケーブルTV事業者のアナログ放送での地上波再送信をいかにするかである。

ケーブルTV事業者の殆どはデジタルケーブルサービスを提供しているが,ネットワーク上はアナログとデジタルのハイブリッドで,地上波再送信と基本的なケーブルTVネットワークはアナログで放送している。ベーシックサービスの加入世帯はアナログケーブルであり,STB無しでこれら放送を受けることが出来る。3000万近いアナログケーブルTV視聴世帯があり,2009年2月までこれら世帯をデジタルサービスに移行させるのは非現実的であり,地上波のアナログ停波以後も,ケーブルTVのアナログサービスは続くことになる。もし,再送信規制の対象がデジタル放送のみであれば,ケーブルTV事業者は地上波放送をデジタルで再送信する事で,義務を果たし,アナログケーブルTV加入者に対してアナログ変換し地上波を提供する必要は無く,これら世帯では地上波放送が見られれなくなる可能性がある。

FCCと地上波局を代表するNational Association of Broadcasters(NAB)は,2009年2月18日以後もアナログサービスを提供し続けるケーブルTV事業者に対してはデジタル放送をそのまま再送信するのに加え,アナログ変換し,アナログでも再送信する義務を加える事を求めてきた。ケーブルTV事業者はこれに反対してきたが,9月11日にFCCはデジタルとアナログの両方の再送信の義務化を決めた。しかし,全体的にはケーブルTV事業者に譲歩した内容になっている。まず,この義務は3年間と言う限定された期間であること。もう1つはデジタル再送信の対象をNABは放送する全てのビットとして,帯域上のデータを全部そのまま,再送信をする事を求めていたのに対して,今回の規制ではデータ放送,副チャンネル等は任意であり,さらに,HDはHDのままで再送信する義務があるが,ビットレートを落としての再送信も可能になっている。

しかし,この決定はケーブルTV事業者に取って,大変な課題である。現在,多くのケーブルTV事業者は70程度のアナログチャンネルを放送している。このために850 MHzにシステムの500 MHz程度を使い,残り300 MHzでデジタル放送,VOB,ケーブルモデム,デジタル電話等のサービスを提供し,帯域を殆ど使い切っている状況である。アナログチャンネルを減らすことなく,全地上波局の放送をデジタルでも放送する事は問題である。特に再送信対象がHDになると帯域が不足する可能性が高い。もし,10の地上波局がHDで放送をすると,その再送信には約30 MHz,アナログチャンネル5つ分が必要になる。大都市では地上波局数は多く,HDで放送する確率も高い。さらに,HDで再送信するだけでなく,SDにダウンコンバートした放送も再送信する必要が出るであろう。再送信義務はHDで果たすことが出来ても,ケーブルTV事業者の全加入世帯がHD対応のSTBとTVを持っているわけでなく,SDでも再送信をしないと見られないチャンネルが出来,視聴者は怒るであろう。

現在の地上波再送信の場合,ケーブルTV事業者は地上アンテナで地上波を受信し,それをそのまま再送信すれば良いが,デジタルをアナログに変換するにはその為の設備を導入しなければならない。地上波再送信ではケーブルTV事業者が広告挿入をする事は出来ず,値段も自治体とのフランチャイズ契約で決められており,儲けのあるサービスではない。これに大きな設備投資を行うことはケーブルTV事業者に取っての不満となる。

TVをインターネットにつなぐ方法

PCからはインターネットにある豊富なコンテンツにアクセスする事が出来る。しかし,インターネットで配信されるビデオをTVで見るのは,AppleTV等が出ているが,まだ,シンプルなソルーションは無い。TVとPC(あるいはインターネット)との融合の時代が始まっていると言われるが,TVをPC,あるいはインターネットにつなぐことが出来ない限り,本当の融合は始まったとは言えない。

TVをインターネットにつなぐには専用のSTBが簡単な方法で,古くでは1996年にWebTV(MSN TV)が出ているが,まだ成功する製品は生まれていない。最近ではAkimoがあるが,同社もSTBは止め,PC向けのサービスになっている。最も新しく,また期待をされているのがVuduである。VuduはTVに接続し,インターネット経由で映画を借りる,あるいは買うことを可能にするSTBである。STB自体は$399で,250 GBのHDDを搭載し,購入した映画,それに映画の始まり部分を蓄積している。ユーザはスクロール・ホウィールを使ったリモコンで映画を選択しする。映画は購入,レンタスがあり,レンタルの場合は24時間視聴可能で,価格は99セントから$3.99。購入の場合は$4.99から$19.99。ダインロードに時間がかかったAkimboとは違い,P2Pネットワークを使うVuduでは映画の出だしがHDDにあれば,即時にスタートする事が出来る。Vuduはすでに多くのスタジオと契約をしており,5000以上のタイトルがある。

Vuduの最大の問題は$399の価値である。Vuduを購入しても他のインターネットのビデオにアクセスする事は出来なく,他の利用方法は無い。映画を購入してもそれをVuduから取り出すことは出来ず,ポータブルプレーヤを含め別の媒体に移すことは出来ない。月額がかかるが,TiVoの方が$299ドルと安く,TVの録画,AOL Unboxからの映画のダウンロード等,色々な利用が出来る。

様々なコンテンツにアクセスする事を可能にするのであれば,PC経由でインターネットにつなぐのが専用のSTBに頼るより良く,すでにAppleTVが発売されている。また,2007年9月にはMicrosoftのMedia Center Extenderの規格の製品が発売された。Media Center ExtenderをつないだTVからはMedia Center EditionのPCにあるビデオ,音楽等のコンテンツを視聴する事が出来るほか,MicrosoftのWindows Media Center Internet TV,あるいはMicrosoftのパートナーになっているStarz EntertainmentのVongo等のウェブサイトの有料コンテンツにアクセスが出来る。AppleTVとの最大の違いはケーブルTVの放送も見る事が出来ることである。CableCARDを搭載したVista Media Center PCがあれば,Media Center ExtenderをつないだTVからPCが受信したケーブルTVの番組を見る事も出来る。(なぜ,TVにSTBをつながずに,わざわざExtenderを使い,ホームネットワーク経由で,ケーブルTVを見る必要があるかは疑問であるが。)

これまでMedia Center ExtenderはMicrosoftのXbox 360に搭載されているだけであったが,9月にCiscoのLinksys,D-Link,Hewlett-Packard,それにNiveus Mediaの4社がExtenderを発表した。LinksysのDMA2200はDVDプレーヤを内蔵したExtenderで,価格は$350。DMA2100はDVD無しの,小型の製品で,$300。共に11月に発売予定。

D-LinkのDSM-750 MediaLoungeは$350。HPのMediaSmart LCD HDTVは2008年初めに提供されるソフトウェアアップデートにより,Extension機能を追加出来る。

また,QuarticsはPC2TVと呼ばれるハードウェアとBlinkと呼ばれるメディア・インタフェースを発表した。PC2TVはTVに接続する(Extenderの様な)デバイスで,TVからYouTube,ABC.com等のウェブサイトへのアクセスが可能になる。PC2TVは無線LANでPCのコンテンツ,あるいはPCがアクセスするインターネットのコンテンツをTVに対してストリームする製品であり,その特徴はBlinkと呼ばれるメディア・インタフェースにある。Blinkは利用者がよく見るビデオウェブサイトを分類し,サムネイルを作り,リモコンで選択可能にする。また,Rhapsody,iTunes,Flikr等からダウンロードした音楽,写真等を整理し,リモコンからのアクセスを容易にする事も出来る。QuarticsはPC2TV,それにBlinkを直接に販売するのでは無く,ベンダー,あるいは事業者にOEM提供する予定。

多チャンネル事業者に対する集団訴訟

ロサンジェルスの弁護事務所,Maxwell M Biecher & CollinsはComcast,Time Warner Cable,Cox,EchoStar,DirecTVの加入者を代表し,これら多チャンネル事業者,それにケーブルTVネットワークを持つNBC Universal,Time Warner,Viacom,Walt Disney,Fox Entertainmentに対し独占禁止法を犯しているとの集団訴訟を起こした。原告はこれら多チャンネル事業者,それにケーブルネットワーク事業者は共謀し,プログラミングをパッケージとして提供する事で,必要の無いプログラミングも売っていると訴えている。Nielsen Media Researchの調査では平均的な多チャンネルサービスの加入者は見たい16程度のチャンネルの為に,見ることのない85チャンネル分を支払わされている。

FCCのマーチン会長はケーブルTV事業者に対してチャンネルをバンドルするのではなく,個別に売るべきだとの意見を明らかにしているが,FCCにはこのような規制をする権限は無い。マーチン会長は上院,下院で提出されている,通称「アラカルト法案」を支持しており,この訴訟も支持している。ケーブルTV事業者を代表するNCTAはパッケージ化されているから,ケーブルTV事業者はコンテンツ事業者と割引で契約が出来ており,アラカルトを導入すれば,視聴料金は増すことになると言っている。

DTVコンバーター補助を書き換える法案

ハーブ・コール上院議員はすでに決まっているDTVコンバーターの購入補助の方法を書き換える法案を提出した。9月中旬にGeneral Accounting Office (会計検査院)はDTV移行に関してFCCとDTVコンバーター購入補助の監督機関のNational Telecommunications & Information Administration(NTIA)の連携が出来ていないと批判をした際に,コール議員はDTV移行への仕組みを見直す法案を提出する事を約束していた。現在では15億ドルの予算中,9900万ドルを最初の予算とし,使い,それが不足した際に残り5100万ドルを使い,この5100万ドルの予算では援助が受けられる世帯は地上波直接受信のみの世帯だけを対象にするが,この法案では最初の9900万ドルを地上波直接受信の世帯対象とし,また,クーポンの有効期限を3ヶ月から4ヶ月に延長する。また,定義の書き換えを行い「世帯」だけでなく,老人ホーム等の居住者にも権利を拡大する。

Verizonが700MHz入札規定でFCCを訴える

VerizonはFCCが8月に決定した700 MHz帯域の入札規定はFCCの権限を越えた物だとして訴訟を起こした。FCCはUpper Cバンドの利用方として,独自の端末等を要求しないオープンなサービスする事を求めているが,VerizonはFCCにはこのような規定を作る権限が無いとして,訴訟を起こした。Verizonは2008年1月16日から開始が予定されている入札自体の差し押さえは求めていないが,これにより入札が延期になった場合,2007年2月17日のアナログ停波に影響を及ぼす可能性がある。DTVコンバーター購入補助金の15億ドルはこの競売が財源になっており,競売が遅れると,クーポン支給の開始も遅れる可能性がある。

EchoStarが分離,Slingを買収

EchoStarは家のTV放送,DVRに録画された番組等をインターネットを使い,外出先のPC等で視聴する事を可能にする製品を開発している,Sling Mediaを3.8億ドルで買収し,Sling Mediaを含む技術部門をスピンオフした。これにより,EchoStarはその衛星放送のDish Networkと提供する部門と,STBの開発,Sling Media,衛星のアップリンクセンター等の技術部門が別の会社となる。投資家はこの動きを良く評価しているようで,発表を受け,株価はアップした。Slingの買収,分離は第4四半期中に完了の予定。この分離により,また,AT&TがEchoStarを買収するとの噂が浮上し始めた。AT&TはEchoStarの衛星放送のサービスを再販しており,そのIPTVのU-Verseサービスがまだ提供出来ない地域でもトリプル/クアトロ・プレーを提供する為にEchoStarを買収するとの噂は以前も出ていた。

また,Sling Mediaはコンテンツ事業者がビデオをSlingBox向けに配信する事を可能にするSling Clip + Slingのスタートは2008年になると発表した。Sling Clip + Slingは2007年のCESで公開された。

CableCARDの普及は6.5万を超える

ケーブルTV加入者の90%を構成するトップ10の事業者が導入したCableCARDの累計導入台数は9月初めで6.5万を越えた。6月の時点の2.7万から,倍以上に増えている。7月よりケーブルTV事業者がレンタルするSTBにもCableCARDを使う事が義務付けられた事で,導入台数が増え始めた。

HDの争い

多チャンネル事業者のHD視聴者を狙った争いが激しくなっている。ComcastはScripps社とHGTV HDとFood Network HDの放送の契約を行い,また,新しいケーブルTVネットワークのMGM HDとの契約も交渉している。MGM HDはMGMの映画,オリジナル番組を放送する有料チャンネルで,すでにDirecTVとの契約を発表している。ComcastはMGMに20%の出資があるが,MGM HDとの契約はDirecTVに先を越された。DirecTVはMGM HDを月額$4.99で提供する。

DirecTVは今年の末にはそのHDチャンネル数を100に増やし,来年末には150にする計画で,その最初として,Smithsonian HD,CNN HD,TBS HD等21の新しいHDチャンネルの放送を9月に開始した。

これに対して,EchoStarのDish NetworkはそのHDサービスへの加入者と新規加入者に対して,シャープ製のLCD HDTVの購入に対して最大800ドルの割引を提供するキャンペーンを始めた。

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